6000HIT企画小説
16
「あーっ、
大したことじゃないよ。
冗談だと思うしね」
「言ってみて」
強めな口調で川上さんが言う。私も素直に応じる。
「‥‥私が東京行きたいなって言ったら、レイさんが一緒に行く?って」
私がかなり簡単に言うと、川上さんは、ふーんと思慮深い顔をした。
信号が緑になる。
川上さんが車をまた走らせる。
「川上さん?」
「俺は反対だな」
急に川上さんが言う。
‥‥それって…
「それって…川上さんが嫌だから?
私とレイさんが一緒に行っちゃ…「ちがうよ」
「え?」
「俺はソラちゃんが行っちゃったら、ソラちゃんの両親も皆悲しいと思うんだ。
それを考えるとやっぱり一緒には行かない方が良いと思う。
それに、ソラちゃんはまだ高校生だろ?もう少し自分の進路について考えてからの方が良いよ」
川上さんがそう言うのは正論だ。今日初めて会ったレイさんに東京に一緒に連れてってもらったところでまだ高校生の私は、東京で一人で生きていくなんか出来ないだろう事ぐらい、私自身、わかっている。
でも川上さんが反対してくれた理由が周りの人の意見であって、川上さんの私に対する感情なんてものは全く感じない…それだけが悲しかった。
やっぱり私は大人の川上さんにとって、ただの子供なのだと改めて思い知るだけだった。
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