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距離なんてわからない。
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蓮の家に住み始めて1週間、春休み中だったまゆみは着実に蓮の事を分かってきた。
彼女はいなく、いろいろな女性と見かける。
仕事に行っているが帰りは早い。
家事は一切せずにいつもパソコンをしている。

どう見たって駄目男だが、まゆみには関係ない。
家事は楽しいし全部任されたほうが楽なのだ。


それにしても・・蓮さんって
もてるし、仕事もできる人だし大黒柱(?)!


まゆみは呆れるどころか尊敬していた。

それとは裏腹に蓮は呆れていた。
まゆみは蓮の誘いをことごとく交わしているのだ。

「まゆみ」
洗濯物を干しているときにふと呼ばれたまゆみは後ろを振り返った。
「どうしたんですか?蓮さん」
黒のふんわりしたワンピースに白いふりふりのエプロンを着用して家事をこなす姿はまるでメイドの様。

「まゆみ、敬語はやめろ。んで、”さん”もいらない」
蓮の言葉にまゆみはにっこりした。
「わかった!これからはふつうにしゃべるね、蓮君」
「”君”って・・」
少し照れている蓮。
この一週間でいろんな顔を見たまゆみはなんとなく蓮がかわいく見える。
「かわいい・・」
思わず口にしてしまった言葉を蓮は聞き逃さなかった。
「かわいいって何が?」
「えっ・・?あ、あの、蓮君が・・」
ぐいっとよった蓮の顔に今度はまゆみが照れてしまう。
「かわいいか・・。
 どっちかってゆーと、俺はかっこいいって言ってもらう方が好きだけどな」


か・・かっこいい・・。
てか、顔近いよぉ・・!


「あ・・あの・・えと・・」

パニックになり、何も言えなくなったまゆみを見て微笑する蓮。
「どーした?」
「な・・なんでもないっ!」
目をそらして後ろを向き、再び洗濯物を干しだすまゆみ。


な・・なんか、どきどきする。
お兄ちゃんってこんな感じなのかな・・。


まゆみをからかった蓮は満足していた。
最初はめんどくさいと思っていたが、一々の行動が面白いのだ。
今まで適当だった毎日の生活が一気に楽しくなった。


本当、いいおもちゃが手に入ったな・・。
しばらくはこいつで飽きないな。


一方洗濯物を干し終わったまゆみは悩んでいた。
明日で春休みは終わり、高校の入学式がある。
しかし、蓮の家に来た事で少し高校が遠くなったのだ。
「歩いて行けたのになー・・。
 やっぱ自転車かな?」
やっぱり自転車だなっと思ったまゆみは、蓮のところに行った。

こんこんっ
蓮の部屋をノックする。
「入っていいぞ」
すぐに蓮の声がした。


そーいえば、初めて蓮君の部屋に入るな・・。
ちょっとどきどきする。


「失礼しまーす・・」
そっと中に入るととても1人の部屋とは思えない広さだった。
黒と白で統一された家具で大人の雰囲気のある部屋。
その一番奥にあるデスクのイスに蓮は座っていた。
「何だ?」
「あのね、蓮君。
 私、明日から学校なんだけどね。ここからじゃちょっと遠いんだ。
 だから、自転車貸してくれない?」

その言葉に蓮は目を丸くしてから、まゆみに分からない程度に微笑んだ。
まゆみが蓮に初めて”おねだり”をしたのだ。
「悪いが自転車は持ってない。
 ちなみに、どこの高校なんだ?」
「?緑が丘高校だよ」


緑が丘か・・・へぇ・・。


「そこなら近い。送ってやる」
蓮の言葉にまゆみはびっくりする。
「えっわるいよ!それに毎日はムリでしょ?」
「悪くないし、ムリじゃない。
 お前もその方が楽だろ?」


そりゃあ楽だけど・・大変じゃないかな。
それに蓮君だって働いてるし・・・。


「蓮君、働いてるでしょ?
 遅刻なんてしたら、上司に怒られるよ?」
まゆみのセリフにくくっと笑ってしまった。


そー言えば、何も言ってなかったな。
ま、またの機会でいいかな・・。


「お前が心配することはない。
 ありがたく素直に喜べ」
そのときの不敵の笑顔に、まゆみは思わず赤面してしまった。
「あ・・ありがと。
 お礼に今日は蓮君の食べたいもの作るね!何がいい?」
通学方法が決まって安心したまゆみは、つい癖でベッドに座ってしまった。
この行動はどっからどう見ても誘っている。
こんなことが何も考えずにできるまゆみはある意味すごい。
「食べたい物・・・かぁ。 じゃあ、まゆみ」


・・・?
え?今、私の名前言った?


「え・・?どーゆー・・」
「こーゆー意味」

イスに座っていた蓮はもうベッドにいるまゆみの前に立ってあごを掴んでいる。
この素早さは手慣れている証拠だ。
ゆっくりと押し倒し、上からまゆみを見る蓮。
一方まゆみはこの状況について行けずに照れて目が泳いでいる。

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あきゅろす。
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