鳳凰の宮学園
踊り場にて
ズンズンズン!
ズンズンズン!
止まることなく、ひたすら教室に向かって歩いて行く。
そんな僕を河上君が僕の腕を掴んで引き留めた。
「領、領、待てって!」
「わっ、河上君?」
「もうちょい、ゆっくり歩こう」
「あっ、ごめん・・・」
トイレを飛び出した勢いで歩いていたから、早足になっちゃってたんだ。
立ち止まった場所には、人が誰もいなくて僕達二人だった。
そんな静かな場所で、なぜか河上君のテンションが高くなっていて。
「領、お前ってマジでカッコいい!さっきのタンカ切ったの、俺っちマジで感動したよ!」
「カッコいい?僕が?」
「おお!領みたいに可愛くてケンカなんかできなさそうなのがさ、ピシッと言ったんだ、胸がスッーとしたね。」
エヘヘへへ、嬉しい!
顔がだんだんにやけてくるのがわかる。
カッコいいなんて言われたの初めてだよ。
「1年とはいえ、あいつら白黎会の連中を黙らせちまうんだもん。なんかスッゲェ良いもん見たよ!」
ヘェ。
あの人達、白黎会なんだぁ。
・・・白黎会?
その会って前に寮長が言ってた、セレブの人達の集まりの?
「あの人達がセレブ・・・見えなかった」
僕がポツリと呟くと河上君は大笑いした。
「ヒャハハハ!領ってば正直だよなぁ。俺も初めて間近で見たけどそう感じたもん。あいつら金持ちなんだろうけど、全然普通だよな!」
キーンコーン
カーンコーン
「ヤベェ、授業が始まる。行こうぜ、領!」
「うん!」
僕達は校則で走っちゃいけない廊下を、教室目掛けて走りだした。
到着すると、河上君がバッと振り向いて僕の頬っぺたを触った。
僕は驚いて、目を真ん丸にして河上君を見つめた。
「腫れてないけど、痛くないか?」
あっ!
さっき平手打ちされたんだった。
「大丈夫だよ、これぐらい。相手の力も弱かったし。」
それに2日前に打たれたのに比べたら、全然平気。
あの時は唇が切れてたし。
「そっかぁ、ホッとした。」
河上君の安心した顔が可愛くて頬が緩む。
「ありがと、河上君・・・」
僕がお礼を述べていると、覆い被さるように先生の大声が聞こえてきた。
「河上、柊木!授業時間はとっくに始まってるぞ。さっさと中に入りなさい」
「「はい!」」
僕達はそっと目を合わせて河上君は舌を出し、僕はそれを見てまた小さく笑った。
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