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間接的キス2

翌日、無事に任務の初期段階はクリアして、紅茶は手に入れた。
学校に着いてから、元親に見つからないように、鞄の中にしまう。

それから、一限から四限まで授業を受ける間、早く昼休みにならないかと、心の中がそわそわしていた。
紅茶を喜んで貰えるだろうかと、期待半分、不安半分なのだが、政宗の目的はそれだけではない。
片倉先生が、紅茶を受けとるにしろ、受けとらないにしろ、ストローごしに間接キスが出来るかもしれないと、淡い期待を膨らませていた。

慶次と元親のやり取りから、自然な流れでいけば大丈夫だと、自分を落ち着かせる。

四限終了の合図と共に、教科書、ノート、筆箱を机にしまうと、元親に一言断って、鞄を持ち職員室に向かった。
今日の重要任務が、開始したのだ。

職員室の扉を開けると、いつものように、片倉先生の両隣は空いている。
それもそのはず、左側の毛利先生は、日光浴のために中庭に出るし、右側の利家先生は、重箱弁当が足りないから、学食に行くのだ。

「片倉先生、今日一緒にいいか?」

机の上を片付けていた片倉先生に、話しかけると構わないといった感じで、スペースを空けてくれた。

利家先生の椅子を借りると、片倉先生の机の上に弁当を置いた。

「先生。」

鞄から、コンビニの袋を取り出して、片倉先生に渡すと、不思議そうな顔をして受け取った。

「政宗、貰っていいのか。」

コンビニの袋を開いて、中にある『メイプルティー』を視界に入れた瞬間、少しだけ片倉先生の顔が、嬉しそうに綻んだ。
その顔が見たかっただけに、政宗も表情に出さないが、心中にデレッとした笑いを浮かべる。

(さあ、中にあるストローを、射してくれ先生!)

紙パックを空ける、片倉先生を見ながら、念を送った。
それはもう、真剣に。

すると、片倉先生はいつも机に置いてある、愛用のマグカップを引き寄せると、おもむろに紙パックの中身を注ぎ入れた。
辺りに、メイプルの甘い香りが漂い、片倉先生は嬉しそうに口に含んだのだが、政宗の心の中に任務失敗の文字が浮かんだ。

「これは旨いな、有難う政宗。少し飲んでみるか?」

任務失敗と諦めていた所に、思わぬ切り返しで逆転の可能性が現れた。
片倉先生からの問い掛けに、縦に元気よく頷いた。
まさか先生から、持ち掛けてくれるとは思わなかった。

しかも愛用のマグカップごしに、飲めるのかと期待を膨らませていると、片倉先生はおもむろにビニール袋を、漁り出した。

「はい。」

先程の紙パックに、ストローを射すと、先生から紅茶を手渡された。
この無意識のガードの固さは、天晴れとしか言いようがない。

「……甘い。」

口の中も、鼻に届く香りも、凄く甘いのに、何故か心の中は、敗戦を告げるように虚しさが漂った。
それでも、この紅茶を気に入ってくれて、嬉しそうにお礼を言われたので、少しばかりは収穫が有ったから良しとしよう。


end


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