鳳凰の宮学園
風紀委員 4
当たる!
僕は見ていられなくて瞼をギュッと閉じ、両手で目を隠した。
するとガシッ!と大きな音が聞こえてきた。
ソローっと目を開けると、結城さんの拳を寮長が受け止めている。
「結城、朝から騒ぎを起こすな。この時期に喧嘩沙汰になったら、困るのは玄武じゃないのか?」
寮長の言葉に結城さんはピクッと反応し、腕を自分の元に引き戻した。
「フッ、俺としたことが・・・。高円寺、必ずケリは着けるからな!覚えておけよ。」
「・・・」
結城さんの言った言葉を無視して、高円寺さんは襟を正していた。
その様子を見て結城さんは眉をピクリと上げたが、言葉にも行動にも表さなかった。
僕はハラハラしていたけど、高円寺さんは意にも介さずといった風で寮長に向き直り頭を下げた。
「徳平さん、お手を煩わせまして申し訳ありませんでした。今後はどうしようも無い輩の挑発に乗らないように気を付けます。」
結城さんの目は据わり、寮長も眉を下げて苦笑した。
またもや一触即発の緊張感に包まれた・・・その時・・・。
そんな朝のひと時の一幕を風のようにすり抜けていく人がいた。
「good morning」
朝の光を浴びて光る美しい金髪をなびかせて、優雅に歩いている貴公子。
本当に童話に出てくるような素敵な王子様みたいで、周りの生徒達もうっとりしながら。
「グッドモーニング、フレデリック様!」
と、一斉に声を揃えて挨拶をした。
あ!
あの人!
寮で見掛けた人だ。
あの人がフレデリック様なんだ。
「さっすが、フレディ!この雰囲気の中、堂々と歩いて通れるなんて、やっぱり大物だ。」
寮長は感嘆の声を盛らした。
そして、フレデリック様の後ろ姿を見続けている僕をからかってきた。
「柊木、フレディに惚れるなよ!」
な、ななな?
「寮長!なんで僕が男に惚れるんですか?からかわないで下さい!」
恥ずかしくなって、少し大きな声になったせいなのか、高円寺さんと結城さんが僕を見てきた。
珍種でも見るような目付きをして。
「徳平さんのペットですか?」
「ペットっていうよりパシリだろ?」
2人の同時攻撃に僕は対応出来なくて狼狽えていたら、寮長が更に爆弾発言をした。
「残念ながら、こいつは俺の想い人だ。」
へ?
エエー?
「り、寮長ぉ〜!?」
僕も周りの生徒達も、はたまた高円寺さんや結城さんまで一様に、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をした。
「柊木、宜しくな♪」
その場の寮長だけが楽しそうな顔をして、僕は途方に暮れた。
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