眠れぬ夜
雷雨 3
誰もいない放課後の廊下を僕はひたすらに走った。
不動が言ったって?
僕を落とせるかって?
どうして?
自然と涙が零れた。
不動が僕をどう思ってるのか解っていたことじゃないか。
ただの暇潰しの遊び道具。
sexさえ出来ればいい相手。
男だから後腐れもない?
今は・・・、
もう飽きたのか?
僕は壁に寄りかかって嗚咽した。
不動が好きなのに。
好きになって、初めて自分が惨めなことに気が付いた。
僕のこの気持ちは、恐らくずっと一方通行で、叶うことは一生ない。
分かっていたはずなのに。
つらい。
こんなにも辛いなんて。
僕はしばらくの間、その場所にしゃがみ込んで泣き続けていた。
外の雨は、まだ降り続けている。
※ ※ ※ ※
放課後の教室でタバコを吸いながら、雨が降っているのを見つめていた。
小さい時から雨が好きだった。
気分が落ち着き、何故か良く眠れる。
優しい雨でも、雷鳴が轟く豪雨でも。
そんな感傷に浸っていると、けたたましい喚き声が聞こえてきた。
「紘平!聞いてよ!あの男ったら、あたしを拒絶したのよ、許せない!」
俺は杏子を見ずに答えた。
「へぇ?お前みたいな綺麗な女を拒絶だって?」
俺は心底楽しくなった。
「そうなのよ!紘平、あいつを、あの綺麗な顔を傷つけてやって!」
俺は杏子の話を聞いてはいなかった。
拒絶・・・か。
普通の男なら、杏子みたいな綺麗な女は高嶺の花だろうが・・・。
鷺ノ宮には、どう写っていたんだろう?
「紘平!?聞いてるの?あたしバカにされたのよぉ!」
「俺には関係ねぇだろ。」
「ヒッ」
杏子は俺の睨みに青ざめた。
吸っていたタバコを床に棄てて、椅子から立ち上がり、俺は教室から出て行った。
鷺ノ宮は何処に居るんだ?
とりあえず、あいつのクラスに行ってみるか。
まだ居ればいいが。
ゆっくりと廊下を歩いて行き、あいつの教室に向かった。
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