鳳凰の宮学園 優しい時間 6 「龍弥君、どうしたの?」 「領が美味しそうに食べてるから見惚れてた。」 「!」 く、食い意地がはってるって思われちゃったかな? 気を付けよう。 あっ! 龍弥君の器にスープが入ってない。 「龍弥君ごめんね、僕気が利かなくて。」 僕は龍弥君の器を取ってからスープをよそった。 龍弥君はお礼を言ってくれ、僕達は一緒に食べ始めた。 美味しい夕食の時間をを龍弥君と2人で楽しく過ごせていたから、僕はさっき自分の身に起こったことを完全に忘れていた。 夕食を食べ終わると、龍弥君は僕を自分の部屋に連れてってくれ、黒い革のソファーに座らされた。 龍弥君の部屋はシンプルな黒を基調とした空間の部屋で、なんだか龍弥君らしくないような感じがした。 どうして、そう思うんだろう? 「領、今日は俺の部屋に泊まっていきなよ。」 「え?」 「今から寮に帰るの大変だろ?」 僕はしばらく考えてみた。 これって外泊になるのかなぁ? 寮長に届けを出してないけど、大丈夫なのかなぁ? その時僕は急に思い出した。 「あっ!紫藤君!」 「領?」 「龍弥君、紫藤君が僕の為に助けを呼びに行ってくれたんだ。今頃僕を探しているかも。早く寮に戻らないと!」 僕は焦って寮に戻ろうとした。 でも龍弥君に腕を掴まれて、そこに立ち止まってしまった。 「龍弥君離して、僕戻らなきゃ。」 そう言っても龍弥君は離してくれずに、さらに先程よりも強く掴まれた。 「寮長の徳平さんには連絡を入れてる・・・。領、安心して。」 僕はビックリして龍弥君を見つめた。 なんて気が回るんだろう! 僕なんて今気付いたのに。 「領、聴いてもいい?」 「なに?」 龍弥君は僕を腕の中に巻き込んで顔を見ずに話し出した。 「さっきの奴等にどうして絡まれたんだ?しかもあんな誰も通らないような林の中の小屋で。」 僕は身震いした。 今まで忘れていたのに、さっき自分がいた場面がフラッシュバックした。 「領、俺がずっと傍にいるから安心して。」 龍弥君の腕にしがみついて、僕は自分がひどくちっぽけな存在に思えたのと同時に、龍弥君の温もりに守られているって強く感じていた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |