離さないで(サソリ)
家に帰ると、変わらない彼女が迎えてくれた。
たった数時間会わないだけで俺はこのザマだ。
蠍「ただいまっ」
ぎゅっと抱きしめる。小さな体をぎゅっと。
「苦しいよぉ;」
体をよじるアリス本当に愛しい。
蠍「雨大丈夫だった?」
その言葉を言った途端、かすかに彼女の肩が揺れた。
『あ…う・うん;大丈夫だったよ』
明らかにおかしい彼女の反応。普段嘘をつかないから動揺がまる見え。
蠍「…傘持っていったのか?」
『え…あ、うん!』
蠍「…本当に?」
『う・うん!そんな事より早くリビング行こう?ご飯作ったの。』
俺から離れ、一人リビングに向かう彼女。遅れて俺もリビングに向かう。
『今日はカレーだよー。』
ニコニコ笑って、でもいつもより動揺しているような笑み。
蠍「うまそうだな。先に着替えてくる。」
俺は平然を装い、部屋に戻る。
蠍「…嘘か…」
彼女は俺に嘘をついている。傘なんか持っていってない事はわかった。
蠍「本当に嘘が下手だ…」
玄関にあった傘は一本も雨で濡れていなかった。誰かに送ってもらったと考えても、隠す必要なんかない。
蠍「…っ」
頭の中に浮かぶ人物は只一人。
蠍「我愛羅…か…?」
答えにたどり着いた。憎悪が押さえられない…
蠍「っ…クソっ…」
ベッドに座り頭を抱えた。
たった数時間離れただけで、心が張り裂けそうなのに…なんでこうなるんだよ…
怖いんだ
君が俺から離れていきそうで
ただただ怖いんだ…
蠍「…アリス…」
彼女は俺のものだ…
誰にも渡さない
触らせない…
頭を抱えていると、部屋のドアが開いた。
『サソリー?まだ…ってどうしたの!?;』
様子が不審だったのか、アリスが駆け寄ってきた。
蠍「アリス…」
『どうしたの?体調悪いの…?;』
心配そうに顔を覗き込むアリスを抱きしめてベッドに倒れ込んだ。
『キャッ///さ・サソリ?どうしたの?///』
蠍「…ら…」
『え…?』
蠍「頼むから…俺の…俺だけを想っててくれ…」
『サソリ…?』
蠍「俺だけの女でいてくれ…」
『っ…』
きつくきつく抱きながら呟いた。そんな俺の背に手を回して、わかった…大丈夫だから…、とアリスは言っていた。
たった数時間。数時間離れただけで俺はだめなんだ…。
我愛羅なんか見ないで…
ずっと俺だけのアリスでいて…
不安で不安でたまらないんだ…
だから…
この回した手を
密着した体を
繋がる心を
蠍「離さないでくれ…」
『サソリ…。うん…。ずっと離さないよ…。ごめんね…』
離さないで…
(離さないで)
この手を離さない
この体を離さない
この心を離さない
君を…
離さない
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