Main このせつ 「タンポポ」 学校の帰り道。 小さな黄色い花を咲かせたタンポポを見つけた。 まるで私に笑いかけているかのようで、とても可愛らしい。 自然と顔が綻んだ。 「せっちゃーん!!」 後ろから大好きな声が聞こえてきた。 歩くのを止めて振り返ると、通学カバンとスーパーの袋を何個も持っているお嬢様が、てけてけ小走りしている姿が目に入った。 「お嬢様!荷物持ちますよ!」 急いで駆け寄り、手を差し出す。 「ん。おおきにー。」 お嬢様から、いくつかスーパーの袋を受け取った。思っていたよりはるかに重い。 こんなに重いものを持って、私のために小走りしてくださったかと思うと、申し訳ない反面、とても嬉しくなる。 「それはそうと、今、何ニヤニヤしとったん?」 「ふぇ!?ニヤニヤなんてしてませんよ!?」 「ううん!今絶対にやけてた!」 「いや、それは、季節はずれの遅咲きのタンポポを見つけて、ちょっと嬉しくなって……。」 周りからみれば、にやけていたように見えるのか。 後から恥ずかしくなってきた。何となく居心地が悪くて、お嬢様から目をそらし地面に生えた黄色い花を見つめる。 「小さい頃はよくタンポポ摘んで遊んでましたよね。」 「そやね。懐かしいわあ。」 私達は、5月になると庭いっぱいに咲き誇っていた黄色い花に思いを馳せた。 まだ、あの庭にはタンポポが咲いているのだろうか。 「どっちがいっぱい摘めるか、ってよく競ったなあ。」 「大抵お嬢様が言い出しっぺでしたよね。」「それで、なんでかせっちゃんってばいつもどろんこになってたな。」 クククと可笑しそうに笑う。 「それは…。それだけ集中していたんですよ!!」 「せっちゃん、言い訳になってへんよ。」 お嬢様はまたまた目を細めて笑った。 タンポポ摘み競争で私は負け続けていた。負けるのは悔しいから一生懸命になって摘んだ。そしてお嬢様にいつも負けるのだ。 でも正直それでも構わなかった。 だって、勝ったと分かったとき、お嬢様の笑顔が見られるから。 一面に咲き誇っていたタンポポのような、まぶしくって、温かな笑顔が。 お嬢様の笑顔を見て、そんなことを思い出した。笑われていたはずなのに、なんだかくすぐったくなってきて、つられて笑い出してしまった。 「っ……ふふふ。」 「ん?どうしたん?」 突然私が笑ったものだから、お嬢様は不思議そうに私の顔をのぞき込んできた。 お嬢様は無意識にあの溢れんばかりの眩しい笑顔になるんだろう。 でも私にとって、その笑顔は全てだ。その笑顔を守るために私はいるのだから。 いつまでもその笑顔を絶やさないで欲しい。 「せっちゃん!?どうしたん?」 「何でもないですよ。それより、早く帰って夕飯の準備をしないと、明日菜さんが遅いって怒りだすんじゃないですか?」 「そうやった!!アカン!せっちゃん、その荷物ウチの部屋まで持ってきて!!」 日が傾きはじめて、オレンジに染まった道を、私達は走り出した。 Fin, あとがき! でました!季節ハズレSS! 真夏だろうが、真冬だろうが、書きたいものを書く。それが、抹茶クォリティー!≡≡≡ヘ(*--)ノ← このせつって本当に大好きなんですが、口調がわからなくて挫折しやすかったです。京弁はもちろん、せっちゃんの口調も予想外に難しかったです。 もっと色々なサイト様をめぐって勉強します!('◇')ゞ [*前へ][次へ#] |