鳳凰の宮学園 寮 2 僕は管理人の本庄さんに連れられて寮の案内を受けた。 一階はエントランスと会議室、食堂があって、二階は喫茶室と休憩室と勉強部屋。静かに勉強したい人の為にあらゆる設備があるらしい。三階から五階は一年生。此処までが本館。西棟が二年生で東棟が三年生になっているとの事。 「一年生は二人部屋になるけど二年生からは一人部屋だから。しばらくは同居人と仲良くしてね。」 「はい。」 そうかぁ、同居人がいるのか。どんな人だろう。うまくやっていけるといいな。 本庄さんは急に止まって、僕の顔を見た。綺麗な人に見つめられるとドギマギする。 「あ、あの?」 「君の部屋だよ。」 本庄さんはにっこり笑って部屋を指した。 「あ、ありがとうございます。」 「どういたしまして。部屋の開けかたはカードを差し込むだけだから。」 本庄さんはカードキィを差し込んで、扉を開けた。 中に入ると二人部屋だけど、一人ずつ個室になっているから一人部屋と変わらないようだった。 本庄さんに、もう一度お礼を言おうとして振り向いたら、目の前に本庄さんの顔があった。 「君、可愛い顔してるね。気をつけなよ。」 僕はびっくりした。だって生まれてこのかた、可愛いだなんて言われた事がなかったから。この人、目が悪いのかな? そんな事を考えていた僕に構わずに、本庄さんは鼻と鼻をくっ付けてきて、もう少しで唇と唇が触れそうになった。 ズテッ。 僕は後ろに下がろうとして転けた。 本庄さんは僕が転けたのを見て、可笑しそうに笑った。 「大丈夫かい?さっ立って。」 僕は戸惑った。 「ふふ。何もしないよ。ちょっと吃驚させちゃったみたいだね。ごめん。さぁ。」 本庄さんの手を取って僕は立ち上がった。 「それじゃあ、僕はこれで帰るね。」 「あ、ありがとうございました。」 僕はペコリと頭を下げた。本庄さんはもう一度僕を見てから一言付け加えた。 「柊木君、さっき僕が言ったこと忘れないでね。」 本庄さんはにっこり笑ってから、そう言って部屋を出ていった。 「ふぅ。」 僕は気が抜けてその場にへたり込んだ。何が何だか解らない。本庄さんは僕に何を伝えたかったんだろう? 変な人だなぁ。あんなに綺麗な顔してるのに。もったいない。 [*前へ][次へ#] [戻る] |