眠れぬ夜
親友 2
「神谷、それって・・・」
僕はどんな顔をしているんだろう?
神谷は僕の腕を掴んで、教室から連れ出した。
上の階の空き教室に連れ込まれてから、やっと腕を離された。
「神谷・・・。」
神谷は一言も喋らない。
「神谷、見たっていうのは・・・」
僕の言葉を遮って、神谷が喋り出した。
「鷺ノ宮、お前、あいつに脅されてるのか?」
「え?」
「不動に脅されてるんだろう?金なのか?」
あぁ。
そうだよな。
普通はお金だって思うよな。
でも、僕の場合。
「脅されてるんなら、俺があいつに話をつけてやるから、鷺ノ宮は悩む事なんてないからな!」
神谷は教室から出て行こうとして、僕は慌てて引き止めた。
「神谷、違う、違うんだ!」
神谷はピタッと止まり僕を凝視した。
「何が、違うんだ?」
僕はどう話していいものか分からなくて、黙ってしまった。
不動の事、何て話せばいい?
「神谷、もう少し・・・もう少し、待って欲しいんだ。」
神谷は眉毛をピクンと跳ね上げた。
「待つ、って何を?」
そうだ、何を待つんだ?
不動と僕の関係なんて、一生神谷には話せないじゃないか。
「鷺ノ宮、お前どうしたんだよ?最近、変だ。不動と何があるんだよ?」
「・・・」
「鷺ノ宮!」
「・・・話せない。」
神谷は僕を絶望的な目で見た。
僕だって話せるものなら全て神谷に話している。
でも、不動の事は簡単には話せない。
神谷に飽きれられても仕方無い、そう思うとふいに涙が溢れてきた。
「鷺ノ宮!」
「ごめ・・・ん。今は話せない。・・・話せないんだ。」
神谷が泣いている僕の肩を抱きしめて、背中を撫でてくれた。
「鷺ノ宮、ごめん。俺、俺、お前が心配で。泣かせるつもりなんてなくて・・・ごめん。」
僕は神谷の優しさが嬉しくて、いずれちゃんと話そうと決めた。
神谷なら受け止められなくても、僕の話しを聴いてくれそうな気がする。
「神谷、心配してくれてありがとう。今は話せないけど・・・いつか、いつか・・・」
「あぁ。待ってる。お前が話してくれるまで。」
神谷と僕は暫くそのまま抱き合っていた。
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