距離なんてわからない。
5
そして今。
家の中に入ってもきれいで大きくて高そうなモノばかり置いてあって、・・つまりこの人はお金持ち。
自分とは違う人にまゆみは興味津々だった。
家の中に入ると何も言わずに廊下を歩いて行ってしまったので急いでついて行った。
リビングに着くと、
「そこに座りな」
いかにも高そうなきれいな黒いソファに座らされ、しばらく待っているとお茶を持ってやって来た。
「ありがとうございます」
にっこりと笑ってから、飲むとすごくおいしくてジャスミンの香りがした。
おしゃれ・・・
でもこの人、誰なんだろう・・・。
顔に出たのか心を読まれたのか、男の人が声えおかけてきた。
「で、どこまで話聞いてる?」
「え・・?」
「だから、ゆみにどこまで聞いてるのかって聞いている」
どこまで?
あぁ、そーだった。
私、電話でここに行けって聞いた以外何も知らないや。
「えっと、平沢みゆさんのお家に住むのが決まっててお家に伺ったんですが開いてなくて。
ここに行けって電話で言われたので来ました」
一通りしゃべった後、両手で持っているジャスミンティーを飲んだ。
しかし一行に動かない男の人。
・・?
「どーかしましたか?」
「えっと、じゃあ君は僕が誰か分かっていない?」
「はい。あっすみません!お名前聞いてなかったですね」
「いや・・うん」
はぁあ〜、とため息をついている。
どーかしたのかな?
もしかして、迷惑だったかな・・?
すると、突然自己紹介を始めたその人。
「俺は平沢蓮、25歳。平沢みゆの子供。
洋服の会社の仕事をしている。この家に1人暮らししている」
短く、しかし簡潔に自分の説明をした蓮と名乗る男。
「私は小宮まゆみ、16歳です。高校1年生です。」
自分の名前と年齢しか言っていないまゆみ。
「で、何故私はここにつれて来られたんですか?」
「あぁ、みゆは仕事の都合で家に居られないから俺が預かることになった」
あぁ、そーゆーことかぁ。
「わかりました!よろしくお願いしますっ」
まゆみが言うと、蓮は思い切り何か変なモノを見つめるような眼差しでまゆみを見た。
それもそうだろう。
一人暮らしの男の家に住むと知って、分かりました。と答える女子高生がどこにいるだろう。
すると、まゆみは何かに気づいたのかはっとした。
「つまり、私とあなたが一緒に二人で暮らすんですかっ?」
その言葉にくすっと笑って立ち上がり、まゆみに近づく蓮。
「そーゆーこと。男と女が一つ屋根の下・・何かやることがあるよな?」
蓮の意味ありげなセリフをまゆみはその天然&鈍感で抹殺する。
「はい!家事当番ですねっ」
すっとぼけたまゆみの返事に蓮は目を丸くする。
蓮の顔に笑顔のまま首をかしげる。
また何かを諦めたかのようにため息をつく蓮。
そしてまゆみに向けて言った。
「これから一緒に住むんだし、蓮でいい。あと敬語もいらない」
蓮の言葉にまゆみも嬉しくなる。
これって家族として認めてくれたんだよね・・!
よかった、優しい人で。
勘違いするまゆみは
「はい!私のことも、まゆみって呼んでくださいっ」
と笑顔で返事した。
蓮はそのまま自分の部屋に戻っていった。
えへへ・・・。
私、お兄ちゃん欲しかったんだよね!
まだ、まゆみは本当の蓮に気づいていない。
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