眠れぬ夜
親友 3
空き教室にどれぐらい居ただろう?
神谷が僕の泣き止むのを黙って待っていてくれていた。
授業が始まろうとしているのに気付いて、僕は慌てて神谷に教室に戻るように言った。
「神谷、先に戻って。僕はサボる。」
僕の発言に驚いたのか、神谷は目を大きく開けた。
「お、おま、サボるって?」
「うん。泣き顔のまま行くの嫌だから。腫れが引いたら戻る。」
神谷はしぶしぶながらも、納得してくれて教室に戻って行った。
あぁ。
これまでサボるなんてことしなかったのになぁ。
僕は机に腰掛けて窓の外を眺めていた。
穏やかな午後の日。
僕の前までの日常。
今は・・・、
今は・・・。
もう、戻れない。
違うな・・・戻りたくない。
不動を知らなかった日になんて戻りたくない。
そんな事を考えていると、教室のドアが静かに開いた。
僕は神谷が戻って来たのかと思い、振り向き様声をかけた。
「神谷?」
一瞬、空気が止まったかのようにその場が静かになった。
逆光で顔が見えなかったが、教室に入って来た人物は、ゆっくりと僕に近付いて来た。
その人物が目の前迄来ると、僕は驚きのあまり息を飲んだ。
「こんなとこで、何やってんだ?」
何でいつもいきなり現れるんだ?
「おい、目が赤いじゃないか?」
どうして時折優しい声で僕に話しかけるんだ?
「鷺ノ宮?・・・オイ、聞いてるのか?」
不動の両手が僕の頬をすっぽり包んでくれ、その大きな温かい手にまた、涙が溢れてきた。
「・・・!」
そんな僕を見て不動は力強く抱き締めてくれた。
そして・・・
僕が望んでいた、
熱く激しい
キスをしてくれた。
「ハァ・・・、ハァ・・・。」
舌を絡められて、不動の吐息が間近で聞こえると、僕の五感は痺れたような甘い感覚が沸き上がる。
「はぁ、はぁ、アッ・・・んん?」
不動の唇が離れようとして、僕は逃がさないように舌を絡めた、そうしたら不動は少し笑って先程よりも深く口付けをしてくれた。
「ァ!」
ダメ。
僕は自分が昂ってくるのが分かって、慌て不動から離れようとした。
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