鳳凰の宮学園 トイレにて 1 頼もしい河上君と一緒にトイレに着くと、僕はあまりの輝かしさに瞼を瞬かせた。 ワインレッドの美しいタイル張りの壁面に、同じ色の個室用の扉。 照明も安い蛍光灯ではなく、洒落たデザインでトイレ中をまんべんなく照らしている。 しかも男子トイレなのに、まるで女子のトイレのように全て個室になっていて、手洗い場の隣には化粧台まである。 「りょ〜、入らないのか?」 「は、入るよ。」 トイレで緊張するなんて初めてだぁ〜。 便座を良く見るとウォシュレットまで着いているし、荷物が置ける場所には花まで飾られてる。 お金持ちが通う高校はトイレにまでお金をかけてるんだ、凄い。 用を足し終えると手を洗い、水道水で顔を洗った。 「んー、冷たい!」 それを隣で見ていた河上君は身震いしていた。 「りょ〜、何で冷水で顔洗ってんだ?超冷たいだろ?温水を使えよ。」 「そうなんだけど、さっきまでのぼせてて・・・ちょっと顔を冷やしたかったんだ。」 「のぼせる?何で?」 訳が分からないといったふうに首を傾げて僕を見る。 「分子式がちょっと理解出来なくて・・・頭をフル回転させてた、から。」 「アー!さっきの授業、化学だったのか。寝てたから全然聞いてなかったや。難しかったんなら、優里に聞くと良いぜ。あいつ得意だから。」 そうなんだ! 桜木君、化学が得意なんだなぁ。 教えて貰おうかな。 あれ? 今、河上君寝てたって言った? 「ねぇ、君が柊木領?」 「え?」 突然声をかけられて、その人を見ようと顔を向けたら、いつの間にか僕達は集団に囲まれていたようだった。 な、なんなのこの人達は? 吃驚して返事をかえせないでいると、イライラしたのか。 「ちょっと!柊木領かって聞いてるんだけど?アンタがそうなの?」 こ、怖い、この人。 僕が答えるのを戸惑っていると、河上君が僕を庇うように前に進み出た。 「お前ら、領に何の用だよ?」 「退いてよ、アンタには関係ない!僕達は柊木領に聞きたい事があるんだよ。」 言うなり、河上君をドンッと押して、僕の襟元を掴んだ。 「アンタ一体どういうつもりで、徳平様と神村様を二股かけてるの?転校生のくせに生意気なんだよ!」 「ふ、二股なんてかけ・・・ウヮッ?」 く、苦しい! 話を遮られ強く首を絞められた僕は、気を失いそうになった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |