6000HIT企画小説
13
私がずっと黙ったまま二人のやりとりを見ていると気付いた事があった。
川上さんは意外にレイさんの前だと怒るみたい。時折深いため息をついては片手で自分の髪の毛を触る。そんな動作も川上さんは素敵だったりするけど。
バスの時あんなに優しいから少し怒っていると違う川上さんを見ているみたいで嬉しい。
「あ、
ソラちゃんが笑ってるよ」
レイさんが私の方を見て笑って川上さんに言った。
「ごめんねソラちゃん。
兄貴が迷惑かけて」
「迷惑じゃなくて、朝からソラちゃんを助けてやったんだ。」
「朝からって、
ソラちゃんは学校なんだよ?」
「あっ、私
今日学校早退したんです」
「え?体は大丈夫なの?」
川上さんが純粋に心配してくれている。なんだか…言いにくい。
「なんというか…用があって学校をサボったといいますか‥‥」
「サボり?」
川上さんの声のトーンが少し下がる。ああ、幻滅されちゃったのかな‥?
「兄貴のせいで、
ソラちゃんの用が台無しになったみたいじゃないか。
ソラちゃん、まだ間に合うなら送るけど!?」
「あっ、
もう今日は大丈夫なんで」
川上さんにも会えたし。
「そう言ってんだから、
良いんじゃない?」
レイさんがそう言うと、川上さんは一回ため息をついて私の方まで来ると私の鞄を持った。
「ダメ。やっぱり
送っていく、行こう」
「なんだよ。もう帰んの?」
レイさんがこっちを見る。
「あの私、本当に自分で帰れますよ?」
「良いから行こう」
私がそう言うと、川上さんさんは有無を言わさない強い口調で言って、
私の右手を優しく掴むと歩きだした。私達が歩きだした時、レイさんが思い出したように、
「ソラちゃん」
と私の背中に向かって呼んだ。私が振り返ると、
「さっき言った事、
本気だから行く時言ってね」
言葉の意味とは矛盾した笑顔でレイさんはそう言うと左手をヒラヒラさせた。
‥‥さっき言ったこと??
…一緒に東京行くか?ー
ボンッと顔が赤くなった。幸い川上さんは前を向いていて気付いていないみたいで良かった。
こんな顔を見られたらもう本当、思い出して顔を赤くして変態決定だ私は…。
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