小説
優太Side…2
ベッドで横になる文弥の頭を撫で寝かしつける俺は、今にも消えてしまいそうな文弥から目を離せず見つめる。
「ごめんなさい、嫌わないで?」
「優太ありがとう。もう大丈夫だから」
「また一人は怖いよ」
と俺を見ながら意味の異なるウワゴトを繰り返す文弥を撫で慰める。
それに安心してくれたのか、疲れたのか弱々しい顔は眠りについた。
撫でる手を止めた俺は先程の出来事を思い出す。
ダチ達と飲んでた俺は文弥からの電話を受け、会いに行き、今日あった事を説明された。
前に会ってた男に脅され、縛り好き勝手にヤられ回されたと…。
身体を見れば、どれだけ酷い事をされたか解る。火傷の後や縛られた跡、キスマークだらけの身体。
目も腫れていっぱい泣いたんだろうな。
ソレを俺は酔っていたといえ「寂しくて自分から誘った」とか最低な事言ってしまった。文弥は前まで適当に身体を売ってたのだろうけれど、俺と付き合ってからは真剣に俺と向き合ってくれてたのに…文弥の身体の心配より、普段気がつかなかった自分の支配欲に負けていた。
しかも、ヤラれ傷いてる文弥を押し倒して自分の欲を満たそうとしてしまいそうになるなんて…。
きっと文弥は無理矢理に俺が強要したって受け入れたのだと思う。身体中が痛くっても我慢しながら…それくらい、文弥は自分というものを大切に出来ず身体を使う事で相手を求める。そんな事しなくたって俺は文弥の事が好きだ。セックスなんかしなくても、文弥は優しい、いい奴なんだと教えてやりたかった。
ただ、今回の事で文弥はまた信じれなくなるんじゃないかと悩む。自分の単細胞な頭を恨む。
「文弥、ゴメンね…痛くて怖かったね」
独り言を呟き、文弥との初体験を思い出す。
文弥と付き合いだし、家に入り浸るようになった俺。
「ねぇ、今日もセックスしないの?」
文弥はベッドに横になり、テレビを見る俺に問いかける。
「は…何だよ毎日、毎日。まだ順序ってものが…」
付き合うようになった初日から毎度の様に誘う文弥に俺は焦り言葉を返す。
「へぇ、意外に真面目なんだね優太って。それともやっぱり男同士なんて気持ち悪いとか」
笑いまた問いかけてきたが、俺が恥ずかしくて何も言えずにいると文弥はベッドに横になったままぶ厚い本を読み出し、俺に話かけるのを辞めた。
この前、勇気をだしてキスをしたがそれ以上は出来なかった。気持ち悪いとかは思わない。だが文弥を前にすると手が止まる。
なんかこう、簡単に事を済ませてはいけない様な…他に付き合ってきた女はいたし、上手くは言えないが文弥の弱々しい顔を知ってしまった俺は守ってやりたいとナイト気取りで付き合ったからそんな不純な関係はまだ早いと。
バカバカしいがその自分との約束の為、俺は手を出せないでいる。
ただし、最近の一人遊びの時の想像は文弥ばかりを思い浮かべ情けないんだけど…後は男同士ってどうやってヤるのかイマイチ解らないしさ。
文弥が本を読む姿、整った顔立ちの横顔に見とれる…。
その瞬間、長めの前髪と眼鏡をなくし顔をしっかりと見たいと思った。…思ったと言うより先に手が出ていた。本を取りあげ振り向いた隙に眼鏡を取り、片手で前髪を上げていた。少し顔をしかめて俺を見る文弥だったが、笑った事で俺は正気に戻る。
「わっ、わりぃ…」
眼鏡をとった文弥の顔は本当にキレーだった。女とひけを取らない位に。
「眼鏡返して。ソレないと何も見えないんだ」
そういい俺に手を伸ばす。
そう言われ取った眼鏡を渡そうと文弥の手に触ると、文弥はベッドからズレ落ちベッド下に座っていた俺ね胸に飛び込む。本当に目が悪いらしい…
しばらく、緊張し胸に顔をつける文弥を見ていたが、文弥は俺の背中に手を回し抱き着いてきた。
そして一瞬だが、時々みせる寂しそうな顔を見せる。
「文弥?」
俺はこの状況で性的な考えは何処かにいき、文弥のその悲しい顔にくぎ付けになる。
だが、すぐ文弥はいつもの顔に戻り俺から身体を離し、眼鏡を机に置くとベッドに戻る。
「優太、別にいつでも別れたい時には言ってね。充分、楽しんだしさ」
布団に包まり、俺との事を何とも思ってない様に言う文弥に少し腹を立てた俺はベッドに乗り、文弥にかぶさる。
「別れたいなんて思った事ないよ…ただ、お前を見てると手が出せないんだよ…何でかわかんねぇけど」
本心が勝手に口から出て俺はそのまま文弥に抱き着く。
「別に俺の身体なんて、売った相手に好きにさせてるから今更と思うけどね。好きに遊べばいいのに」
そういい、俺の顔を見て笑う文弥の顔を見てると胸が痛くなり俺は文弥にキスをしていた。
好きな奴にそんな事を言われると苦しい…
「そんな風にいうなよ…俺はお前が大切なんだ」俺は頭を撫でた。
「…じゃあ、しようよ?俺はそんな付き合いしかしてないから言葉だけじゃ解んないの」
文弥は抱き着く俺の肩に手を回した。
その時、緩い前開きの服を来ていた文弥の白い胸元が見え、俺は文弥を仰向けにしボタンを外した。
「恐くなったら辞めるからな…」
俺は自分に言い聞かせるように文弥に言う。
「いいよ。大丈夫だから今更だって言ってるじゃん。好きに使って」
文弥は大切なんだ…ただ相手が求めてくれるのなら難しい事は考えずに答えようと思った。
それは自分の欲なのかも知れないが、俺は正直になる事にした。
「文弥、大好きだよ」
俺はまたキスをし服を脱いだ。
裸になった俺達は身体を絡ませながら、お互いの身体を愛撫する。
身体中で感じる低い文弥の体温が気持ちいい。そして時々擦れる文弥についた俺と同じモノが俺のペニスに触れると大きくなってると知り、感じてくれてると解るとなんだか嬉しかった。
「あんッ…やっ、んんあッ」
そしてこの部屋に響く高い甘い声に俺は酔う。
身体を触る度に身体を跳ねさせる姿が可愛くて夢中で手や口で触る。
文弥の身体が本当に愛おしくなり、優しく触れる。
文弥も俺の身体を掴み離れようとせずそれを受けてくれる。
「あぁ…いいよッ、はあんッ…ゆーたも、気持ちよくさせ…てぇ…」
文弥はそういい俺から離れ、ベッド上に座った俺のペニスをくわえた。
そして吸いながら、音を立てながら頭をふりだした。
「うわっ…すげぇわ」
何回か経験のあるフェラだったが、断トツに気持ちが良かった。俺は目をつむりその気持ち良さに酔う。
しばらく、その気持ち良さを楽しんでいたのだが限界を感じて文弥の顎を持ち俺のペニスから離れさせる。
上目で見つめる、文弥の口から唾液か俺が出した先走りかは解らないが液体が一筋足れる。
それを指ですくい、キスをし仰向けに寝かせた。俺のペニスを一生懸命に舐めて気持ちよくしてくれた口が可愛いくて…
ベッドに寝転ぶ文弥の身体を見る、確かに胸は平らで男の身体だが、白い肌と首とつく名の締まった所は細く男とも女とも言えない両性的な魅力を感じた。俺のより少し小ぶりなペニスは半分立っていて、まだ感じてる事
が解り安心した。
俺のペニスはすでに準備が出来ていて今にも行為に走ってしまいたい所だったが…何となくしかやり方が解らなかった。
男に入れる所は…アナルだろうがAVで見た以外はもちろん未経験だ。
戸惑う俺に、文弥は足を曲げたまま股を広げた。
文弥のアナルは少し口を開け、ヒクついていた。
それに引き寄せられるかのように俺は手で触り確かめた。締まっていてキツイ…こんな細い穴に俺のが入るのかなっと…
「なあ、ここに入れるの痛くないの?」
俺は少し冷静になり文弥に問う。
「初めての時は痛くて暴れたけど…今も痛いけどそれ程でもかな…でもいいから。無理矢理しても」
文弥は片腕で顔を隠し答える。
「…そんな事、お前が痛がってるの見たら、絶対俺は萎えるよ…」
「ソコの引き出しにローション入ってるから…慣らしてくれたらマシかも」
文弥が指差した引き出しを開ける。中には大人の玩具やらが入っており、変な気持ちになったがローションを見つけ、そのトロッとした液体を文弥の穴に塗りこんだ。
「んっ…ふ」
反応のいい文弥はすぐ、指先に触れただけで声をあげた。
穴はまた口をあけ出す。少しの間、周りだけに塗りこんでいたが一本、指を入れてみた…指だけでキツイのが解る。
慣らしてた俺だが、足を少し動かしながら悶える文弥を見てると早く一つになりたいと思うようになった。
「もお…だ、大丈夫、ッんあ…だからぁ…優太きてっ」
本当に大丈夫なのかは解らないが俺ももう我慢の限界。仰向けになり、股を広げ寝る文弥の穴に俺のペニスを押し当て先端を入れる。
先を入れるだけで締めつける穴に思わず顔をしかめる。
「キツい…ね」
穴は狭いがローションに慣らされていた為かズルズルと入ってゆく。狭い所を押し開くような快感に俺はすぐ果てそうになるものの堪える。
文弥はゆっくりと息を吐きながら時々、甘い声を漏らす。
俺と文弥が繋がってる部分を見ると俺のペニスが奥まで入った文弥の穴は、俺に食いつくように広がりローションで光っていた。そんな光景に興奮を覚える。
何より文弥の顔…顔を赤くし、目を細めて息を荒げている。
俺はゆっくりと腰を振った。
「ひっ…やああッ、ソコォ…すごっ、うッッ、んあ」
文弥は足でシーツを蹴り、手を俺の肩に回し受け入れる。
文弥の顔を見ながら反応がいい所を見つけ俺はソコに擦りつけた。
「あんッ…、ゆ…うたッッ。そ、そんな事されたらもぉ…やああ」
文弥の気持ちの良さそうな声に答える事なく、夢中で腰を振る。
初めて見た文弥の恍惚な顔に夢中になっていた。俺の腹に当たる文弥のペニスも完全に立ち喜んでいる。
部屋に身体が触れ合う音と二人の息を切らす音が響いた。
「ひっ、ひゃあッ。だっ…もおダメッ」
文弥は身体を跳ねさせ、精液を出したと同時に俺は跳ねた衝撃で中出ししてしまった。
無我夢中になり疲れた俺は仰向けに寝る文弥の身体に倒れる。
こんなに夢中にセックスしたのなんて初めてだった。疲れて少しの間、挿入したまま文弥を抱きしめていた。
「文弥…大丈夫?痛くなかった?」
文弥は目をつむりそんな俺にしがみつく。
「うん…気持ち…よかった…よ」
息を切らしながらも途切れ途切れに答えてくれるのがかわいくて…
可愛らしくてたまらない文弥とずっとこうして居たかったが、この間々でいるとまた求めてしまいそうになった俺は文弥から抜き、俺ので汚してしまった身体を拭いた後布団で文弥を包み、飲みモノでも取りにいこうとズボンをはきベッドを立った。
「や…嫌だ。行かないで下さい…」
ドアノブに触れた所で文弥の声が聞こえた。振り返った俺は文弥を見る。
ベッドに座り、涙を流しながら奮えている。
「どうしたの文弥?」
「お願いです。恐いから一人にしないで…何でもするから…」
一瞬、文弥じゃないと思った。涙を流し続け奮える身体に戻り、俺は手を触れる。いつものプライドの高そうな顔や、時々みせる悲しそうな顔じゃなく初めて見る文弥の顔に驚く。まるで子供のような…
俺が近づくと文弥は抱き着いてきて俺の胸で泣き叫び続けた。
「本当に何でもしていいです…僕の身体を好きに遊んでいいから…一人はもお…寂しいよ」
俺は何がなんだか解らなかったが、泣く文弥をほおっておけずそのまま抱きしめていた。
だんだんと文弥は錯乱している事が解ってきた。
俺の事も解っていないのだろう。どうしたらいいか解らない俺は「大丈夫だよ」「一緒にいるから」と声をかけ落ち着かせようとした。
文弥は泣きやんだがまだ、いつものアイツには戻らず独り言をぶつぶつと言い出した。
「パパもママも…どおして、僕を嫌うんだろう…テスト頑張ったのに…」
「一人で寝るのやだよ…あの痛い事していいから。誰か傍にいて」
俺の言葉も届かないのか、文弥は虚ろな目で子供が話すように繰り返し独り言をいう。
そういえば、あれだけコイツの家に来てながら家族を見た事がなかった。
そして泣きながら言い続けた寂しい気持ち…あれは文弥の本心なんだろうか?
そんな事を考えてる内に胸の中の相手は寝息を立てていた。
いろんな初体験で興奮した俺は寝れず、文弥の寝顔を見て一緒にベッドに横になる。
身体は疲れていたが眠れずベッドに顔を俯せ、朝を迎えた俺の目の前で文弥は目を覚ました。
一瞬、不思議そうな顔をしたが机においた眼鏡をかけて笑いかけてきた。
「おはよ、昨日は気持ちよかったよ。ありがと」
「いや…大丈夫か?文弥、本当は嫌だったんじゃ…」
「なんで?俺から誘ったんだし…優太の大きくて少し痛かったケドね」
その言葉に赤くなってしまう俺だが、腑に落ちないものがあった。昨日の泣いた出来事なんて忘れているのかの様に文弥はいつもの顔に戻っていた。
覚えているのに隠しているのか?とも思ったがだんだん付き合っていくうちに違うと解った。
それは、セックスした後文弥はいつも錯乱し泣き俺にしがみつく…。
俺だけじゃなかったのだろうな…身体を売ってた相手にもこんな感じですがってたのだと思うと、胸が痛くなる。
そんな錯乱する文弥に男達は何をしてたのだろうと…男の支配欲というモノに喜び無理矢理に犯される光景が浮かんだ。
俺はそんな奴らとは違う。文弥の寂しい気持ちを利用して遊ぶ男達とは…
それから手を出せなかった文弥にもっとブレーキがかかるようになった。
その分、誘ってくる文弥に負ける自分を情けなく思う…
ただ…少しだけ変わった事がある。最初は錯乱して俺の事が解ってなかった文弥だったが、いつの日にか『優太』と呼んでくれる様になった。文弥に求められて少しでも俺が傷を癒せるならとアイツを抱いてきた。
「許して…」
文弥の寝言に俺は現実に戻る。
「痛いよ…優太助けて…」
寝ながらも悪夢にうなされる文弥をベッドにあがり俺は抱きしめた。
いつか文弥の悲しい気持ちを癒せたらいいのにと思いながら俺は眠りについた。
目が覚めると文弥の不安そうな顔がうつった。夢かとおもとたが顔に触れ、いつもの低い体温の肌が夢じゃないと解った。
「おはよう。身体、大丈夫?」
俺は起きてベッドから下りる。
「まだ痛いケド…大丈夫。それより昨日はゴメンな…俺が寝るまで起きててくれたんだよね」
正直、忘れてるだろうと思った。
「覚えてたの?」
セックス後の記憶がある事なんて初めてだったから驚いた。
文弥は寝て起きた後しか覚えてないんだから。
「時々、途切れるケド…殆ど覚えてる。愛想つかしたよね…大丈夫だよ。心の準備は出来てるから」
文弥はおどおどと俺に話しかける。前も同じような体制でこんな会話したが、あの時と違い文弥は寂しげだ求められる事に不謹慎だがそれに喜ぶ。
「文弥は俺の事嫌いになった?別れたい?」
俺は文弥と目を合わせ問う。
「一緒にいたいよ…優太が居なくなるなんて考えられない。寂しいから」
文弥は奮える口でそう答えてくれた。
俺は文弥の身体を抱きしめ髪を撫でる。
俺のプライドとかどうでもいい。コイツを守んなきゃって…。
俺の気持ちを解ってくれたのか文弥は「ありがと」といい胸の中で笑う。
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