鳳凰の宮学園
おしかり 1
人気のない廊下を急ぎ足で歩いていく。
桜木君とのお喋りが楽しくて、ついつい長居をしてしまい今はもう10時30分を回っていた。
消灯時間が10時だから、今の時間帯は大体の生徒は自室で寛いでいるか眠っている頃だから、廊下は静寂に満ちていた。
部屋に辿り着くとホッとして、脱力したままさっきの会話を思い出した。
桜木君が今朝の掲示板の件があるから、こんな夜遅くに1人で部屋まで帰るなんて危険だから、送って行くって言ってくれたんだ。
嬉しかったけど、歩いて2分ぐらいの距離なのに、さすがに大丈夫だよって言って帰ってきた。
「桜木君ってば心配性なんだから。クス」
寮内用のサンダルを脱いで室内用のスリッパに履き替えてからリビングに歩いて行く。
そうしたら、リビングのソファーに長い足を組んで、タバコを吸いながら僕を睨み付けてくる、久我山がいた。
昨日といい今日といい、どうして睨んでくるのかなぁ?
「た、ただいま〜。久我山起きてたんだね」
「・・・」
なんで返事をしてくれないんだろう?
それになんだかとっても機嫌が悪そうだな。
こんな時は、さっさと部屋に戻った方が良さそうだ。
「久我山、僕部屋に行くね。お休みなさい」
言いながら部屋に行こうとすると、久我山が低い声で僕に質問してきた。
「柊木、今何時だと思ってんだ?」
「え?えーと、10時30分かな?」
「10時34分だ!」
「そうなんだ・・・じゃあ」
僕がドアノブに手を掛けようとすると、久我山は命令口調で言い放った。
「ここに座れ!」
久我山の人差し指がソファーを指し示す。
う〜、なんだろう?
あんまり行きたくないな〜、とは思ったけど久我山の有無を言わさぬ迫力に、促されるままソファーに座った。
「柊木、こんな時間まで何処に行ってた?消灯時間はとっくに過ぎてるよなァ?アア゛?」
ヤ、ヤンキーだ。
本物のヤンキーだ。
言い回しが怖い。
「オイ、黙ってたら分かんねぇだろ!」
ビクッ!
久我山の拳がテーブルを叩き、置いてあった缶コーヒーが飛びはねた。
ホッ、中身は溢れてない。
缶コーヒーに気をとられていたら、久我山がイライラしたようで。
「柊木、お前自覚あんのか?一昨日のこと?」
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