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想定外だから面白い※(兄/臨也)
自分以外は誰もいない数学準備室で臨也はゆったりと自分で入れたコーヒーを飲みながらパソコンの画面をみていた。
臨也の座っている場所は応接用のソファで、自分で持ってきたノートパソコンで色々やり取りをしている。他にも教員用の机が四つほどあるのだが、内3つは空きで現在使われているのは窓際の席だけだった。

―――もっとも、四月までは全員いたのだが。

いろんな不幸が重なったとだけお伝えしよう。

くぅ、と臨也は強ばった背を伸ばし深くソファにもたれ掛かった。
窓に目をやれば、向かいの校舎にぽつぽつと光が見え、何人かが部屋を出ていくのが見えた。
臨也はポケットから取り出した白い粉を見る。

(無味無臭の睡眠薬。確実に眠りを誘うが、起きは早い)

もちろん副作用もないよ、と説明していた新羅の言葉を反芻する。

(そして少量の―――)

今日は一つ、高瀬先生に遊んでもらう予定なのだ。

「…会議長ぇし、仕事は増えるし……」

扉を開ける音と同時に椿のぼやきが聞こえてきた。椿はこりこりと肩を鳴らす。

「お疲れのようですね」
「お前まだいたのか」
「はい、まだいました」
「…あぁ助けてくれ折原ぁ〜」

何時もならここでさっさと帰れコールが始まるはずなのだが、そうとうさっきの会議で絞られたのか、席に座るなり俯せで机に倒れ込んでいる。椿にしては珍しい。

「言ってくれば、いつでも先生のために全力を尽くしますよ」
「……やっぱり訂正する。お前は俺を助けなくていい」
「良いじゃないですか。何てことないですよ?」
「今度、授業が余ったら道徳で命の大切さでも教えてやろうか?」
「是非とも聞きたいですねぇ。元不良の道徳のお話」

さっき沸かしたポットの湯をコップに注ぎコーヒーを作り、椿の机に置き、どうぞ、と差し出せば嬉しそうに椿は手に取った。柔らかい笑顔が、椿にはよく似合う。

「やっぱりお前は出来るヤツだ」
「ありがとうございます。高瀬先生に言われると嬉しいなぁ」

満面の笑みで臨也は答える。美味しそうに飲んでいる椿に内心ほくそ笑んでいた。
これから起こることに、臨也は胸を弾ませながら。

「高瀬先生」
「ん?」
「相談したいことがあるんです」
「どうした」
「ちょっと長くなりそうなんで、あちらのソファで話しませんか?」

先程まで臨也が座っていたソファまで促し、立ち上がった椿がゆらっと身体のバランスを崩す。

「あ…、やべ、立ちくらみ…」
「大丈夫ですか?」

さりげなく椿の肩を支え、どうにかソファのもとまで誘導し座らせるころには椿は既に意識を飛ばしていた。

「椿さんも、案外ちょろいね。もっと警戒してくれないと危ない目にあうよ?」

もちろん、もう遅いけどさ。
身体を横にさせ、椿の顔にかかった前髪を掻き分けて黒ブチのレンズのない眼鏡を取る。
本人曰く、眼鏡をかけることによって真面目さが強調されて教師らしく見えるのだとか話していたが、臨也はない方が美人だと思う。
額にキスを送り、両手を後ろ手に縛って自由を奪い、シャツに手をかける。
ボタンを外していくときめ細かな肌が晒され、すっと指を滑らす。

―――これは遊びなんだ。退屈な人生の中での暇つぶし。

暫く時間を起きもう意識が覚醒する頃合いを狙って、臨也は椿の唇を奪った。柔らかい感触を楽しみつつ、右腕で脇腹を撫でる。ん、と椿の甘い声を飲み込み、舌で唇を割ってなお一層激しく唇を合わせた。

「んっ…あ、やっ…!」

薄く目を開けた椿がやっと自分の状態に気付き腕を動かそうと、もがいた。
が、臨也の手が胸を撫でた途端身体が跳ね、力が抜けていった。

椿の目の端が赤く染まっている。上気した頬を優しく撫でた。

「可愛い顔してるよ、椿さん」

普段は呼ばない呼び方で囁く。
椿さんと呼ぶときだけは先生や生徒を取り外し、高瀬椿の名前を呼ぶ。

「折原…っ」

ちう、と胸の先に口付ければ「あっ」と可愛い声が響く。
甘く脳が溶けてしまいそうになる感覚に臨也は震えた。
手を胸から腰へと伸ばし、熱が集まりだしたところへ触れる。

「やめろって…!洒落なんねぇ、ぞっ」

「はははっ、ねぇ椿さん生徒に犯される気分ってどんな感じ?」
「もっ…しらね、ぞ…っ」

ぎゅうと椿の熱に力を込める。顔をソファに押し付け必死に我慢している姿に臨也は優しくほほえむ。

「大丈夫。ちゃんと感じられる程度には優しくしてあげるからさ」
「んっ……!」

左手の指を、椿の口の中へと入れた。驚いた目で、椿は臨也を見上げる。

「しっかり舐めないと痛いのは椿さんだよ?」

眉間に皺を寄せ、おずおずと舌を這わせ始めた。指先をねっとりと舐めあげ、時折甘く咬んで、臨也の熱も上がっていく。
指を使って舌を挟むと、苦しそうに椿は声を漏らした。

指を引き抜き、そのまま尻の奥へと触れる。入り口を慣らすように撫でればひくりと動いた。

「椿さんって経験あるの?」
「あっ…な、に…?」

入り口の奥へと指を沈めゆっくり動かせば内壁が絡み付くように動いた。自然と力を抜き、指を受け入れてる姿はどうも慣れた様子に見えた。

「他にもココに入れたことあるんだ」
「…っ…昔の、話だっ」
「へぇ。そうなんだ」

それなら話は違ってくる。初めてならばそれなりに優しくしてあげようと思っていたのだが。

「じゃあもう入れてもいいよね」

指を抜き、カチャカチャと臨也自身の熱を取り出して、息をつかずに椿へと挿入した。

「いぁっ…!いざ、や…!」
「椿さんって、本当に俺を掻き乱すのが上手いよね」

一気に奥まで進み、ふぅと息を漏らす。椿さんの目尻に溜まっている涙を脱ぐってやり、それから腰を動かした。

「なんでこんなにアナタが欲しくなるんだろっ。教えてよ椿さんっ」
「あぁっ、ん…っ」

胸が熱くなって苦しい。それを誤魔化すように腰を振ればますます泥沼に嵌まっていくような感覚がずっと繰り返し繰り返し回っていた。

「椿さんっ」

呼吸も早くなりもう限界が近くなった一瞬目が合うと、椿が柔らかく目を細めた。
そして声は出ず、口だけがいざやと形どったのをみて、熱が弾けた。



くたりと椿の上に倒れ、臨也は目を閉じた。
頭の中でクチャクチャになった感情を一つずつ伸ばして整理していく。
人間の感情ほど、理解が難しいものはないだろう。

「……手ぇ、痛いんだけど」

掠れた声に気が付き、ポケットからナイフを取り出した。

「赤くなってるね」
「早く切ればか」

まだ暫く抵抗出来ない椿を見てみたかったが臨也は大人しく縄を切った。
が、この行動が臨也の予想を大きく上回ることとなった。

視界が激しく揺れ動き、初めは何が起きたか理解出来なかった。

にやにやと笑う椿の顔が目に写る。先程まではソファに埋もれていたはずなのに、椿の後ろには天井が見えた。
素早く手が拘束されていく。

「椿、さん?」
「まさかてめぇだけ楽しんで終わりなわけねぇよな?」
「は?ちょっ、ま…っ!」

唇を塞がれ、脚を捕まれるといきなり2本の指を尻の奥へと入れられた。キスをされていなかったら間違いなく叫んでいただろうことにひやりとした。

「やり方が気にくわない」
「そ、こっ!?」
「腕を拘束しやがって。背中にも回せられなかった」

臨也の胸に額を乗せ、椿は項垂れた。
ある程度慣らすと早々に指を抜いて、椿の先を入り口に付ける。

「ちょっと待って、椿さんってタチ…?」
「や?どっちもだけど?」
「あぁぁ…っ!ん!」
「俺をもっと楽しませてよ。臨也」


その夜、臨也の体力がなくなるまで喘がされ、鳴かされた。
くたりとソファ倒れ、頭が正常に動き出したころ、臨也は笑いが堪えられなかった。
そうだ。何もかも予想通りに進むなんて面白くない。
想定外のことが起きて、予想が裏切られてこそ、楽しめるのだ。
多分きっとあの人も。



>>>アトノマツリ
(´ω`)

(2010/03/09)

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