鳳凰の宮学園
エントランス 3
「うん。昨日道を教えてくれたり、助けを呼んでくれたりしたでしょう。だからお礼を言いたくて。」
紫藤君は瞳を大きく開けて、僕を見つめた。
「柊木君、何も知らないの?」
「え?何を?」
今度は僕が戸惑う番だった。
一体紫藤君は何を言おうとしているんだろう?
紫藤君は少しばかりうつ向いたと思ったら、今度は僕に抱き付いてきた。
「柊木君、無事で良かったぁ〜!僕心配で昨日は眠れなかったんだよ〜!」
あわわっ?
よろける!
紫藤君は僕より、やや小っちゃいけど、こんな風に勢い良く飛び付かれると、支えるのが大変だ〜!
「あ、ありがとう心配してくれて。昨日は助けてくれた人がいたから大丈夫だったんだよ。」
「そう、良かったぁ〜!不良達はすぐに停学になったからね。もうすぐ卒業するし会うこともないよ。」
そう・・・なんだ。
上級生だと思ってたけど3年生だったのか。
フワッ。
あっ、良い香りがする。
シャンプーかな?
それとも香水?
目を閉じて紫藤君を抱き締めていたら、周りが途端にザワザワしてきた。
「キャー!紫藤君が抱き締められてる。」
「紫藤君に触るな!」
「俺の紫藤君を離せ!」
な、なに、今のは?
すごい野太い声が聞こえるんだけど?
僕はソローっと瞼を開けて周りを見てみたら、いつの間にかたくさんの人達に囲まれていた。
「ど、どうしてこんなに人が?」
僕が軽くパニックになっていると、紫藤君が耳元で囁いた。
「柊木君、離して。」
僕は言われた通りに紫藤君を離した。
すると周囲は俄に静かになったけど、段々と今朝の噂が飛び交い始めた。
「あいつ、寮長の恋人じゃないか?」
「ええ?あんな地味な子だったの〜?」
「じゃあなんで紫藤君を抱いてるんだ?」
だ、抱くって。
この学園の生徒はどうしてその方向に話が行くんだろう?
はぁ・・・疲れてきた。
「柊木君、ごめんね。僕が抱き付いちゃったのに、変な誤解されて。」
「え、あ、ううん。紫藤君のせいじゃないし。」
「優しいね、柊木君って。僕好きになりそう・・・///。」
え、ええ〜?
今日2回目の好きになりそう発言だぁ〜!
紫藤君みたいに可愛い子に言われると照れてしまう!
う〜ん。
こんなに可愛い子に告白されたなら変態の道に入ってしまうのも分かるような・・・。
はっ!
僕ったらなんてことを考えたんだろう?
紫藤君に悪いじゃないか。
僕は心の中で謝った。
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