鳳凰の宮学園
エントランス 1
学園から寮に向かう雪道を、転ばないようにゆっくりと歩いて行く。
回りを見渡すと、放課後もかなり過ぎていたので人影は疎らだった。
はぁ。
良かった〜〜。
今日は皆の視線が痛かったから、誰もいないとホッとする。
寮に辿り着くと、エントランスにいた管理人の本庄さんに声を掛けられた。
「柊木君、お帰りなさい♪遅かったようだけど、何処かに寄ってたの?」
「はい、図書室に行ってきました。でも本は貸出中だったので、借りられませんでしたけどね。」
僕がペロッと舌を出して言ったら、本庄さんは綺麗な顔で微笑んでから。
「そうだったの、残念だったね。柊木君、顔色悪いみたいだけど直ぐに部屋に戻るの?」
「はい。そうしようかと。ちょっと疲れちゃって。」
「そうみたいだね。ゆっくり休むんだよ。」
「ありがとうございます。・・・あ、あの本庄さんに聞きたいことがあるんですけど。」
僕が引き止めると本庄さんはパッと顔を明るく輝かせてから、嬉しそうに聞いてきた。
「何かな?恋愛相談?もしかして告白されたとか?それとも好きな人が出来たの?ゆっくり話したいよね?僕の部屋に来る?」
わわっ!
本庄さんに一気にまくし立てられて僕は気圧されてしまう。
「ち、違うんです。部屋番号を知りたいんです。」
「ああ〜!好きな子の?誰・誰なの!?」
な、なんかとっても女の子みたいにキャピキャピして楽しそうなんだけど・・・。
「1年の紫藤君です。」
本庄さんがピタリとキャピルのを止めて、僕をジィっと見てる。
急にどうしたんだろ?
僕は遠慮がちに再度聞いてみた。
「紫藤君の部屋番号を教えて欲しいんですけど・・・。」
僕がそう言うと本庄さんは低い声で話し出した。
「柊木君って紫藤君みたいなのがタイプなの?」
はぁ!?
タイプ〜?
何のですか?
僕、男の子ですよ?
確か紫藤君もそうだったと思うんですけど〜?
そりゃあ、紫藤君は女の子みたいに可愛いけれど。
「どう考えてもネコ×ネコだよね〜?どっちがタチになるんだろ?そ、そ、それともリバ〜?うわぁ〜!可愛い子同士って・・・///。ちょっと興味あるかも。」
ほんじょうさ〜ん?
意味不明な言葉を喋り続けている本庄さんを、どうやって止めたらいいのか分からない僕は、ただただひたすら早くこっちの世界に戻って来て下さい!と願うばかりだった。
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