眠れぬ夜
雷雨 2
不動の彼女が僕に何の用だろう?
「鷺ノ宮君、あたし3年の安西杏子っていうの。」
「え?あぁ、初めまして。」
不動の彼女、安西さんは年上だったのか。
間近で見ると本当に綺麗だ。
巻毛も爪の手入れも行き届いていて、女らしさに溢れている。
「くす。鷺ノ宮君って可愛いわね。」
僕は真っ赤になったと思う。
女の人から可愛いなんて言われたら照れる。
「本当に間近で見ると綺麗な顔してるわね。キスしたくなっちゃう。」
えぇー?
そんな安西さんは不動の恋人じゃないか。
「ねぇ、鷺ノ宮君、あたしと気持ち良いことしてみない?」
僕は後ずさった。
何を言い出すんだろう。
さっきまで綺麗だと思っていた安西さんが、何故か醜悪に見える。
安西さんは僕の首に腕を回してきてから、顔を近付けてきた。
僕は嫌悪を感じて安西さんの腕を振り払い、一歩距離をおいた。
「きゃっ?酷いわ鷺ノ宮君。どうして振り払うの?」
安西さんは涙を溢れさせながら聞いてきた。
「どうしてって、あなたは不動の彼女でしょう?」
安西さんは目を見開いて僕を見つめた。
そうしてから口元を歪めて、妖しさを含んだ笑みで僕に再び迫ってきた。
「だったらどうだっていうの?別に彼氏がいたって、他の男とキスしたいと思ったらしても良いじゃない。」
安西さんの言い様に僕はショックを受けた。
不動と付き合っているのに、他の男とキスしたいだなんて。
僕はそんな風には思えない。
ふいに不動が彼女に裏切られているのが悲しくなった。
「鷺ノ宮君、不動が恐いからあたしとキスできないの?」
安西さんは的外れな言葉を言い出した。
「大丈夫よ。不動はあたしが鷺ノ宮君とHしたって何も言わないわ。」
「ど、どうしてですか?」
僕は訳が分からずに聞いた。
「だって、うふふ、不動があたしに鷺ノ宮君を落とせるかって言ったのよ。」
僕は胸をギュッと掴んだ。
心臓が破裂しそうだ。
「だからぁ、鷺ノ宮君は心配しないであたしと気持ち良いことしましょう。初めてなら教えてあげる・・・。」
僕は安西さんの言葉を最後まで聞かずに図書室から逃げ出した。
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