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【―薄桜鬼―沖田総司連載】
11話【逃がさぬ瞳】



私は重たい体を起こし、いつものように着物を整える


相変わらずさらしを巻くのは苦しくて不便だ・・・










この日の屯所はやけに騒がしく、隊士達がやけに盛り上がっているようだった



何かあったんだろうかと千鶴ちゃんと話していると、向いから伊藤さんがやってきた





「はあ・・・はあ・・・!じょ、冗談じゃありませんよ!まったく!」



「伊藤さん?どうしたんですか?」


千鶴ちゃんがそう聞くと伊藤さんは興奮したように語りだす




「どうしたもこうしたもありませんよ!私がなんであんな野蛮人どもと同じ部屋で、肌をさらさなきゃならないのです!」




・・・・・・伊藤さんの説明は、まったく要領を得ていない





『あの、何かあったのですか?』


私がおずおずと聞く




「将軍上洛のときに近藤さんと意気投合した、お医者様が屯所に来られているのですよ。隊士たちの健康ウ診断を行うとかの名目で」


伊藤さんは不機嫌そうに答え、今来た曲がり角の向こうを睨む




「あのハゲ坊主!皆の前で私に服を脱げと仰るのよ!!拒んだら無理やり脱がそうとするし。それに、あの隊士たちの態度!まったくなんて野蛮なのでしょう!」




「そのお医者様は、なんというお名前の方ですか?」


ふと、千鶴ちゃんがきく





「確か・・・、松本良順とか言ったかしら」




「そのお医者様って、松本良順先生なんですか!?私も健康診断に行ってきます!」



松本という名前を聞くや否や、千鶴ちゃんは皆が診察をしてるであろう部屋に向かってかけていった




『え、ちょっ千づ・・・』




既に彼女の姿はない





「あらあら、あんな野蛮人に会いたいなんて、なんて物好きなのかしら」




伊藤さんと二人取り残されてしまった形になる




『あ、あの・・・・災難でしたね』



言う事が思い浮かばず、とりあえず笑顔を浮かべてみる







「・・・あなた・・・・・」




『え・・・?』




伊藤さんがまじまじと私の顔を見ると、そっと私の顔に触れる




「やっぱり・・・女の子みたいな綺麗な顔してるわね。いいえ、その辺の女の子よりよっぽど可愛い。男にしとくの勿体ないわあ・・・どう?私の小姓にならない?」



伊藤さんは、少しうっとりしたような表情で私を見つめる




とても居心地が悪い・・・




早く此処を離れる理由を考えなくては――








そう思った時、ふと背後から声が聞こえた











「あー、駄目ですよ伊藤さん。この子、僕の小姓ですから手出さないで下さいね」



沖田さんの声が聞こえたと思ったら、ふわっと首に腕がかかる感覚がした





沖田さん、それ初耳です・・・・






伊藤さんは「まあ、まあ・・・」というとつまらなそうに去って行った








『沖田さんの小姓というのは初耳でしたが、助けて下さりありがとうございます・・・』




「はは、何ならほんとに僕の小姓になる?」




沖田さんはにっこり笑って問いかける




その笑顔をみると、思わずはいと言ってしまいそうだ





だが私はあえてその言葉を聞き流す






『今、健康診断中じゃないんですか?』




「んー?そうだけど、僕もう終わったし」



沖田さんは興味なさ気に答えた












『そうですか・・・・・じゃあ、私はこれで・・・』



私は、これ以上沖田さんの顔を見ていたくなくて、そそくさとこの場から離れようとする











が、ガシッと腕を掴まれる








『っ!?な、なんですか・・・?』





ふと、沖田さんの顔を見上げると――









「ねえ・・・・」







そこにいるのはいつものふざけた笑いをする沖田さんじゃなく・・・






「君さ、最近僕を避けてるよね?」





真剣に、目を細め私を睨むように見つめる彼だった――






『あ・・・・』





こんな彼を見るのは初めてで、言葉がでなくなる








「ねえ、どうしてかな?」







彼はダンっと壁に手を付け私を追い詰める





頭の左右の彼の手があって逃れられない






『私・・・・避けてなんか・・・・・』




沖田さんの目が見てられなくて、足元に視線を落とす







「目を反らすな。僕の目から・・・・」





いつもと違う強い口調に、心臓がドクンと波立った






『あ・・・わたし・・・・』




「・・・・・・千鶴ちゃん?」




『っ!!!?』





沖田さんの口から思わぬ名前がてで、思わずバッと沖田さんを見る




「千鶴ちゃんが・・・・・・僕の事好きだから?」





『・・・!!沖田さん・・・貴方・・・っ』









気づいてたんだ―――





「わかってるよ。彼女が僕に気があることくらい。あの子すぐ赤くなるし・・・僕は、そんなこ―――」



沖田さんの言葉の途中




「おーい総司ー?何処だー!」


平助君の声が聞こえ沖田さんの手が壁から離れる






その一瞬のすきに私は駆け出した







「っ蘭ちゃん・・・!」







沖田さんの呼ぶ声を無視して・・・















呼ばないで・・・










触れないで・・・











私の心に入ってこないで・・・・























期待、させないで――・・・


























これ以上、貴方を好きになってしまったらきっと・・・













































私の心は壊れてしまうから――・・・











【逃さぬ瞳】

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≠千鶴夢ランク


2009.06.04


あきゅろす。
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