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放課後の音楽室
職員会議

二学期末考査の結果が出揃い、会議室では終業式を前に職員会議が行われていた。
ダラダラと続く会議に糖分もニコチンも切れかけの銀八は、徐々に苛々が募ってくる。
隣の土方も同じくニコチンが切れかけなのだろう。
先程から机の下で、せわしなく足を動かし続けている。
そんな中、教頭が口を開いた。

 「えー、試験が終わるまでは私のところで止めていたんですが……、土方先生」

いやに厳しい教頭の口調に、緩んでいた会議室内の空気が変わった。

 「試験前にZ組の田中と校内の駐輪場で何をしていたのか、この場で事実説明してください」

会議室内は一気に緊張感に包まれ、教師達の視線が一斉に土方に注目する。
だが当の土方は、特に動揺した様子も見せず室内を見回すと、小さく咳払いをしてから口を開いた。

 「ここでわざわざ説明しなければいけないようなことは何もありませんが?」

駐輪場? 試験前?
じゃあ、あの日俺が見たのは桜だったのかよ。

まるで予想もしなかった思いがけない事態に、銀八は隣の土方をそっと窺い見た。

 「そうですか? あなたが田中の肩を抱いていたのを目撃した人がいるんですよ?」
 「それがどうかしますか?」
 「そりゃ女生徒と二人きりで、ましてや体に触るなんて、とても好ましいことじゃない」
 「私は煙草を吸いに外へ出たところ、で泣いている田中とたまたま出くわしただけです。泣いていたので少し話を聞いてやりました。宥めるつもりで肩に触ったのは確かに軽率だったかもしれませんが、それだけです。信じられないのでしたら担任の坂田先生に聞いてください。田中の事情はよく知ってるはずですから」

おいー!? 事情って何よ? まさかコイツ、桜から何か聞いてんのか!?

突然話を振られ驚く銀八に教頭を始め他の教師達も一斉に注目してくる。
仕方なく銀八は手を挙げ、口を開いた。

 「あのー。田中の担任ですけどー」

これで納得しろよ!? このハゲが!

そう心で叫んだ。

 「あの……田中はですねぇ、両親を亡くして親戚の世話になっていまして…。まぁいろいろあってですね、内定もらった頃に進路についてトラブルがあったことは担任の僕も聞いています。は?…あー、そうです。家庭の事情です。かなり落ち込んでいたし土方先生の話に嘘はないと思いますよー?時期も一致してるでしょう?」

口から出まかせもいいとこだ。
何が家庭の事情だ。全部テメェの事情じゃねーか。
心の中で自身にツッコミを入れつつ、まだまだ出まかせを続けた。

 「土方先生は田中の去年の担任ですし、生徒が泣いていたら男も女も関係ないと思いますけどねぇ。僕だってその場にいれば肩くらい抱いたかもしれないですね」

何もないと言っている土方にいくら食い下がっても、話は一向に平行線を辿る。
これ以上は二人でやってくれとばかりに、銀八は話をまとめあげた。

 「これ以上話を大きくしない方がいいんじゃないですか? 生徒の耳に入ったらただじゃ済まないですよ!? 奴らの噂話ときたら、火のないところにわざわざ火ィ放って団扇で扇いで煽ってく勢いですからねぇ」

生徒らの噂話には、どの教師にも一度くらい心当たりがあるのだろう。
どこからともなく笑い声が漏れた。

 「納得してもらえましたか?」

一気にまくし立てた銀八から引き継いだ土方は、無駄に爽やかな笑顔を教頭に向けた。

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