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【―薄桜鬼―沖田総司連載】
28話【歪んだ想い】






そう、其処にいたのは、黒い布に身を包んだ薫さんだった――




綺麗に結われていた髪は肩より上でばっさりと切られ、あの華やかな微笑みは消え、冷たい瞳


その細い腕に持たれている容姿に似合わぬ刀







だが、そんな事よりも疑問に思ったのは・・・







何故、薫さんが此処にいるのか――





何故、薫さんが羅刹を――






『・・・な・・・・』



そういった事が頭をぐるぐる回る






「ああ、こんな状況じゃ混乱するのも無理ないか」




『薫・・・・さん、ですよ・・・ね?』




すると彼女・・・いや、彼はゆっくりと頷いた




「そうだよ・・・・お久しぶりだね。蘭さん、沖田さん。もう俺が男だってことくらい・・・わかるよね?」


沖田さんが、キッと薫さんを睨みつける




『どうして――』



「助けたの?此処にいるの?・・・聞きたいのはそんなとこ?」



『「・・・・』」




すると、薫さんはにやっと笑う




「・・・妹に会いに来たんだよ。残念ながら俺の可愛い妹とは入れ違いになっちゃったみたいだけど・・・」



『妹って・・・まさか・・・!』



一人の人物が頭を過る



「そう・・・雪村千鶴・・・俺の・・・可愛くて可愛くて・・・・憎くてたまらない妹にね!」




さっぱりと状況が掴めない




「本当は、助けるつもりなんてなかったんだけど・・・・いいものが見れたしね?」



薫は楽しそうに笑いながら続ける



「どうせもう隠す必要もないし。・・・俺は、可愛い妹に復讐しにきたんだよ・・・」




『・・・・!?』





「その男を苦しめて苦しめて・・・あいつをどん底に落としてやろうと思ってた・・・」



薫の視線は苦しそうに顔を歪める沖田へと移る



「・・・・・はあ、はあ・・・」




「でも、その必要もないみたいだ――」




薫の視線が、蘭に戻る




「――君がいる限り、千鶴はそいつと結ばれないんだから・・・はははっ!」



『ど、どういう・・・――』



「・・・っ貴様――っ」


沖田さんが立ちあがろうと力を入れる



それを、蘭が抑える



『駄目です沖田さん!傷が開いちゃう・・・!』




その光景を、薫は楽しそうに眺めている



「ふぅん・・・・お前、まだなぁんにも言ってないんだ?その子に・・・」



「・・・っ!!」



『・・・?』








何・・・・?





わからない事ばかりで・・・






もう、何がなんだか・・・・





「まあ、いいや。個人的に君、嫌いじゃないし・・・お礼に良い薬をあげるよ・・・」




薬――



そう聞いて、嫌なものが頭に浮かんだ




薫が懐から取り出したものが、蘭の足元にコロンと転がる



『・・・・?』




それは、想像していた赤い液体ではなくて、透明なもの――



「ああ、変若水じゃないから安心してよ。本当はその沖田に変若水を飲ませてやろうと思ってたんだけど・・・もう、その必要もないみたいだし?」


クスクスと笑う薫



「その薬で、君がそいつの後を追ったって聞いたら、あいつ・・・どんな顔するするかな?あはは・・・!」



『後・・・?追う・・・?薫さん・・・どういう意味ですか・・・!?』




だが、薫は答える素振りを見せず・・・・




「その薬、飲んだら眠るように死ねるらしいよ――」




それだけ言い残し、衣を翻し夜の闇に消えて行った・・・











わからない



わからない・・・・





一体・・・何の事?




どういう事?





何が・・・どうなっているの?





「くそっ・・・ごほっ!ごほ!あいつ・・・っ」



『っ沖田さん!?血が・・・!!』





だが、沖田はそんな事気にしないかのように蘭の手をぎゅっと掴む




「蘭・・・ちゃんっ・・・はあ、はあ・・・そんな・・・薬、使っちゃ・・・駄目だ、よ?何、入ってるか・・・わかんないでしょっ」


『っ・・・使う訳・・・』




ないじゃないですか――・・・




何で、私にこんなものが渡されたのか――





それすらわからないのに――






「お願いだから・・・君は・・・笑って・・・て――・・・」



ガクッと沖田の力が抜ける




『っっ沖田さん!!』



気を失った沖田を、強く抱きしめる









どうして――





私だけ、何もわからない・・・






何も知らない――







貴方を傷つけてばかりで・・・









貴方に守られてばかりで・・・








『だ・・・れか・・・っ』





私は、何かを知らないといけないのでは――?





『・・・っっ』


自分より大きい沖田をずるずると引っ張る











一体何を――?











『早く・・・手当しないと・・・っ』















どうして――?












『・・・っっ・・・はぁっ・・・』

溢れんばかりの血の匂い――
意識が朦朧とし、視界がぼやける













私の知らないことって―――・・・?










『ど・・・して――・・・・こ、なトコ・・・早く・・・沖田、さ・・・・・ん――』













何――・・・・?























そして、私は意識を手放した――











【歪んだ想い】

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≠千鶴夢ランク


2009.06.24


あきゅろす。
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