小説 5 要が尚樹の家に来て数ヶ月が経った。 尚樹に要は性行為を強要され抵抗せずに従う。そして気まぐれに父親に合わせ、またソレを餌にし関係を続けさせていた。 父親の病状は変わらない…ただ、あのままいくときっと生きて居なかっただろうと要は言い聞かせ現実を堪える。 自分のしている事は正しいのだと。 「要さん?何を考えてるの?」 要の顔を不安そうに奏が見つめた。 屋敷の庭に出て、宿題だという写生をする奏の傍に座り要はそんな考え事をしていたが、子供に心配そうな顔をさせたと要は笑い 「なんでもないよ」 といい頭を撫でた。 いつも仕事で尚樹が居ない間は、することもなく部屋で寝ていた要だったが奏が家に居る時はずっと一緒にいた。 この屋敷の中で唯一、要を癒してくれるのは奏の存在だった。何も知らない無垢な奏は要の心を暖かくさせてくれる。 いや、一緒の屋敷に住んでいて子供ながらに何か解ってるのかもしれないが…奏はいつも要を気遣う。その優しさに救われていた。 「奏は絵が上手だね。向日葵がきれいに描けてるよ」 奏のもっている画用紙には青い空に伸びる明るい色の花が描かれていた。見ていると気持ちが明るくなれるような絵だ。それを描ける人物の心を写しているように。 「今日も暑いな」 要は空を見上げつぶやく、高く広がる空と蝉のなく声、白く浮かぶ雲が心を癒す。 そして隣でまた懸命に絵を書く奏を見る。少し日に焼けた肌が子供らしい。 ただ不似合いなのは身体につく傷…。 この数ヶ月一緒にいて、奏に対する尚樹の態度を見てきた。気に入らない事があると手をあげてる姿を見て、要はその度に尚樹を怒ったが変わらず奏に冷たくあたる。 自分と同じ顔をした子供に… 「…奏、また顔腫れてるけど叩かれたんだろ?尚樹に…酷い事するな」 頬を撫でる要に奏は悲しそうな顔をしたが笑顔を作る。 「僕、頭が悪いから…パパは悪くないんですよ」 奏は尚樹の事を悪くいう事はなく、自分を責めるばかりだった。それは恐怖心なのか植え付けられた自分への劣等感なのかは要には理解できなかったが父親を懸命に愛そうとしている事だけがなんとなく解った。こんな、いじらしい奏の事を要はどんどんと好きになってゆく。「奏は頭のいい子だよ」 頭を撫でると微笑んだ。 庭で過ごしていた二人だったが、鳥が鳴き灰色の雲が空を覆いゴロゴロと雷がなってきたのを境に屋敷の中に戻った。 予報では雨とは言ってはなかったものの、気まぐれな季節。屋敷の中に入り片付けをしていたら土砂降りになった。 「よかったな…早く入って」 大きな窓から二人で雷がなる庭を眺める。 激しく打ちつける雨が痛々しい。 その時、玄関が開き部屋の主人が帰ってきた事で要の表情が曇る。長い夜の始まりだ。 「お帰りなさい」 奏は尚樹に駆け寄り笑顔を作る。 「お帰り…」 奏の後について行き離れた場所から尚樹に小さな声をかける。 カツカツと足音をたて、奏を押し退け要に肩を回し歩きだした。 後ろを振り向き、その姿を奏は目頭を下げ見送った…。 「今日は特におもしろくない顔をしてるね要」 夕食を食べ風呂に入り、部屋でバスローブに身をつつんだ二人はベッドに腰をかけワインを飲む。 これが毎日の日課だった。普段、酒など飲まぬ要だったが強要される行為の前は酔う事で自分をなくそうと飲んだ。朦朧とした中で抱かれる方がマシだと。 外は雨が止まず雷鳴を響かせ時々、カメラのフラッシュのように光り夜の風景をみせた。 「何が不満なの?言ってごらん」 尚樹は要の顎を持ち顔を向けさせた。「何も…」 手を払いのけ、顔を背けた要に尚樹は顔をはたいた。高い音がなり熱い頬を要は手でさする。 嫌なそぶりや気に入らない態度を取ると尚樹は手をあげていた。 「何が嫌か言えよ」 低い声に要は口を開いた。 「尚樹…俺は叩いたり好きにしていいけど…奏に冷たくあたるのやめてよ」 尚樹はフッと鼻で笑った。 「なんだそんな事か…最近、アイツお前とよくいるみたいだけど告げ口でもしてるのか」 「違う。奏は尚樹の事を悪く言った事なんてない…それどころか奏は…ッン」 要が必死に訴えるのを終らない内に尚樹にベッドに押し倒され唇で口を塞がれる。 「あんな出来損ないのガキを可愛がってもらって嬉しいよ。そんなに大事ならお前の頑張り次第で俺も可愛がってやってもいいけれど?」 白いバスローブをめくり上半身を摩りながらめくる。要はその言葉で尚樹が今から自分に何をさせようとするのかが解った。 要は尚樹の目を見つめる。短い間だが、奏の存在は大きなっていた。まるで自分の本当の子供や弟のように守らなければいけないと思える程に。 そして、尚樹もそんな要の情の深い性格を解っていた。 「俺は尚樹の好きにしていいから。奏だけは…」 別れてから初めて要から尚樹にキスをする。 それが愛とは違うモノだと尚樹にも解ってはいたが、もうどうでもよかった。ただ自分の言いなりになり、服従さえさせれば自分から逃げれないと…。 元々、愛だったのかは知れないが歪んだモノが時が経つ程、複雑に絡みだしていた。 弱みが一つ増えたと尚樹は喜ぶ。 「…あんッ、ひッン」 ベッドの照明だけをつけた薄暗い部屋に要の声が響く。 部屋には雨が屋根を打ち付ける音と時々響く雷鳴。そして裸の身体が合わさりあう音がする。 時折、雷の明かりで暗い部屋が明るくなり、二人が絡み合う行為がうつる。 「ッはあ、なッ、な…おきィ…、だ…ゃめ」 ベッドの上で顔をつけ四つん這いになり腰を高くあげ、身体の内部を圧迫するモノを受け止める要を尚樹は逃げないように被さり両手をふさぐ。自分のモノを奥まで入れ味あわせる。 その姿はメスが逃げない様にと押さえ込む、動物の交尾にすらみえる。 いや、獣が草食動物をかり喰らう姿にも…。 「んっ…お前、可愛いわ…さっき言った言葉をまた言えよ」 尚樹は要の髪を掴み顔を覗く。 「っすきィ…なおきの事、んッあ…好きぃ。もっとしてぇ…」 要の目からは涙が流れ、口からは唾液が垂れる。何回もの行為の為、意識が飛び飲んだ酒の効果もあり表情も朦朧としている。 顔や髪は自分の汗だけでなく相手の出したものでべとつき汚れている。 「き、気持ちいいょお…好きッ…大好きィ、尚樹ッ」 叫び声に近い喘ぎ声を要は出す。尚樹の機嫌がとれる言葉は解っていた。 本心ではない言葉を言う自分が自分でないように感じながらも要は朦朧する頭の中、言葉を連ねる。 「そうだよ、要は俺の事が大好きなんだよ。こんな恥ずかしい事されてもね」 尚樹は人間ではなく物を扱うみたいに要の髪を引っ張り倒し、仰向けにしまた挿入した。 苦痛とも快感ともとれる表情を楽しみまた、自分の欲望を尚樹は満たしだした。 「ううッ、好きだよぉ、だから、もっとしてぇ…。んあッ。尚樹ぃ…」 「要、気持ちいいか?こんないい声出しやがって」 高笑いする尚樹の声を聞きながら、自分の思いとは違う言葉を口に出す度に、要の心の何処かが痛みだんだんと苦しくなり涙が止まらなくなってきた。 「もうやだ…」 心の中の思いを呟いた。 我慢していたモノが溢れだす。 「嫌だ…離して、気持ち悪い」 要は叫び、尚樹の身体を押しのけ置かれていたタオルケットで必死に身体を隠した。 ベッドの端へ逃げて、丸まり尚樹を見ながらふるえる。いつかの昔の出来事の風景を思いださせる。 「今なら謝ったら許してやるから、来いよ要」 尚樹は無表情で呟く。 そんな尚樹を睨みつけ要は泣きじゃくりながら大きな声で返した。 「本当は…こんな事したくないんだ。アンタに触られる位なら死んだ方がましだって…うッッ」 言い終わらない内に身体に痛みが走る。 そして何度もくる尚樹の怒りに要の身体は自分を守ろうと丸め痛みを堪えようとした。 「どうなっても良いのかよ。俺は何だって出来るんだ。お前の周りを全て壊せるんだからな」 理性のない怒りに満ちた声が要の耳に届く。 その恐怖より、与えられた長い苦しみの方がまさった。 「もう嫌だ。助けてよ…誰か…誰でもいいから、やだよぉ」 後先なんて考えられる余裕なんてなく、もう要にも理性はなく悲痛な思いだけが声となって出てくる。 そんな時、急に温かいものが身体を被い痛みが無くなった。 「やめてパパ。もう駄目だよ」 「か…なで?」 優しい声だが力をもった意識の言葉に要は少し意識を戻した。 要を守ろうと奏が抱き着き尚樹の拳を受け止めたのだ。 「パパ、要さんに酷い事しないで…。どうして好きな人にいつもこんな事するの?」 自分より小さな身体に要は抱きしめられ、守られている。 奏は尚樹から目をそらさず見つめる。 「どけよ奏。部屋に帰るんだ」 感情のない言葉をかけ、奏を手で押しのけようとするが、また力強く要を抱き離れようとしない。 「嫌です。僕が帰ったらまた酷い事するに決まってるから…パパがもう止めてくれるって言ってくれたら帰ります」 今まで見た事のない奏の強い表情を要は見ていたが自分を守る小さな身体が震えているのに気がついた。 だが、皮膚を叩きつける音がしその身体が離れていった。 「くそガキめ、生意気な口を聞くな」 そう言い、尚樹は奏をまた叩き、何度も叩きつけてゆく。 「や…止めてあげて。尚樹っ」 はっきりと自分を取り戻した要が今度は奏を抱きしめ守る。 奏の口は切れて頬は真っ赤になっている。 「ご、ごめんなさい。俺が悪かったんです。許してあげて下さい…ね、奏。早く部屋に戻って…」 尚樹に許しをこいながら逃がそうとする要。 だが奏は涙をためながらも尚樹を睨んだ。 「なんだその目は」 奏を叩きはじめたとのと同時に要は防ごうと抱きしめようとした。そんな要を直樹は奏から離し、手首を側にあったベルトを掴みベッドの柱へ身動きが取れぬよう拘束した。 「ッあ、何するんだよ尚樹」 「邪魔だよお前。少しの間、じっとしてろ」 要の口にタオルが詰められ発言も出来ぬよう塞がれた。 あまり動けぬ身体で拘束を取ろうと必死にもがく。 「奏…俺に何が言いたいんだ?」 尚樹は口元だけ笑う。 「パパは本当に要さんの事を愛してないんだよ。だからこんな事できるんだ」 少しの間、沈黙していた奏は震えながらもはっきりと声をだす。 尚樹の顔がだんだんと怒りにみちてゆくのを目にしながらもまた話だした。 「パパはね、自分が一番好きでそして嫌いなんだよ。だから相手に求めるだけなんだ…恐いから…」 その言葉を聞き、尚樹は奏の頬を力いっぱい叩く。昔、要にも言われた言葉…。 「その生意気な口が聞けないように、今日も躾てやるよ」 尚樹は奏をむなぐらを掴み持ち上げ何度も叩きだす…拘束され動けぬ要はどうにか止めようと動くがベルトが手に食い込み、出血し痛むだけでびくともしない。 叩かれる奏は痛みから逃げようと避けるが大人の力には勝てず痛そうな声をあげる。 尚樹の手が止まったのは奏が動かなくなってからだった。 ハア、ハアと荒い息を整えながら尚樹は俯せる奏の顔を持ち上げた。 「そうだよ…お前の言う通りかもな…だけどこれが俺の愛し方なんだ」 微かに息をする奏を投げつけ、尚樹は要に近づき股を開かせぺニスをあてがった。興奮しているのか、大きく準備されている。 タオルで上手く声を出せない要は首を振り嫌がったがお構いなしに尚樹は挿入し腰を振り始める。 「見てろよ奏。大人が愛し合う姿だ…」 尚樹は笑いながら要を攻め続けそれを奏は動けず顔だけを向け無表情で眺めていた。時々、涙を流しながら… 尚樹の気が済み、要は手を解かれた。 重い身体を引きずりながらも奏に駆け寄った。 「奏、ごめんね。大丈夫?早く傷を消毒しなきゃ…」 ぐったりしながらも、奏は要にしっかりと抱き着く。 その様子を尚樹は見つめていたが、鼻で笑い部屋を出ていった。 「もう大丈夫です」 少しの時間がたち奏は起き上がった。そして部屋を出ていった。 要は奏が帰った後、何も出来ず死んだように倒れ眠りについた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |