鳳凰の宮学園 tatsuya 雪狐 1 朝食を心行くまで食べ終わると、領と2人で校舎に向かう。 俺は中等部、領は高等部へ。 ハァ。 この時の領との別れが1日の中で1番つらい。 1歳・・・。 この1歳しか違わない年の差が、厳然と俺の前に聳え立って堪らなくもどかしい。 こうして今は傍にいても、領と過ごせるのは朝食の短い時間だけ。 領を知れば知るほど、もっと一緒にいたいと貪欲になる俺がいて、感情を抑えるのが難しい。 フフッ! 自分でも驚く程だ。 好きになるっていうのは、こんなにも独占欲が強くなるものなんだろうか? 少し前を楽しそうに歩く領。 まだ誰も通っていない真っ白な雪道に、足跡を軽くつけて喜んでいる。 「龍弥君、自分の足跡だけついてる雪道って楽しいね♪」 フフッ♪ 子供みたいに無邪気に笑って、はしゃぐ領の姿は本当に可愛い。 不思議だ。 今こうして腕を伸ばせば触れられるぐらい近くにいるのに・・・、遠い存在のように思えることもある。 近付いたり、遠のいたり。 いつも傍にいられるにはどうしたら良いんだろうか? 「あ!ねぇ龍弥君、この足跡って何の動物だと思う?犬かなぁ?」 領が雪道にうっすらと残る小さな足跡を見つけて言った。 一筋の線のようになっている足跡。 「あぁ、これは犬じゃなくて狐だよ。」 「狐!?」 「あぁ。ほら良く見て。犬は4本の足跡がつくんだけど、狐は前足のつけた跡に後ろ足を置くから2本しかつかないんだ。だから1本の線みたいになるんだよ。」 領は驚いていたが、次第に好奇心が湧いてきたようだ。 「龍弥君スゴいね♪狐に詳しいんだね!うわぁ、こんな都会にも・・・都心から離れてるけど狐がいるだなんて!」 「そうだな。ひい婆ちゃんが動物好きで、昔連れて来たんだ。だから何匹かこの森林にいるんだ。真っ白いふわふわした狐なんだぜ。」 「へえ〜!見てみたいなぁ♪可愛いだろうなぁ・・・///。」 うっとりとして見つめてくる領に俺はドキリとした。 可愛すぎる・・・///。 今すぐ胸の中に引き寄せて、あの可愛い唇にキスしたい。 きっと甘くて、柔らかなんだろうな。 思わず頬が弛んでしまう。 「領、見てみたい?」 「えっ、見れるの?見たい!見たいよ、龍弥君!」 俺は領を喜ばせたくて、白狐が通った道を、領の手を繋ぎながら歩いて行った。 [*前へ][次へ#] [戻る] |