眠れぬ夜
夏の始まり 6
僕は夢を見ているんだろうか?
不動が僕を好きだなんて、そんなことあるわけないのに!
なんだか宙に浮いているようだ。
嬉しい!
あぁ、僕も好きだ!
好きだ・・・けれど。
でも・・・。
だけど、そんなの信じられない!
だって・・・そんなのおかしい。
どうして急に?
今まで、全くそんな素振りを見せなかったじゃないか。
ただ・・・ただ、僕を蹂躙して・・・強引に身体を開かせて・・・熱い昂りを押し付けてきて・・・滅茶苦茶に引き裂いた・・・。
でも・・・
本当にそれだけだったろうか?
初めは確かに抱くというよりは、sexという名の暴力だった。
でもいつ頃だろうか?
ふとした行為に優しさを感じることがあったのは。
僕が不動の瞳を真っ直ぐに捉えていたら、不動の瞳が強い光を帯び始めてきた。
「鷺ノ宮、信じてくれとは言わねぇ。だが俺はマジで、本気でお前に惚れた。嘘じゃねぇ!」
クラクラ・・・する。
もう、話さないで。
これ以上僕をドキドキさせないで!
僕は腰が抜けてズルズルと床に崩れ落ちた。
「鷺ノ宮、大丈夫か?ワリィな・・・迷惑だった、よな?でも俺はお前が好きだから。」
「ど、して?いつから?」
喉がカラカラで上手く喋れない。
「わかんねぇ。気付いた時には、もうお前に惚れてた。」
どうしよう?
このまま不動を受け入れても良いのだろうか?
勿論、良いに決まってる!
だけど・・・信じていいの?
僕が下を向いて悩んでいると、不動が息を吐いた。
「何にも考えなくていい。俺が勝手に好きなだけだから、お前は無視してろ。」
僕は不動を凝視した。
違うのに。
僕だって不動が好きなんだ。
「不動!僕は・・・僕は・・・。」
僕が思いきれないでいると、不動はフッと笑ってから僕の髪の毛に指を入れて耳元で囁いた。
「お前は気にするな。」
不動はそう言うと僕を立ち上がらせてくれた。
僕は自分に呆れていた。
不動の事が好きなのに、返事が出来ずにいる僕に。
何で言えないんだろう?
最低な弱虫の僕。
「鷺ノ宮、泣くな。目が腫れるぞ。折角の綺麗な顔が台無しだ。」
不動の指先が僕の涙を拭ってくれる。
優しい不動。
本当に・・・本当に僕が好きなの?
信じていいの?
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