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鳳凰の宮学園
購買部 1


5、4、3、2、


イチ〜!



「行くぞー!」



お昼休みのチャイムが鳴り響くと同時に、僕は田嶋君に教えられた通りに教室から数人の生徒達と共に飛び出していた。



「領ちん、頑張って全力で走れよ。でないと限定の焼きそばパンやコロッケパンが手に入らんからな!」



「うん!」



購買部は食堂とは別に1階にあって、主に普通クラスやXクラスが買いに行くらしい。

まぁ考えてみれば、お金持ちの子が焼きそばパンを食べるなんて想像がつかないけどね。



「よっしゃぁ〜、一番乗りだー!領ちん、やった・・・ぜ?あれれ、どこいった?」



陸上部の田嶋君に着いていけなかった僕は、遅れること10秒ぐらいで購買部に着いたんだけど、その時には列の40番目の位置に並んでいた。



「おっ、領ち〜ん。何でそないなとこにおんねん?俺等のクラスが一番近いのに?」



田嶋君が大きな声で喋るから、僕は皆に振り向かれて笑われてしまった。



か、かあ〜〜!

た、田嶋君ったら、何もそんなに大きな声で言わなくても。

周りから注目を浴びた僕は、居たたまれなくって小さくなってうつ向いた。



あ〜!
恥ずかしい、顔が熱くなってきたよ。



僕は小さい時から、運動音痴なんだ。

走るのも遅いし、水泳も金づちで泳げないし、父さんとのキャッチボールでさえ、ボールを受けるのが怖くて、泣いてばかりいたっけ。

本当に運動神経が良い人がうらやましい。

そんなことを思い出していたら、田嶋君が僕の分の限定コロッケパンを買っていてくれた。



「領ちん、パンだけ買っといたから、飲み物だけ自分で選んでおいで、ココで待っとくから」



「田嶋君、ありがとう!優しいね。」



僕がさっきの休み時間での会話で、コロッケが好きだから食べたいって言ったことを覚えていてくれたのが嬉しくて、田嶋君の手を取ってブンブン振り回した。



「領ちん、分かったから。ほら、手ぇ離して前行き。」



なせだか田嶋君は顔を真っ赤にしてそう言った。



「え?あっ、うん。行って来るね」



一番前まで来ると、ガラスケースの中には色んなパンが陳列されていた。



「美味しそうだなぁ。」



視線を移して行くと、焼きそばパンとコロッケパンのネームプレートの列には、もうパンが置かれてはいなかった。



「うわぁ、はやいなぁ」



さすが人気のパンだ。
今日食べれること、田嶋君に感謝しなきゃ。





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