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小説



「レオン・ヨハンセン氏、忙しい所を申し訳ないがまた話を聞かせてくれませんか」

数人がせわしなく動く、職場のデスクにつき膨大な書類の中で書き物をするレオンに軍服を着た男達が話かける。
レオンは部屋のソファーに座りあぐらをかき、カメラのレンズを拭くロッドに目で合図をした。
ロッドは食器や食べかけの食事が散らばるテーブルを大雑把に片付け男達に「どおぞ」と声をかけ座らせた。

「今日は何の話を?俺が監禁されていた時の話?奴の他の犯罪の証言です?…それともルイについてですか」

ソファーに座る男達に不揃いのカップでコーヒーを出しながらレオンは問い掛ける。

「貴方の監禁されていた時の話は記事で読ませて頂いて彼を調査しています…否定も黙秘もする事なく認め淡々と喋ってますよ。ルイ君の事はもう少し傷が癒されてから本人を踏まえ話ましょう。今日はアンリ・アヴランコートさんに対する事について聞かせて頂きたいなと…」


レオンは窓から遠くを見つめる。青いそらに雲がゆっくりと浮かぶのを目にし

「長くなりますが。後、アンリの事ならロッドも一緒に…ロッドも関係者ですので」

と寂しげに答えた。
男達がうなづくと、ロッドはデスクの椅子へ反対に腰掛け背もたれに抱き着いた。


「アンリの事を話するのならまずは俺達の生い立ちから話さなければなりません…」

レオンは男達と対面ししっかりとした口調で話しだした。




レオンが幼い頃、両親は流行り病で死んだ。貧しい家だったが教育熱心で学校に行かせる事ができないレオンに対し、自分達が教えられる範囲の事を懸命に教える優しい両親だったとレオンは思い浮かべる。裕福ではない地方に生まれたレオンは身寄りもレオンを預かる余裕がなく、一緒に共倒れする位ならとある村の孤児院に入れられた。

そこで出会ったのがロッドだ。

ロッドの父親は貴族で母親はそこの下女、ロッドを授かり母親は父親から手切れ金を渡され認知される事なくロッドを産み育てた。ロッドの母を世間は卑しい女と蔑んだが、明るい気持ちのいい女性だった。彼女は働き過ぎたのか身体を痛めロッドを孤児院に預けたのを境に死んだ。ロッドは張り詰めていた糸が切れたのだろうよ、と大人になった今つぶやく。


同い年で性格は違うものの、辛い境遇を前向きに立ち向かう二人は息が合い仲良くなる。
孤児院は18歳までの児童が狭い二階建ての長家に、だいたい二十数人暮らしていた。
援助を受け、シスター達に世話や勉強を教えてもらい子供達は自給自足し懸命に生活してゆく。
ここに入れるのは運の良い事だった。この貧しい地域で路頭に迷う子供はたくさん居たのだから…

アンリはそこで物心つく前から住み、子供達をまとめる施設の兄的な存在だった。



「レオン見て、見て。池の中に変な奴がいるぞ」

庭で草抜きをし作業していたレオンにロッドは肩を叩き話かける無視をしていたがあまりにも、しつこく池を覗く。

「…何も見えねぇよ。くだらない事言ってないで真面目にしろよ」

作業に戻ろうとしたレオンの両肩を持ち止める。

「居るだろ!恐い顔した変な顔した奴!もっと近寄って見ろって」

レオンは池をジッと屈んで見た…映るのは自分の顔だけだった。何かをひらめき立ち退こうとした瞬間、ロッドはレオンを池に蹴落とした。
油断していたレオンは簡単に池に落ちびしょ濡れになる。

「ぎゃははっ、居たでしょ。すげぇ恐い奴が!」

ロッドは指を差し大笑いした。
みるみる内に怒る顔になるレオンを見たロッドは逃げた。

「ロッドッ…!このバカっ待て」


運動神経の良いレオンにすぐ捕まったロッドは羽交い締めされ捻りあげられる。
周りの子供達はいつもの風景に爆笑し痛がり笑いながら悲鳴をあげるロッドを見る。

「ごめんって!悪かったよー。アンリ、アンリ〜。レオンが謝るのに許してくれないよッ」


ロッドは周りが笑ってる中、ケホケホッと咳をしつつ静かに作業を続けるアンリに助けを求める。


「…レオン、ロッドを離してあげなよ。二人とも話をしよう、みんな少し休憩しようか」

アンリの言葉にみんなは休憩し、思い思い遊びだす。
3人は木陰で座りお茶を飲む。

「ロッドは最近、悪戯が過ぎるよ。レオンが怒るのは仕方がない事だけどさ…何を考えてるの?」

最初はふざけ、適当な言葉を言っていたロッドだったが、アンリの声は優しく人を癒す視線にロッドは真面目な表情を見せ小さな声で


「レオン…最近、元気ないからさ。いつも険しい顔して黙り込んで…つまんないよ」

顔を膨れさせ目を逸らす。
アンリは続けレオンに話かけた。

「僕も気にしてたんだレオン、君は何を考えてる?」

アンリはレオンの頭をポンッと叩く。
レオンは黙り込んで目を逸らすがアンリの視線に耐え切れなくなり

「別に…ただ、18になって施設を出た時の事」

と、ぼそっと返した。

施設は18になると世間に出される。施設内で少しの教育はされるもそれからは保護なしに一人で生活してゆかなければならない。
それは年を重ねる度に不安を募らせた。
それを聞き、顔を曇らせたロッド同じ十数歳の彼も言わないながらも同じ気持ちだったから。

「そっか…不安だね」

アンリは木の隙間からキラキラ差し込む光を見上げ考えた。



「レオン、ロッド。君達は何かしたい事はないの?」
急な言葉に二人は顔を見合わせ首をかしげる。

「したい事…生活するだけで大変だろ」

「そーそ。考えても空しいだけ」

俯く二人にアンリは肩を抱き

「僕はね、此処みたいな孤児院をたくさん作りたいんだ」

と言う。

「僕は君達より一つ年上。身体も弱いし不安だよ…だけどね、人間は頭を使う事とココは捨てては駄目なんだよ」

咳をし、アンリは胸に手を置き目をつむる。


「どんな境遇でもココを無くさないでいると何かできると思うんだ。ただ、生きてるだけじゃ駄目だ。レオン、ロッドはどう思う?」



レオンとロッドはまた黙り下を向く。アンリはいつも二人の悩み事を聞き、何か二人の様子に変化があると気がつきこうして話を聞いて考えさせていた。
身体の弱いおとなしいアンリだったが包みこむ優しさに男を感じていた二人はどこか父親を感じ信頼していたのだ。



「そろそろ作業を始めようか…レオンは着替えておいで」

アンリは立ち上がり、背伸びする。
レオンは自分がびしょ濡れなのに思いだし、ロッドを一睨みし「バカ」と声に出さず言った後、屋敷へ走る。後ろ姿に舌を出し笑うロッド。

そんな二人を見ながらアンリは乾咳をしながらも笑う。





「アンリは俺達にとって兄で父親でした。身体が弱かったですが強い人でした」

「アンリが居なかったら俺は今、適当に生活して野垂れ死にしてたよ」

二人は軍服を着た男に懐かしそうに話をする。
男達は書類を書きながらうなづき、横槍を入れる事もなく聞いている。

コーヒーを一口飲み、レオンはまた語りだす。

「そんな大変だけど楽しい生活をしてた。だけど時は無情に過ぎアンリは18になり先に施設を出たんだ」

コーヒーの強い香りを嗅ぎ、気分を落ち着かせた。





「レオン、ロッドそんな顔しないで…落ち着いたら会いに行くるよ」

アンリは沈む二人の顔を見て声をかけた。
施設の前でみんなに見送られ、アンリは何とかみつけた就職先へ向かう。
就職したのは過酷な労働作業。身体の弱いアンリを二人は心配していた。

「大丈夫だよ。じゃあね」

アンリはそれが解り明るくつとめた。



それから数ヶ月経ち、施設にアンリが会いに着た。

「久しぶりだね二人共」

作業していた二人だったが、アンリの顔を見たロッドは飛びついた。

「アンリ〜久しぶりッ」

軽く抱き着いたのだが、アンリは吹っ飛び床に尻餅をつく。そして、ひどく咳込む。
レオンはロッドを睨みつけ「何やってんだバカ」と叱った後、アンリを起こした。
肩に手を回すと服に隠れ細い身体がさらに痩せている事にレオンは心配する。

「アンリ?体調が悪いんじゃないの?俺達みんなに仕送りして無理してんだろ」

レオンの言葉にアンリは払い自ら立ち上がる。

「お前達が気にする事じゃないよ。仕送りだって無理してない、ただ慣れるまでね」

笑いながらも咳をし続けるアンリを木陰に座らした。


アンリは座ると荒く息をし、落ち着かせるように深呼吸をする。

「懐かしいな…この景色」

上を見てつぶやく。


「アンリ…俺達はもうすぐ此処を出るよ。そしたら一緒に住もう」

「身体を治せよアンリ」

二人はアンリにそう言うがアンリは首を横に振り「大丈夫」と笑う。
そうして二人はアンリが施設を離れてからの話を楽しく話する。
話はだんだんと施設を出てからの話になる。

「へぇ…レオンは俺と同じように働きながら…いずれは学校に行きたいのか。福祉のね」

レオンは足を抱えうなづく。

「ああ、働くだけで精一杯だと思うよ…だけど、今この国のえらい奴は目をつむる奴ばかりだ…勉強して俺が偉くなったらって…無謀だけど」

レオンの言葉にアンリは何も答えずうなづいき笑う。

「ロッドは金持ちの家で使用人か…大丈夫かな?悪戯ばかりしちゃ怒られるよ」

クスクスと笑うアンリにロッドは眉間にシワをよせる。

「レオンの時は笑わなかったのに…そんな子供じゃないよもう。そのお金持ちさ、芸術家の変わり物だけど使用人でも見込んだら写真の撮り方を教えてくれるって…その人さ『子供の楽しそうな写真を見たら社会も変わるだろ』って。いい人だろ俺もそんな言葉言うんだいつか」

ロッドは珍しく真剣な顔をする。それをアンリは真剣な顔でうなづき返した。


「今日は二人に会えて良かった。正直、理想とのギャップに疲れてた。力をもらったよ、また頑張るよ」

咳をしアンリは目を閉じる。二人は心配しそれを見る。
そのまま三人で時を過ごした。

帰り際、アンリはまた来るよと微笑み施設を後にする。
そして

「そうだ僕ね、紹介された新しい仕事をしようと思うんだ。いい人なんだロベスさんって言ってね…すごく、お金持ちなんだけど…僕達みたいな人を救う為に活動してるんだ。その手伝いをするんだ…頑張るよ」


アンリは笑い手を振り帰っていった。






「それから誕生日を迎えた俺達は順々に施設を出ました。就職した俺達は時々会い愚痴をいいながらがむしゃらに頑張りました」

レオンは目をつむる。

「大変だったよな…俺、変わり者の師匠から何度、逃げようとしたか」

ロッドは腰掛けを揺すり、あははッと思いだし笑いをする。
そしてロッドは話を続けた。

「で、施設を出てアンリに会ってないから会おうって話になった訳。…だけど、久しぶりに会ったアンリは変わり果ててたんだ」

ロッドは腰掛けを握りしめ震える。





仕送りはずっと続けられており、それより増えていた。
最後の手紙を宛てに二人は訪ねる…昼間だが暗い裏通りに入りガラの悪い人間がたむろしている。
睨みつけられたが二人は目を逸らしながら上手に歩いた。
住所から一軒の飲み屋を見つた。
ジャカジャカと音楽がかかり店の前には体格の良い男達が酒を浴びていた。

「ここだよな…」

「ああ。アンリこんな所で何してんだよ」

二人は店の前の男達にニヤニヤと笑われながら立ち入ろうとすると

「お前達。駄目だ入るなっ」

アンリの声がし二人は振り帰り笑うが、アンリの変わり果てた姿にびっくりする。
アンリはさらに痩せ、頬がコケている。髪は伸び寒い季節にボロボロの服を一枚だけまとっている。


「二人ともおいで、こっちで話そう」

弱い力でアンリに引っ張られ、更に細い路上に入る。店の前の男達は耳打ちをしながらそれを見ていた。

少し歩き下に置いてある箱に腰掛けたアンリは二人の顔を見る。

「二人とも…少し痩せたね。大変なんだろ仕事…体調は崩してないか?」

アンリはやっと笑い弱々しい笑顔を見せた。

「俺達よりアンリだよ。また持病が悪化したんじゃねぇのか?」
「そうだよ、お前痩せすぎ。新しい仕事って何をしてんの?」

二人はいろいろ問いつめたがアンリは笑顔をみせ「大丈夫」とくり返すだけだった。
ラチがあかないと二人はため息をつく。
だが、レオンはアンリ服がめくれ胸元から傷だかけの身体を見る。

「何だよコレっ」

レオンはアンリを掴む。
ロッドもそれを見て口を手で塞ぐ。

「何でもない…何でもないからッ」

アンリは振り払おうとするが、力が弱くそして力つきレオンに倒れ込む。

「離してレオン…お願いだから」

涙を流し始めたアンリをレオンは、はなし離れ見る。


「レオン、ロッド。心配しないで…大丈夫だからお前達は自分の夢を叶える為に頑張りなさい」

アンリは力なく、頭を撫でた。何も言えなくなった二人、黙り佇んだ。
その時に遠くからアンリを呼ぶ声がした。
その声を聞きアンリは返事をし、二人を追い返すように押した。

「もう来ては駄目だよ…自分から会いに行くから。二人とも元気でね」

アンリはそう言うとかけて店の方へ行った。
二人は日も暮れる時間もあり、腑に落ちなが帰る。アンリの約束を破り今度また会いに来ようと約束して…


二人は少し後悔していた。あの時にアンリを無理に問いつめて帰してればアンリは…と


次に会いに行けたのはそれから数週間後だった。
施設からはアンリからの仕送りが無くなったと聞いていた。また同じ店に向かう。
今度は、正面から入っても無視されるかもと店の裏に入り窓から覗く。
店で何が行われてるのかと…何がアンリの仕事なのかと。
店の窓から中を見て二人は絶句した、暗い店には桃色のネオンがぼんやりとつけられていて、何やら香る煙りが立ち込める。
そこには、何人もの男女が重なり合い人間の物か疑う声があがっていた。いや、同性同士でも重なりあっていた。
アンリがこんな所で何をしているのか二人考えこむ。

「レオン、あれ」

ロッドの声にレオンは指さす方を向いた。
見ると一つのテーブルでアンリは裸で男の上に乗り目をつむり悶えていた。周りには男達が下品な笑いをみせ何やら話をして指さし、タバコを吸っている。
暗いがそれは性行為をしているのだと二人は解った。
レオンはとっさに小さな窓から店に入り、テーブルへ走り男からアンリを抱き抱え店の出口へ向かう。
出入り口のドアはロッドが前に座る男達を押しのけ開け手招きをする。
店の外に出た三人は走り遠くの空き家に入った。
アンリは目を開けながらも朦朧としておりソレを二人は顔を叩き、覚醒される。
男が吐き出したであろう液体で汚れ、ガリガリに痩せた身体を自分の着ていた服を脱ぎふきとった。

「アンリッどうして?酷い」

ロッドはアンリに抱き着いた。
気がついたのかアンリは弱く抱き返す。

「久しぶりだね。ロッド、また悪戯ばかりしてるのかな」

アンリはクスクスと笑った。

「笑うなッ。可笑しくないだろ」

レオンが怒るのを、アンリは指さし

「レオンは相変わらず怒ってばかり。そんな顔で固まるよ」

ふざけるアンリを二人は怪訝な顔で見つめる。

「そんな目で見ないでよ…だから来るなって言ったでしょ?僕は変わったんだよ」

アンリはそう言うと起き上がり座ろうてするが、力がぬけ床にまた寝そべる。
二人は支え壁に座らせた。咳をし胸を抑えるアンリ…

「身体中が痛い。苦しいよ…」

泣き出したアンリは今までの出来事を話だした。
ロベスという男に落とし入れられたと…

ロベスは始め、貧しい地域を視察し仕事を斡旋する手伝いをして欲しいとアンリに手伝わさせた。
それは今になって売っても足のつかない人間を探す為だったと語った。
アンリの優しい言葉に金持ちのロベスには警戒してついて来なくても、アンリに言われるのなら大丈夫だろうと…そして教養がないアンリにはロベスの行いがバレぬと…

だが、アンリの利口の良さにロベスは気がつき始めた。ロベスはそろそろ手を打とうと新薬の実験としてアンリに持ち掛けた。

「君にお願いがある、新薬の試験体になって欲しいんだ。何、動物実験は成功して人間にも成功している…ただ例が欲しいんだよアンリ」

世話になっているロベスを信頼していたアンリは返事をする。
それは、依存性のある淫靡な薬だった。
気がついた時は薬は切れなくなり、あの店に入れられ働かされ出れなくなった。


「あの時…前にあった時はもう?」

ロッドは涙を流し聞く。

「…毎日、毎日脅された。ロベスに次はお前の後輩をやってやるって。逃げようとした何度も…だけどあの人の力の前では無駄だった」

アンリは力なく涙を流す。

「俺達が信用できなかったのかよ。あの時、助けられたかもしれないのに」

レオンはアンリを揺すり怒鳴る。

「僕はどうなっても良かった…どうせ持病で長くないと解ってたし。逃げたかったんだ全て嫌になった、もう終わらせたいんだよ」

アンリは目を閉じた。

二人は貯めていた少しの金と職場に頼み前借りをし、アンリを入院させた。
少ない金ではろくな治療を受けられなかった。
そして、国にロベスの悪事を言い行くが汚い二人の出で立ちを見て門前払いで相手にしなかった。
証拠もないし、証人が話せないのならどうしようもないと…

その日からアンリは弱っていき、うなされながら眠り続けた。


「許して…僕以外には手をださないで」
「早く、早く死なせて…もう見たくない」

と。

眠らせるだけで何も出来ぬ二人が仕事をしている間にアンリは一人で深い眠りに落ちた。





「医者も、政府の人間…アンタらの仲間は何も取り合ってくれなかったよ。忘れろ、知らない、嘘をつくなまで言れてさ」

レオンはタバコに手をとり火をつけた。
ロッドはその煙りを目で追う。

「アンリは綺麗な顔して眠ってた。やっと楽になったんだって俺達は安心しようとした…だけど、ね」

ばつの悪い顔をしていた軍服を着た人間は「だけど?」と聞き返す。


「アンリが死んだ夜、すぐにロベスの使いが来てアンリを連れて行こうとした。『病気だらけの身体だが使える所があるだろう』とね」

煙りを吐きタバコを手で折った。
ロッドは顔を伏せレオンの言葉に続ける。

「必死に抵抗したんだけど、ボコボコにされてアンリは連れていかれた『これが欲しいんだろ』って金をばらまかれてさ…何日か経って骨だけ帰って来てくれた」



「後はアンタらも知ってるだろうけど、俺達は働き金を貯めた。俺はロベスに復讐するため情報を集めやすい記者になり独立。そして同じ被害者を集め仲間をつくり記事を書き世間に暴露した…アンタらも重い腰をやっとあげてくれた訳だ」

レオンは男達を睨みつけ笑う。

「ほんと…大変だったんだから。寝る間も惜しんでカメラを持ち調べさ。結局はレオンまでロベスに殺されそうになった…アンタ達は俺達、力を持ってない人間の気持ちわからないよね」

ロッドも男達を睨む。
軍服を着た人間は複数の視線に気がつく、職場の人間はみな手を止め冷たい視線を送っている。


「ありがとうございました。裁判の日はまたよろしくお願いします」

と軍服を着た人間は帰っていった。




「くそっ…むなくそ悪ぃ」

レオンはデスクを蹴る、書類がバラバラ落ちるのをロッドは拾う。

「レオン、腹立てついでだけど…また野次馬がお前の言葉を聞こうと周りで待機してんな」

ロッドはレオンの飲みかけのコーヒーをすすり机に腰かけた。
職場の周りにはカメラを持った人間が何人も立ちカーテンを閉めている中を伺っている。

「俺が捕まった時にロベスからされた事を赤裸々に書いたからね。面白可笑しく記事が書きたいんだろ」

レオンはそう言い机をまた蹴る。

「俺、少し心を痛めてるんだよ…本意じゃなくともお前の傷つけられた裸の写真を撮って、酷い行いを記事にして」

ロッドが顔をしかめるがレオンは気にしないと、またタバコに火をつけた。

「インパクトがあっていい写真だったよ。それにアンリに比べれば…俺は生きてる。それだけで前に進めるんだ…それはお前達仲間のおかげだよ」

レオンの言葉に職場の人間は笑いレオンの肩を叩く。
レオンは「それと…」とつぶやく。ロッドは続きに何が言われるのか解り

「俺もついて行くよ。あの子ん所…レオン様」




――ロッドの言葉にレオンはロッドの頭を叩き笑った。
その顔は昔から変わらない、子供の様な無邪気な二人を周りもつられて笑う。





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