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小説
文弥Side…3


「すっげぇ雨」

優太の言葉で俺は優太の方を向く。優太は濡れた髪をタオルで拭きながら窓に立ちその様子を眺めている。
屋根に打ち付ける雨音が痛々しい。

「…雨やまないね。昨日からずっとだ」

今日は平日だが、昨日からずっと降り続ける雨で警報が出たおかげで学校は休校。自宅で自主勉強をとの事だ。
俺が部屋で学校の言い付け通りに勉強をしてる所に優太が遊びに来た。

「ねえ、シャワー浴びてきたら?風邪ひくよ」

俺の家から優太の家は近いし、傘もさして来たのだろうけど優太はびしょびしょ、柔らかい髪も濡れぺちゃんこになっている。それだけ雨がすごい中来てくれたのだろうな。

「そうだな…風呂借りるわ。後、着替えもかして」

優太の言葉を聞き、着替えを探し風呂まで一緒に行く。俺の家なんて何度も来てるから案内なんていらないが、コイツの服を洗濯して乾燥機にかけなきゃなんないし。
脱衣所まで行き濡れた服を脱ぎ鍛えている上半身をあらわにした優太を見た瞬間、胸が高ぶったというか…熱くなったというか…早い話ムラムラとした俺は優太の胸の中に顔を埋めた。

「いきなりどーしたんだよ、文弥」

いつもの様に優太は顔を赤くし、あたふたとする。

「俺も一緒に入ろうかな…ねぇ、身体中を洗ってあげるよ」

背の高い優太の顔を見上げ笑うと、俺を優しく押し退け優太は脱衣所から俺を追い出した。

「今は本当だったら学校に行って勉強してる時間なんだから…そんな事は出来ないよ」

と意味の解らない理屈をつけ優太は風呂場の中へこもった。
学校に行ってたって勉強なんてしてない癖にさ。
あしらわれた俺は優太の服を洗濯機に入れ部屋で待った。

少し時間がたち、俺の服を着た優太が戻ってきた。体格が違うせいか、いつも着てる服を優太が着ると違う服みたいで変な感じだ。

「ありがとな、さっぱりした」

優太は俺の隣に座り、ジュースを飲みだした。シャワーを浴び、髪の乾かしたおかげでいつものふわふわの髪に戻っている。愛しいその髪を撫でた。いつもなら優太の匂いがするんだけど、俺の家の洗髪料を使ったせいで違う匂いがする。

「優太が言うように、本当だったら今頃は学校で勉強してる時間なんだよね…なんか嬉しいな」

自分で作った勝手な約束事なんだけど学校では優太に触れる事が出来ない。それができる大雨に不謹慎ながらも感謝する。

「文弥…んッ」

俺の言葉に何故か少し悲しそうに微笑む優太の唇に俺は口づける。逃げる事もせず俺を受け入れてくれ、強く抱きしめてくれる優太に俺は嬉しくなり舌を絡める。
どれくらい、そんな事をしてたのだろうか…そんな時にいきなり光ったのと同時に大きな音がなり部屋が揺れ照明が落ちた。

「うわッ…近くに落ちたな。周りも停電してる」

突発的な出来事に俺から離れ薄暗い部屋で優太は窓に立ち外を眺めた。

「こんな暗い部屋じゃ何も出来ないしさ…優太、セックスしよ」

その間にベッドに横になった俺は優太を誘った。

「いつも、いつも…なんか俺がお前の身体が目当てで来てるみたいで嫌なんだけど…」

俺の傍まできてベッドに座り優太は頭を撫でてくれながら話かけてくる。

「俺は優太の身体好きだよ。めちゃくちゃ気持ちよくて温かいから…優太は俺の身体嫌い?」

優太の手が止まり、俺の上に乗り抱きしめられる。

「好きだよ…全部。文弥の事すべて好き」

優しい声に目をつむり俺はその時を待った…


「…だけど、今日は止めとこ?…ね」

心地よい暖かさが無くなったので優太が俺から離れていったのが解った。
その瞬間に明かりがつき優太の顔がはっきりと見える。
少し困った顔をした笑顔を俺に向けている。

「…なんで?」

「文弥が好きだからこそだよ…解って」

なんだよそれ?
優太の言ってる事は理解出来なかったけれど笑顔に騙され俺はうなづいた。
解らないのだけれど、二人っきりの時間は大切にしていきたく喧嘩なんかしたくないし。

「雨…早く止むといいね」

俺は話を変えて、窓際に立ち外を眺めた。

「ああ…もうこの雨が終わると天気が良くなるらしいよ」

背中越しに優太の声をきき新しい季節の到来を思い浮かべる。

「そしたらさ」

優太は俺を背中から抱き寄せ顔を寄せながら言った。

「たくさん、楽しい思い出作ろうな。文弥」

これからしたい事を思い浮かべ俺は嬉しくなった。今、抱き寄せられる温かい腕が気持ちいい。
身体の中の何かが癒されていくのが解った。

「楽しみ…」

今日の優太の言葉はよく解らないけれど、優太はこうやって傍にいてくれている。
それだけで俺は充分なんだ。

他に何もなくてもね。




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