鳳凰の宮学園
tatsuya 朝食後
俺は領を見送りに外に出た。
「領、明日も朝食を一緒に食べよう。来てくれる?」
領は一瞬迷ったようだが、頷いてくれた。
ダウンジャケットも明日返してくれれば言いと伝えた。
朝食の時間が楽しくて気が付けば7時半になっていた。領は職員室に行かなければならなかったので、直接高等部に向かうことになった。
あのダウンジャケットを着た姿を、他の奴に見られるのは嫌だけど仕方ない。初日から遅刻したら領の心象が悪くなる。
「可愛かったなぁ。制服姿も似合ってたし。フフ。」
俺が思い出し笑いをしていると。
「ほッほォー!あの子がお前の好い人か?なかなか可愛い子じゃないか。もう最後まで行ったのかの?」
声のする方を見ると、北極探検家かと思われるような格好をした、齢百歳のひい祖父ちゃんがいた。
「何だ、ひい祖父ちゃん見てたのか?帰って来るのが早いんじゃないの?いつもは学園一週して来るのに。」
ひい祖父ちゃんはニマーっと笑って、俺を横目で見た。
「他人に無関心の曾孫が初めて儂の家に呼んだ子だ。興味がわくじゃろ。で、最後まで行ったのか?」
俺は溜め息を吐いた。百歳になっても若々しいのは良いことだけど、曾孫の恋愛話に興味を持つのは止めてもらいたい。
「何にもない。昨日会ったばかりだぜ。有るわけないだろ。」
「ほおー!お前奥手だったかの?儂の記憶によれば、はて。」
俺は無視して洋館に入った。ひい祖父ちゃんも中に入る。
酒井シェフが出迎えた。
「お帰りなさいませ、旦那様。お早いですね、御加減でも悪くなされましたか?」
「ほッほッほッ。体調は万全じゃ。曾孫のコレを見たくてな。」
言いながら小指を立てた。
「ハハハ。御覧になられましたか?」
「ウムウム。中々可愛い子じゃった。龍弥も見る目があるわい。」
俺は学校に行く仕度をして、居間に戻った。
「行ってくる。」
「行ってらっしゃいませ。」
「龍弥、明日もあの子は来るのかな?」
「ああ。ひい祖父ちゃん邪魔するなよ。領には生徒会の寮ってことにしてるんだから。」
俺はひい祖父ちゃんに釘を刺した。
「ほいほーい。儂はイケてるじいちゃんだぞ。曾孫の恋路を邪魔する用な無粋な真似はせん。」
俺は怪しんでギロっと睨んだが、ひい祖父ちゃんには効かないだろうなっと思っていた。
案の定、飄々と流された。
「学校に遅れるぞ、生徒会長殿。学業に励んで来るのじゃぞ。」
俺は肩を竦めて、洋館を出た。
しばらく歩いてから、領の同室の奴の事を考えた。
しかし・・・。
領の同室が久我山とはな。
気を付けておくか。
領を守る為に。
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