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えぃ!
恩返し 2


俺が動かずにいると、皇紀が痺れを切らしたようで。



「彼女じゃないにしろ、お前の知りあいだろ?門下生でもないのに道場に上がるなんて失礼な奴だ。さっさと追い出せ、目障りだ!」



こ、こぇ〜!
こいつは普段優等生だけど、礼を軽んじる奴を見ると人が違ったようになるんだよな。



皇紀に目で促されて、仕方なく石倉桔梗の方に向かって歩きだした。

そうしたら向こうも気付いたようで。



「一条君!おはよう。」



「・・・ああ。おはよ。」



石倉桔梗は美少女らしく長い髪をはためかせて、おしとやかに歩いてきた。



その姿に、場内の野郎共は目が釘付けだ。



まぁ、確かにそんじゃそこいらでお目にかかれるような女ではないだろうけど。



ガン見しずきだっつうの!

そんなに餓えてるのかぁ?



「どうかしたの、一条君?」



「は?あ、あぁ何でもねぇよ。それよりお前、この前勝手に道場に上がるなって言ったよなぁ。そのせいで師範に怒られちまったじゃねぇか。」



「あ!ごめんねぇ〜♪忘れてたぁ!」



小首を傾げた石倉桔梗は、その可愛い仕草で野郎共を悩殺した。



バタッバタッ!

「超カワイイじゃん!」
「桜の彼女かなぁ?」
「げぇ、あんなガキにゃ〜もったいねぇ。」



誰がガキだ!誰が!
聞こえてんだよ。



「それで、俺に何か用なのか?」



「う〜ん。え〜とね。」



なんだ?
急にモジモジして?



「はっきり言えよ。らしくないなぁ。」



「そうなんだけど〜。ちょっと頼み事があるんだ、一条君に。」



「頼み事?どんな?」



この時、俺は後々厄介な問題に遭遇するとは思いもよらずに石倉桔梗に尋ねた。



すると石倉桔梗は思い切ったように、早口で捲し立てた。



「何も言わずに1日だけ私の彼氏のふりして欲しいの。」



「・・・。」



ハァ?
彼氏ぃ〜?
1日だけ?



「ね、お願い!」



「ムリ。面倒事はごめんだ。」



「うっ〜〜〜。」



えっ?
ええ〜!
な、なんで泣く?



「桜ぁ、女を泣かせんなぁ!」
「可哀想だろ。」
「最低だぞ!」



げげぇ。
俺が泣かせたワケじゃあ。

慌てふためいていると、石倉桔梗が俺にだけ見えるようにニッコリ笑い。



「ね、お願いね。一条君!」



あ、あ、悪魔だぁ!

俺は悪魔に捕まってしまった。






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