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戦記
剣と剣、志と志《一》

「京の町に火を放ち、その混乱に乗じて帝を奪取する」
「日本の夜明けが近づいたな」

とある料亭で、尊皇攘夷派の志士たちが小さな会合を開いていた。
街に火を放てば、京に住む人も巻き込まれることは必至だ。

だが、理想の実現ために手段を選ぶ余地などない。

例えそれが人の道に反することだとしても、彼らはやらねばならなかった。

志士たちの目にはどこか狂気じみた、力強い光があった。

志士たちが視線を交わした、そのときだった。

階下で騒がしい足音が響いた。
上がってくる。

志士たちはそれぞれの得物を手に取り、柄を握った。
一人が襖に手をかける。
一気に開け放った。

そこに居たのは、浅葱色にダンダラ模様の羽織を纏った男たち。

「新撰組……!」

志士たちは刀を抜き放った。

「お前らも運が悪かったな」

先頭の男が不敵な笑みを浮かべて言う。
志士は刀を抜いた。

「……志半ばで、倒れてやるつもりはない!」

確かな眼光が、志士の目に煌めいている。

“尊皇の志士”を名乗る者たちの中には、ただのならず者のような輩も少なくないが、彼らは違ったようだ。
その志士の姿を見て、男は名乗ってやる気になった。

「新撰組副長 土方歳三」

刀を抜きながら、言い放つ。
この名に何人の志士が恐れおののいただろう。

だが、ここに集った志士たちは怯むどころか、闘志をその目に燃やしている。
志士は無言の気迫を放ち、土方に斬りかかってきた。

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