鳳凰の宮学園
図書室 5
神村先輩の口から堪えきれない声が漏れて、僕は蒼白になった。
「だ、大丈夫ですか?神村先輩?」
「大丈夫だよ。大したことない。それより君はどこか打った所はない?」
「はい。僕は大丈夫です・・・。」
その時、喋りながら何人かが図書室に入ってきて、僕達2人を見て驚いていた。
「あっ・・・!」
「エエッ!?」
「神村先輩・・・。」
3人は一様に頬を染めてから一言言い、回れ右して図書室を出て行った。
「「失礼しました!」」
僕は呆気にとられて、扉の方を見ていた。
な、なんで?
途端、神村先輩は笑い出した。
「アハハハ。このシチュエーションじゃあ、誤解されたかな?」
シチュエーション?
神村先輩が僕を助けてくれた?
「柊木君、明日からは徳平さんだけじゃなくて、僕とも噂になるよ?覚悟しといてね。」
そう言った神村先輩は、先程迄の柔和な雰囲気が払拭されて、男らしい顔つきで言った。
「か、神村先輩?」
なおも状況が把握しきれない僕に、神村先輩は説明してくれた。
「僕が君の上に覆い被さってるから、今にも本番が始まろうとしていると勘違いしたんだろうな。」
「ほ、本番って?」
「sex。」
今度は僕がポカンとする番だった。
そしてだんだんと意味が理解出来てくると、顔に熱が集まり始めた。
カアァ〜〜!
せ、せっくす〜?
「柊木君、顔真っ赤だよ・・・本当に食べたくなっちゃうくらい可愛いよ、君は。」
胸の動悸が治まらない。
そんな僕に神村先輩は、ふわりと微笑んでから立ち上がって僕に手を差し出し、立ち上がらせてくれた。
「それにしてもなんで本が落ちてきたんだろうね?」
「僕の直し方が悪かったんだと思います。」
僕は話ながらしゅんとなった。
手伝うどころか神村先輩に怪我させちゃうとこだった。
「柊木君、落ち込まないで。本棚から落ちた本は君が直したところじゃないから。」
え?
僕が直したところじゃなかったら、何処から?
神村先輩気を使ってくれてるんだ。
「柊木君、徳平さんがいるから滅多な事は起こらないと思うけど、1人でなるべく行動しないようにしてね。」
「ど、どうしてですか?」
「君の身が危険だから。解ったね?」
この時の僕は神村先輩の真剣に言った意味が、少しも理解出来ていなかった。
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