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【―薄桜鬼―沖田総司連載】
20話【止まらぬ時】




「ほらほら、二人とも・・・どこか行くあてがある訳じゃないんだからそんなに急がなくったって・・・散歩だと思ってゆっくり行けばいいよ」



私達の後ろから沖田さんの声がする



『「すみません・・・』」



そんな私達を見てか、沖田さんは面白そうに笑う



「二人ともえらくご機嫌だね。何か良いことでもあったのかな?」



蘭と千鶴ちゃんは顔を見合わせ



『「秘密です!』」


と言いにっこりと笑った







ぼちぼちと町を歩きながら伊藤さんやらの話をしていると・・・


「あれ?――薫さん!」



いきなり千鶴ちゃんが駈け出した




「ちょっと!」


『千鶴ちゃん!?』



二人の呼びかけも虚しく、千鶴は止ろうとはしない



「――ごめんなさい!どうしても確かめたいことがあるんです!」




沖田と蘭も、千鶴の後を追う




『はあっ、はあっ・・・』



千鶴ちゃん、こんなに足速かったかしら?




必至に千鶴ちゃんと沖田さんの後を走っていると、ふと沖田さんが走りながら声をかけてくれた



「蘭ちゃん、大丈夫・・・?」



『はい・・・っ大丈夫で・・・ぁっ!』



ふいに沖田さんの強い腕に手を引かれた



「・・・はぐれると、困るからねっ」



少しだけ、身体が楽になった気がした





「――それが秋の晩で、薫さんが新撰組の邪魔をしたなら――」


千鶴ちゃんの声が聞こえた



「もしそうなら、問題大ありだね。君には死んでもらうことになるけど」


沖田さんが追い付いてそうそうそう口走る





そこにいたのは・・・








この前会った、千鶴ちゃんと同じ顔をした女の子――





「あら、新撰組の沖田さんじゃありませんか。いつぞやは、どうもありがとうございました」


薫さんは軽く頭を下げ、ふいに視線は私へ移る



私は沖田さんに握られていた手をぱっと離す




すると、薫さんは何処か楽しそうにクスリと笑った



「で、答えはどっち?心当たりはあるの?ないの?」


沖田さんが少し苛立った口調で尋ねる




「死んでもらうなんて。そんな怖いこと、言わないで下さいな。三条大橋なんて、昼間は誰でも通るところじゃないですか・・・それに夜なんて・・・。あの制札騒ぎで怖くて近づけやしません」


薫さん平然と落ち着きはらいそう言う


「なのに、ただ顔が似てるというだけで私を疑うなんてひどいです。そんなこと知りません・・・」


「あ、いえ、違うならいいんです!」



薫さんが顔を伏せたものだから千鶴ちゃんが慌てたように言う



『・・・・』



この薫という人物に・・・私はどうしても違和感がわく



「もう行ってもいいですか?それじゃ、私、失礼します」



薫さんは千鶴ちゃん沖田さんへと視線を流し、そして――


私の視線と絡まる




そして、私にだけわかるくらいの小さな笑みを零し、また人ごみに消えていった



「あっ、薫さん・・・」



千鶴ちゃんが薫さんを追いかけようか迷っている仕草をしていると・・・





「・・・こほっ、こほっ!こほっ!」



『沖田さん・・・!?』


沖田さんは前屈みになって、何度も何度も激しくせき込む



私は急いで沖田さんに駆け寄ろうとした



「・・・来るなっ!」


『っっ!?』


沖田さんは駆け寄ろうとする私を手を上げて制する。



「こほっ、こほっ・・・大丈夫、だから。君はそこでじっとしていて。こほっ、こほっ、こほっ・・・」



『・・・っっ』




こんなに近くにいるのに、何もできない自分が悔しい




「こほっ、こほっ・・・こほっ・・・」




沖田さんに止められたのにも関わらず、私の身体は勝手に動いて・・・



『沖田さん・・・っ』



「っっ!?な・・・」



気付くと私は苦しそうにする沖田さんを抱きしめていた




『大丈夫・・・ですよ・・・』


いつか、彼がそうしてくれたように・・・



『大丈夫・・・ですから・・・っ』



何が大丈夫?



沖田さんが?



私が?




全然、何も・・・





大丈夫なんかじゃない・・・っ









それでも今は、この人の支えになりたい――




「・・・こほっ・・・君・・・って子は・・・」



沖田さんの呼吸は段々と落ち着いて・・・







貴方がこういう風に苦しむ度に、私は不安で不安でたまらない――



『・・・・大丈夫、ですか・・・?』




本当はもっと、貴方の事が知りたいんです――




「・・・・うん、ゴメンね。・・・ありがとう」





でも、貴方はそれを望まないから――





「・・・・そんな顔しないでよ、僕なんともないし」



沖田はいつものようにへらっと笑う










びっくりした――




気付いたら君に抱きしめられてて・・・




拒もうとすれば、できたはずなのに・・・





僕の身体はまるで何かに捕らわれたかのように動かなくて・・・






それよりも、体がだんだん楽になっていくのがわかった――









自分でも、病が僕の身体を蝕んでいるのがよくわかる・・・



日に日に・・・ひしひしと身体が悲鳴をあげる




後、どれくらい



後、何か月・・・




何日・・・




僕は君を守れるのだろう・・・





僕の身体のカウントダウンが、一刻、一刻と近づいてくる――









僕は、いつまで君の隣にいる事が許されるのかな――







この、止まる事なく流れ続ける時が・・・






憎い――








【止まらぬ時】

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2009.06.15


あきゅろす。
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