距離なんてわからない。
4
「着きましたよ」
大きな声で目が覚めると、運転手が心配そうにこっちを見ていた。
「あ・・すみません」
よかった、病気かと思った。 と優しそうな女の運転手が笑った。
思わずこっちまでにっこりしてしまった。
「どーもすみませんっ」
謝ると、いいえ いいのよ と優しく言ってくれたが、何故かにやにやしている。
「あなた、私だったからよかったけどね。
あなたみたいな可愛い子がどこでも寝ると襲われちゃうわよ?」
運転手はからかっていた。
しかし、まゆみは純粋なうえにピュアなのでそういう話に疎い。
何せ告白されても気づかずにふつうに接して「あぁ、振られたんだ」と勘違いさせるため、人と付き合ったことがないのだ。
「あぁ、そうですね!
いつ殺されたり誘拐されたりするか分からないですもんね!」
この言葉に一瞬で鈍感な子だと感じた運転手は ははは、と適当に笑ってからお辞儀をして車を走らせた。
タクシーに手を振って後ろを振り向くと、とんでもなく大きな家が建っていた。
運転手との話に夢中になっていて周りを見てなかった。
「ここに住むのかな・・?てか誰の家?」
とまどいながら、インターホンを押した。
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