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零の天使は奇跡を歌う。
第0話「災禍の果てに」
『嘘だろ、何でこんなっ……!!』

『みんな……死んじゃった、の……?』

崩折れる少年。
泣き崩れる少女。
その2人を見つめる自分自身。

少年少女の視線の先には、寄り添いあい永遠の眠りにつく12人の少年少女の姿がある。
彼らが背にしているのは、旗だ。
マントか何かを繋ぎ合わせたような、拙い旗。
彼らが確かにここにいたことを、生きていた事を、生き抜いた事を証明する旗。

『懐かしいだろ? 優』

ふと、少年でも少女でも自分でもない、第三者の声がした。
そして自分は、この声の主を知っている。

「…阿朱羅丸か。何の用だよ?」
『冷たいね、優。僕が見つけた面白そうな君の記憶を見せてあげているのに』
「…記憶? これが、俺の記憶だっていうのか?」

当たり前だが、優には心当たりがない。
少年の名前が解らない。
少女の名前も解らない。
眠る彼らにも、全く見覚えがなかった。
《百夜優一郎》として生きた来た16年の中で、彼等に関する情報はからきし出て来ない。

だが、鬼は、笑う。
楽しそうに、嬉しそうに、嗤う。
そして、笑いながら、話すのだ。

『確かに「今の君」には彼等が誰かなんて解らないかもしれない。
覚えていないかもしれない。
思い出せないかもしれない。
けれど、これだけは忘れないで、優。どれだけ永い時を経ようとも、その姿形が変わろうとも、深奥にある本質は何も変わらない。彼は君で、君は彼なんだ。
だからいつか思い出せる日が来る。
思い出さなきゃいけない日が来る。
そして君は止めないといけない。今一度終わりの時を越えて、未来を掴むために』

「はぁ? ちょ、それどう言う……」

だがそこで、阿朱羅丸がクルリと背を向ける。
優に背中を向ける。
宿主の言葉を遮って。
ここから先は自分で考えろーーまるで、そう言うかのように。
優は質問を諦めて、現実世界へ意識を浮上させる為に目を閉じた。


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