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By My Side
Together Again 1

海岸を後にした二人は、再び列車に乗り込み、行きに通り過ぎた道のりを折り返していく。
延々と続く田園風景は、夕焼けに赤く照らされ朝とは全く違った顔を見せる。
間を持て余した銀時は大きく欠伸した。涙で滲んでぼやけた視界を戻そうと瞬きを繰り返すと、目の前に座る桜にくっきりと焦点が合う。 
ぼんやりと窓の外を眺めている桜の横顔は、陰になっているせいだろうか。未だ晴れないように感じた。

「そっち座ってもいいか?」
「うん」

ほんの少し窓側に身体を寄せている桜の肩に触れる距離に、銀時はどかっと腰を下ろした。

「まだ何か後悔してんのか?」

隣へ座るなり桜の方は見ないよう、さりげなく聞いてみる。
桜が黙って首を横に振った瞬間、突然列車が大きく揺れた。その勢いで椅子から前に転がりそうになった桜を、銀時は咄嗟に抱き止める。

「大丈夫か!?」
「ありがとう!」

ほっとしたように息を吐いた桜の顔が、やっと綻んだ。その笑顔に安心した銀時は、再びさっきと同じことを聞いてみた。

「後悔してるか?」
「なんでそんなこと聞くの?」
「別に。してねーならいいわ」

余計なことを口にしたとそっぽを向いた銀時の右手に重ねるように、そっと桜の手が触れてくる。小さな桜の手を左手で包み込むよう握り返した銀時は、内緒話でもするように桜の耳元で囁いた。

「気付かないわけがねェんだよ。こうして俺とお前が何度も会ってたのに何も気付かねーような野郎なら、本気でお前のことなんか愛しちゃいねェよ」

少しの間を置いて、今度は桜が銀時の耳元に口を寄せた。

「……張本人がよく言うよ」

いたずらっぽく笑われると自分の女々しさが気恥ずかしくなってくる。照れかくしに抱き寄せていた腕で桜の髪を少し乱暴に掻き乱すと、髪を整えながら銀時を軽く睨んだ桜が笑い出した。

「後悔、すんなよ?」

ぽつりと零した銀時の言葉に桜は肩に寄りかかる。銀時もまた桜に寄り添いながら、心地よい揺れに身を任せ、そっと瞳を閉じた。

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