居酒屋で恋して 居酒屋で恋して 12 颯人さんは弾かれたように僕を見た。 そして僕のペニスを握っている手に目を移してから、だんだんと頬に朱が差していき、慌てソレから手を離すと、颯人さんは僕から目を背けた。 「チィ、悪かった。さっきあんな目に合ったばっかりだっていうのに・・・俺どうかしてた。外に出てるから、ゆっくり入ってこい」 颯人さんはそっと僕から離れて、浴室から出て行こうとした。 「待って、颯人さん!」 僕は颯人さんの腕を掴んで引き留めた。 「チィ?」 僕を見る颯人さんが困惑している。 「違うんだ。そうじゃなくって・・・」 あ〜、なんて言えば良いんだよ〜? 自分でするって言ったのは、ただ大好きな颯人さんに射精している所を見られたくないからで・・・。 「チィ・・・腕を離してくれないか。目のやり場に困るから」 「え?」 颯人さんの視線が僕から背けられる。 まさか、目のやり場って・・・そぉーっと自分の下半身を見てみる。 「あっ・・・///」 まだ勃起したままのペニスが目に入る。 「やだ!」 思わずタイルに座り込んで、颯人さんの目に触れないように身体を丸めた。 バカバカバカー! なんてバカなんだろ、僕って! 颯人さんの面前に恥体を晒すなんて。 「チィ、顔を上げて俺を見ろ」 「・・・できない、やだ」 「チィ、顔を見たい」 聞こえてくる颯人さんの声は、とても・・・とても哀しそうな色を帯びていて、顔を上げずにはいられなかった。 目が合うと颯人さんは少し微笑んでくれ、僕の髪の毛をクシャクシャってしてくれた。 「チィ、俺は・・・俺はお前のことが、好きだ」 「!」 「だから、チィが嫌がることはしたくないし、お前を傷付けたくない。俺はチィを大切に思ってるんだ」 颯人さん・・・。 ジワッと涙が溢れてきた。 嬉しいけど悲しいよ。 だって、颯人さんの『好き』は違うもの。 僕の『好き』ってのとは全然意味が違うから。 「チィ、どうした?苦しいのか?」 「・・・うっ、ヒクッ・・・さん、はや、とさ、ん」 「ん、何だ?」 僕は泣き顔のまま颯人さんに顔を向け、じっと見つめた。 そして今まで胸に秘めていた想いを、颯人さんに告白した。 「僕は、僕は・・・颯人さんのことが、好きです」 [*前へ][次へ#] [戻る] |