鳳凰の宮学園
購買部 3
僕と田嶋君が教室に戻ると、河上君が唇をすぼめてげっそりした様子で待っていた。
「おっそーい!康太何やってんだよ?腹減りすぎて死にそうだぞ。早く食わせろ!」
「ピーピー、ウルセェ。1食ぐらい抜いたって、人間死にゃあしねぇんだよ」
「ガウゥーー。」
河上君が今にも噛み付きそうな顔で田嶋君を睨んでいる。
「ご、ごめんね、河上君。僕が田嶋君を待たせてしまったから遅くなったんだ」
「「領は悪くない!」」
田嶋君と河上君が仲良くハモった後で、お互いに顔を付き合わせた。
「「ハモんな、気持ちワリィ」」
まただ!
僕は笑いだしてしまった。
そんな僕達を余所に、一之瀬君は呆れながら河上君と田嶋君を見て、2人を制しようと手を叩きながら。
「ハイハイ、そこまでにしろよ。お前らに付き合ってたら永遠に食えねぇだろ。領、コロッケパン1個だけなのか?」
一之瀬君が袋の中のパンを取り分けてくれながら、僕に聞いた。
「うん。なんだかあんまりお腹空いてなくって」
本当なら、いつもの僕はパン1つでは全然物足りないんだけど、この学園に来てから・・・っというか、龍弥君のところで食べる朝食の量が凄く多くて、お昼にお腹が空かないんだ。
「良介、アホなこと聞くなよな。領の胃袋はお前みたいな大食らいと違って繊細にできてんだから、1個でも充分満腹になるんだよ。な、りょう〜!」
「え、そんなわけでは・・・」
僕が否定しようとすると、田嶋君がすかさず納得したように。
「せや、領は小さくて可愛いから、良介みたいにガバガバと何でも食べられへんねん♪」
河上君と田嶋君の見事?な連携プレーに、一之瀬君は眉をヒクつかせて、今まで聞いたことのない低い怒りを抑えた声で言い放った。
「お前ら〜、いい加減にしろよ。」
あまりの迫力に河上君と田嶋君は互いに手を取り合って青い顔をして抱き合った。
爽やかな一之瀬君が怒ると恐いけど、僕はなんだか格好良いと思ってしまった。
顔の良い人はどんな表情をしても様になるんだ、うらやましい。
僕と一之瀬君が買ってきたパンを机の上に並べると、河上君と田嶋君が行儀良く待っていた。
思わず笑みが零れる。
まるでエサを待ってる子犬のようだ。
「おし、んじゃ食べようか!」
「待ってました!腹と背中がくっつきそうだったんだ。いっただっきま〜す」
「忙しない奴だな、翔平は」
「ええやん。俺らもはよ食べよ」
「そうだな、領も食べよう」
「うん。いただきます」
こうして僕達は、昼休みの楽しい時間を過ごしていった。
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