鳳凰の宮学園
tatsuya 童心
− 領と初デート −
そう考えるだけで子供みたいに心がワクワクしてきて、真夜中だというのに眠れない。
まだ出会って四日しか経っていないっていうのに、領と1日中一緒にいられる日が来るなんて奇跡だ。
例えそれが領にとっては友人としてであったとしても、俺にとっては好きな人と過ごせる大切な時間を持てたのだ。
「ホント、ガキだな俺って」
こんなに素直に喜んじゃって、浮かれすぎだっつうの。
でもそれは、領だからなんだ。
寝返りをうって窓の方を見ると、月明かりが射し込んできた。
ベッドに横になっていたのを座り直して、暗闇の部屋から見える外の景色を暫し眺めていた。
・・・静かだ。
今日は雪が降っていなかったが、身体が凍り付きそうになるぐらい冷気が漂っている。
そのせいかピンと空気が張りつめていて、外の景色がいつもより鮮明に見えた。
中等部に入学した時からの、お馴染みの景色なのにな、今日はいつもと違って見える。
まてよ・・・こんなに寒かったら寝冷えするかもしれないな。
「領はもう寝てるよな・・・布団ちゃんと被ってるかな?」
身体に余分な脂肪がついていなくて細いから、風邪とか引きやすそうだからな、ちゃんと温もって休んでるか心配だ。
「俺があっためてやりたいな」
この前のように抱き締めて、領をこの俺の腕の中に抱いていたい。
あの温もりをまた感じたい。
そう思っていたら、無意識に自分の両腕をガシッと掴んでいた。
その行動に思わず引いた。
「ハァ・・・俺、ヤバい奴になってないか?」
妄想癖とかはないが、自分の両腕を抱くって・・・。
領には絶対に力ずくで迫ったりしないと決めたんだ。
2日前の・・・あの体験をした領は怯えきっていた。
今まであんな怖い思いをしたことなどないだろうに。
クソ!
布団に拳を叩き付ける。
俺は領を守れるような強い男になれるだろうか?
・・・徳平さんのような。
今日だって掲示板の件で、俺は何も出来ることなんかなくて、ただ領に電話して安否を気遣うくらいしかできなかった。
でもあの人ならきっと、どんな事態が起きようとも自分の力で解決出来るんだろうな。
あの人みたいに・・・朱雀兄さんのように、強い男になりたい。
どんな荒波も1人で乗り越えられる、強い男になれるように。
それまで待っていて欲しい。
きっとなってみせるから、領を守れる強い男に!
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