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眠れぬ夜
捨て猫 4


僕は驚きの余り不動を凝視し、手からは傘が滑り落ちた。



僕の唇に軽く触れた不動の唇は思ったよりも堅くもなく柔らかくもない。

だけど唇の体温が温かくて気持ちが良い。



間近で見る不動の肌はキメが細かくて睫毛も意外と長い。

そして何よりも、瞼を閉じ眉間に少し皺を寄せた顔が格好良い。

僕が目を見開いたままでいたら、不動が瞼を上げた。

力のある、綺麗な黒曜石のような瞳。



不動は一度唇を離すと、今度は力強く、噛みつくようなキスをしてきた。

僕はキスなんてしたことがなかったから、どうしていいか分からなくて、じっとされるがままになっていた。



く、苦しい。

息が、出来な・・・。

酸欠になる!って思ったところで不動は唇を離した。

僕は口を開けハフハフ言って酸素を取り込んだ。

その隙に不動の舌が僕の口内に入り無遠慮に犯した。

舌を絡めたり歯列をなぞったり、僕の脳内は気持ち良くて溶けそうになっていた。



クチュクチュ。



僕と不動のキスの水音が聞こえてくる。

恥ずかしい。

だけど・・・、

不動とキスしてるんだって思うと、堪らなく嬉しくなって、身体の奥から快感が押し寄せてくる。

唇が離れると、僕は名残惜しげに不動の唇を見つめていた。

そんな僕に構わず、不動は傘を拾って手渡してくれた。



「濡れちまったな・・・さぁ、行くぞ。」



不動は僕の手を引いて、家まで送ってくれた。

そして僕が家に入るまで不動はいつものように外にいた。



家に入るとお手伝いの絹子さんが僕の様子に気付いて慌て駆けよってきてくれた。



「玲様!どうされたんですか?びしょ濡れじゃないですか。直ぐにタオルをお持ちします。お風呂もすぐに用意しますからね。」



絹子さんは急ぎ足でロビーから消えた。

僕はロビーに佇んでしばらくボォーっとしていたが、急に仔猫のことが気になって傘もささずに公園に向かって走り出していた。

独りで寒さに震えてる仔猫を放ってはおけない。

公園に着くと先程仔猫がいた場所を捜してみたけど見つからなかった。

何処に行ったんだろう?

見渡していると最初に入っていた段ボールが無かった。



「良かった。誰かが拾ってくれたんだな。」


僕は安堵したせいか体の力が抜けて、その場に座り込んだ。



そして思い出す。



不動との熱いキスを。





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あきゅろす。
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