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放課後の音楽室
夏風邪2

放課後すぐにもう一度桜の家に電話をかけてみたが、やっぱり誰も出なかったため、銀八は様子を見に行くことを決めた。
賑やかな幹線道路から逸れた道沿いを、名簿に書かれていた住所を頼りに探していく。

「これか」

どうやら目の前にある一階にコンビニが入ったこのマンションがそれらしかった。
コンビニ前に原付を停めた銀八は、薄暗い入口に入っていく。
だいぶ築年数が経っているようで、古ぼけたエレベーターの隣には暗く急な階段が並んである。
201という部屋番号からおそらく二階だろうと予想し、階段を使って上ることにしてみた。
二階に上がってすぐの角部屋に201の部屋番号を見つけたが、名前が書かれていないので自信はない。
取りあえずドアの横のブザーを押してみた。

「……」

二回続けて押してみても中から人の気配は感じられない。

「あのー、銀魂高校の坂田ですがー」

今度はドアをノックしながら声をかけてみる。
少し乱暴にノックすると、ガタン! と部屋の中から物音が聞こえた。

なんだ、いるんじゃねェか。

「おーい! 桜いるかー? お前無断欠席だろ? ちょっと顔見に来たんだけどー?」
「先生!? ちょっと、待って…」

ドアの向こう側から慌てた桜の声が聞こえる。

「なんか怪しいなー、オイ。学校さぼって何してんだよ。ドアを開けなさーい」

カチャリと鍵が開く音がしてドアが小さく開けられるや否や、銀八はしぶといセールスマンさながらにドアの隙間に素早く片足を差し込み、中へ滑り込んだ。

「おい…!?」

桜の姿を確認した銀八は驚いた声を上げた。
熱があるのか顔は赤くむくみ、壁に寄り掛かって立っているのが精一杯といった様子に、慌てて身体を支え額に手を当てる。

「すごい熱じゃねェか、大丈夫か!?」
「…ずっとだるくて寝てた…」
「ずっとそんな状態なのかよ!? 病院は?」

桜は弱々しく首を横に振って俯く。

「ごめんなさい。連絡もしなくて…」
「あー、もういいから。早く中入ろうぜ」

銀八は桜を抱きかかえると、靴を脱ぎ捨て部屋に上がった。

「ちょっ!? 先生! 歩けるって」
「いいから。今のお前、風呂の湯並に熱いぞ!?」

玄関入ってすぐが小さな台所、奥の部屋にベッドが見える。

「食事は? ちゃんと食べてねーだろ。やつれてるぞ」
「食欲なんかあるわけないよ」
「水分だけでもちゃんと取らねェと」

桜をベッドに寝かせ素早く掛け布団をかけてやると、銀八は再び玄関へ戻っていく。

「下でなんか買ってきてやるよ。飲み物とかさ。欲しいもんあるか?」
「何でもいい……」
「わかった。じゃあ適当に買ってくるから。すぐ戻るから鍵は開けとくぞ」

靴に足を突っ込んだだけの状態で急いで玄関の外に飛び出た銀八は、一先ず大きく息を吐き出した。
それからしっかりと靴を履き直し、階段へ向かう。

熱く熱を持った桜の感触が身体にまだ残っているようだった。
不謹慎だとわかっているのに、薄いTシャツ越しの胸元が頭から離れない。

ガキだし生徒だし病人なんだけど、ちょっとマズイだろ……。

早足で階段を駆け降りた銀八は、外の空気に触れて気持ちを鎮めた。

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あきゅろす。
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