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土方十四郎様

拝啓、残暑の候。お久しぶりです。お元気ですか。季節の変わり目で風邪などひきやすい時期ですが、身体の方に変わりはないですか。近藤さん、総悟はお元気ですか。質問ばかりですみません。手紙なんて久しぶりで、少々とまどっているのです。

貴方と連絡をとるのは何年ぶりでしょう。貴方達が武州を去ってからは一度もありませんね。でも実は、私は以前総悟からミツバへ送られた手紙を読ませていただいて、貴方達のことを知っていたのですよ。総悟とは相変わらずのようですね。昔のままの貴方達で、おかしいですが嬉しく思います。私もまた貴方達と昔のように言い合いたいものです。あの頃はとても楽しかったですね。貴方達と道場へ通い、総悟と貴方へ嫌がらせばかりしていました。私もまだ子どもだったのです。愛故の行動ということで、どうか許して下さい。今思うと懐かしいですね。正直、江戸に行った貴方達がうらやましいです。私も近藤さんのお側にいて、恩返しをしたかったものです。貴方は知っていましたよね。近藤さんが両親を亡くし、一人だった私を拾ってくれたことを。どうか私の分も近藤さんを助けてあげて下さいね。

そういえば、貴方達と別れてから腕を上げたんですよ。昔から貴方には負けてばかりでしたが、今なら貴方に勝てるかもしれません。……なんて、真選組副長さんには敵うわけもありませんね。貴方のことだから、今も変わらず毎日稽古しているのでしょう。貴方の頭には刀しかないのですから。しかし私はそんな貴方の姿を見るのが好きでした。

長々とすみません。別に昔話をしたかったわけではないのです。伝えたかったのは貴方を愛していたということ。昔話はそのことを伝えるための前置きにすぎなかったのです。いきなり愛していたと言われてもしっかり伝わらないでしょう?

もう一度言いましょう。私は貴方のことを愛していました。しかしそれは昔のことで、今は貴方が憎いです。とてもとても憎いです。だから、貴方も私を憎んで下さい。恨んで下さい。それはもう、殺したいくらいに。もし、私と出会うようなことがあれば殺して下さい。迷ってはいけません。そうでなければ、私が貴方を殺してしまうかもしれないのです。それだけは私も避けたいのです。だからお願いです。私に会ったら迷わず殺して下さい。何があっても、殺して下さい。

申し上げたいことはそれだけです。では、お身体に気をつけて。

また会いましょう。

敬具



(20090924)


あきゅろす。
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