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花とともに“さよなら”


「はい、餞別」

花束を両手で受け取った彼の、驚いた顔。
きっと俺が知ってると、思ってなかったんだろう、な。

「アメリカ、行くんでしょ」
「あ、あぁ。」

なんで、って顔。

「祐希、か?」
「残念。春から」
「そう、か」

なんで言ってくれなかったのか、なんて聞くだけ無駄で。自分を一層惨めにするだけで。
全部ぜんぶ、分かってる。

俺が要を好きなことを、要は知っている。知ってて、普通に接してくれる。
そんなところにまた一層惚れこんでみたりして、悪循環。
だから、きっとアメリカ行きを告げないでくれていたのも、彼の優しさ。
結果それが裏目に出たことを、彼は一生知らなくていい。(春から聞いたとき、どれだけ傷ついたことか、)

何を贈るか考える時間もなくて、急いで近くの花屋に駆け込んで、ありったけのお金を出して花束を作ってもらった。
両手で抱えて歩くような。とびきり大きな、クロッカスの花束。クロッカスの、花言葉は、



駆けて、駆けて、いつ君はいなくなってしまうのか、分からないから、ひたむきに駆けて



君の姿を見つけたとき、俺は死んでしまうんでないかと、思ったんだ。
乱れる息を整えて、さも、何気なく、歩いてきたかのように

想いが溢れないように、迷惑をかけることの、ないように。


















「いつ…、いつ帰ってくるの」
「…帰らない。大学を卒業したら、向こうで就職しようと、思ってるんだ」
「……そう」
「ごめんな」
「なんで要が謝るの」
「ごめん、ごめんな…」


「要、…好きでした。俺…っ、誰より、ずっと要が好きでした、っ」
「…っ、ゆうっ!」
「だから、

だから、頑張って、 お元気で、
また、っ

また、いつか」







“au revor.”with the bloom !
踵を返して、歩いた。どこまでも、どこまでも。
流れ落ちる雫に気づかないフリをした。
このまま消えてしまっても、かまわないと、思った。



クッロカスの はなことばは 「あなたを待っています
来ない"いつか"を想ってこの花を贈った俺を、
誰か笑って下さい。



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