[通常モード] [URL送信]

【―薄桜鬼―沖田総司連載】
18話【守りたいもの】


【沖田さんの事が好きなんです・・・っ!】




君のその言葉を聞いた時、全身に鳥肌がたった・・・



どうしようもない気持ちが溢れて・・・



今すぐ君を抱きしめてしまいたかった・・・・



嬉しくて、嬉しくて・・・・



それでも、重い自分の身体が現実に引き戻す。




本当は・・・



僕もだよって・・・




君が好きだって・・・




愛してるって・・・・



そう、言ってしまいたかった・・・



言いたいのに・・・






「ごめん・・・・」



こんな情けない言葉しか出すことはできなくて・・・・



何て・・・最低な男なんだろう――


できる事なら・・・



堂々と君を包み込める男でありたかった――




僕は、僕を隠すために、また・・・



仮面を被る――




















「今日は特に問題ないみたいだね。まあ、問題があられても困るんだけど」



蘭は沖田と共に巡回にでていた・・・



普通ならとても気まずいはずなのに、また彼は楽しげ笑う







わかりました・・・


もし、私の想いが沖田さんを苦しめているのなら・・・


それで、貴方の苦しみが少しでもやわらぐのなら・・・


私は、この想いは忘れます――



だから・・・




どうか心から沖田さんが笑ってくれますように・・・





私は、貴方の真似をしよう・・・



貴方と同じ仮面をかぶる


私が変わりに被るから・・・






どうかその仮面を外して下さい――・・・




「沖田さん、そろそろ帰りましょうか。もうそろそろ夕飯ですし・・・千鶴ちゃん達待ってます!永倉さんにまた怒られるかも・・・」

そう言い、蘭はクスクスと笑う




そんな時――




「誰かーー!ひったくりよー!!!!そいつを捕まえて!!」


蘭達のいる少し先に男が女性の金品を持って逃走してる姿が映った・・・



「・・・ちっ・・・最後の最後で面倒事って、ホント嫌になるなあ・・・」


そう言うと沖田は駆け出す

『えっ・・えっ?』

慌てて蘭は沖田を追いかける



沖田は巧みに人ごみをかき分けて走り、脇道に入り込んだ男を追いかける


『・・・っ・・・』


流石に普段使わない女の足では二人について行くのにはきついものがあった



無我夢中に走り、入り組んだ脇道を曲がったら――



『はあ、はあ・・・・・え・・・?』



そこに二人の姿はなかった



『ここ・・・何処かしら・・・』


見たことのない、人のいない裏道――


早く、沖田さんを見つけなくては・・・



『・・・っ!』



どん!と何かにぶつかった


ふと顔を上げると、見知らぬ一人の男が立っていた


蘭は人がいた事胸を撫で下ろし、その男に尋ねる


『あ・・・すみません。あの、町にでるにはどういけばいいでしょうか?無我夢中で走っていたら、こんな所に出てしまって・・・』


「・・・・」


すると男は顔を近づけ、蘭の顔を凝視する


「あ、あの・・・」


男の反応にとまどう蘭




すると男は顔に手を当て笑いだした


「くくくっ・・・こりゃ良い!そんななりしてるから餓鬼かと思ったら、あんた女じゃねえか!」


すると、男は妖しく二ヤリと笑い、ガシッと蘭の手を掴む


『っ・・・!?』



「へ〜、なかなかの上玉じゃねえか。ちょうどムシャクシャしてたんだ、ちょいと相手してもらおうか」


男が舐めまわすような目で蘭を見る



『やっ・・・!』




まずい、と思った蘭は、男の手をバシッと振り解き、一目散に駆けだした



「はっ!そんな走りで俺から逃げきれるかよ!」



こんな人通りのない場所で捕まれば、きっと助けを求めても誰も来てはくれないだろう



『はっ・・・はっ・・・』



わらじが脱げ、それでも蘭は必至に走りつづける



だが・・・




『・・・っきゃ!?』



懸命な走りも虚しく、男に腕を強い力で引っ張られ捕まってしまった。


「逃げてる姿も可愛かったぜ、お譲ちゃん」



『いやっ・・・離して下さい!』



必至にほどこうとするが、男の腕はびくともしない



「おいおい、そんな暴れなくても・・・」


勢いよく地面に叩きつけられる



『っっいた・・・!』



「・・・・誰も殺しやしねえって」



服が汚れるとか、髪に砂がつくとか、



もうそういうものはどうでも良かった




『いや・・・・』




男の顔が目の前にあって




「てめえはただ終わるまで大人しくしときゃいいんだよ」






怖い――






考える間もなく勝手に身体はがたがたと震えだす・・・


沖田さんの時とは違う恐怖――



あの時は、貴方の心が離れていくのが怖いと思った



今は・・・




ただ、ただ・・・




この男が・・・・





怖くてたまらない――





『お・・・きた・・・さん・・・っ』


震える口からでるのは彼の名前



「おきたぁ?はっ、何だ男の名前かあ?こりゃいいや!」


男は楽しそうに笑う




沖田さんっ



沖田さんっ・・・!





浮かぶのも、彼の顔――






忘れようとしたのに、





これ以上沖田さんに迷惑はかけないと決めたのに・・・







男の手が乱暴に蘭の衣服にかかる






浮かぶのは・・・・・



『いやぁっッ!沖田さん・・・っ!!』










貴方の事だけ――










「・・・っっ!!!!?」


いきなり、身体を抑え込む男の力が緩まった


『・・・・・?』



「ひっ・・・・!」


男の顔を見上げると、先ほどまでの楽しそうな笑みはなく、青くなった顔・・・



男の視線は既に蘭にはなく、その先にあった


その視線を辿ると・・・





『・・・ぁ・・・っっ・・・!!!!』



思わず、私まで体が凍りついてしまいそうになった



そこには・・・・




今すぐにでも人を殺してしまいそうな程の怒りと憎悪の瞳とオーラを纏った沖田さんの姿があった


息をするのも苦しい程の殺気――


眼を開けておくのも辛い程の空気――



「・・・・・お・・・まえ・・・」


静かに呟く沖田


その瞳に映るのは、わらじが脱げ、衣服は乱れ、砂で汚れ、がたがたと震える蘭の姿と・・・・




その、蘭を押さえつけるように上に乗っている男――




「殺す・・・・!!!」


そう言うが早いか、沖田さんは勢い良く刀を抜き男へと突進する


『っっ!?駄目っ・・・沖田さん・・・!!』



蘭震える身体を必至に抑え込み、バッと立ちあがり沖田の腰に勢い良く抱きついた




「っっ!?」


その行動に沖田は目を見開く



『私は・・・・っ大丈夫ですから・・・!』





「・・・・はあっ・・・はあ・・・」


蘭がそう言うと沖田は額に手を当て、まるで息のできなかった子供のように息を吐いた


相変わらず男は腰が抜けたのか青い顔で座り込んでいる



「はあ・・・・・・その、男を・・・連れて行って・・・」


「は、はい・・・!」


沖田さんがそう言うと、今まで沖田さんの殺気で動く事もできなかった隊士が一人、そそくさとその男を連れいく・・・






今この場所にいるのは、沖田と蘭のみ――





『・・・・沖田さん?あの、すみません私・・・あり――』




ギュっ・・・




言葉の途中で、沖田から凄い力で抱きしめられる――




「ごめん――・・・」





きゅっ、と更に背中に回った腕に力が込められる






「・・・ごめん・・・」



『・・・・どうして、沖田さんが謝るんですか・・・?私、助けてもらったのに・・・』



「それでも、ゴメン・・・僕のせいだ――」



『沖田さん・・・?』


蘭は沖田の頭を掴み、顔を向けさせる




「・・・・・」



『どうして・・・・













泣いているんですか?』




そこには静かに涙する沖田さんがいて――




「・・・わからないよ」


沖田さんは優しく微笑んでくれた





ああ・・・私の枯れた涙は・・・





此処にきてしまったんだと――





『私、怖かったです・・・すごく・・・』



「・・・・うん」



『頭に、沖田さんの事しか浮かばなくて・・・・』



「・・・うん」



『いつもいつも・・・・沖田さんを呼んでしまうんです・・・』



「うん・・・」



『迷惑だって・・・わかってるのに、勝手に・・・・』



「・・・・・」


沖田の手が優しく蘭の髪を撫でる








この震える肩を、守りたいと思った。






僕は君を守れないと思った。







君を守るのは、きっと他の人間なんだと・・・





好きだなんて言葉いえないけど





愛してるなんて言っちゃいけないとわかってるけど・・・











いつか、君を傷つけるかもしれない。



君を泣かせる事になってしまうかもしれない。



君に辛い思いをさせるかもしれない。




でも・・・・







この、命つきるまでは・・・・


















「僕が・・・・君を守るよ――」



君を守るのは僕でありたいと思った――




『・・・・っ・・・』












ああ・・・ごめんなさい沖田さん





やっぱり駄目です、私・・・・



















貴方への想いを忘れる事なんてできません――・・・







いつもいつも貴方は・・・







こうやって私を離してはくれないのだから――・・・







【守りたいもの】

早く続きが見たい!と思った方は↓をクリック^^
〜KNAR鬼桜薄〜

2009.06.13


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!