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小説




レオン宅から歩いて10分、ごみごみとしたメイン通りを通り裏道に入ると一軒の二階建ての建物があった。
そこの一階、標札には『ロッド・カンデラ』と書いてある。



「どうぞ、入って」


ルイはロッドに手招きされ共に家に入っていった。


ルイは今日、ロッドの家に今まで撮ってもらった写真を貰いに来ていた。
初めて入るロッドの家に緊張しながら「お邪魔します」と言い入ると壁に貼られた写真が目に入った。家具も少なく、片付けられた殺風景ともいえる部屋、真っ白な壁に空や動物、風景の写真が並べられてまるで美術館のようだった。
キョロキョロと興味深そうに眺めているとロッドは


「意外とキレーでびっくりしただろ?」


とルイに話かけた。
自分の撮った恋人とも子供とも言える愛おしい写真が映える様にとシンプルに何もおかないのだと教えられた。


ルイはロッドが撮った写真を嬉々として見せる姿に次第と緊張をほぐしていく。




しばらくそうして、飾ってあるものやアルバムに貼られた写真を見ていたのだが…部屋の一画に額縁に飾られ微笑む少年の写真にルイは釘付けになった。古い写真なのだろう所々汚れている。どこか弱々しさを感じる寂しそうな笑顔の少年…誰なのかルイは考え閃きかけた瞬間に


「アンリだよ」


とロッドに教えられる。
レオンやロッドに連れられて何度も行った墓参り。ただ、もちろんアンリに会った事がないルイは存在があった事を何となくしかイメージ出来なかった。
彼の顔を知り改めて墓石に生きてるかの様に語りかけていた二人の姿とアンリが話す様子が想像出来た。


「レオンとロッドさんのお兄ちゃん…」

「そうそう、俺の一番のお気に入りな写真なんだよコレ。アンリは写真が苦手ってカメラを避けてたから笑顔で撮ったのが少なくてさ…これが16歳くらいかな」


壁から取り額縁を手渡されるとルイは眺める。ロッドは更に後ろから一緒に見ると話かけた。


「…それに、身体が弱くて寝てる事も多かったしね。いつか俺がさ…アンリがいつも見せてくれた暖かい笑顔を撮ってやりたかったのにな」



ため息をつき、ロッドは声を暗くした。
アンリの話をするとレオンもロッドも次第に表情を曇らせる。表現はできないが、感性で不安や心配をもつルイ。同じく顔を暗くした。

少しづつ解ってきた。
愛され愛する人が出来た事で。
その人と離れなければいけない状況が来る事がある事を、今の自分には絶対に出来ないし考えたくもないと。
二人は何度もそれを経験し背負い、今を生きてる事をルイは胸に残した。







「そういえば…レオンの子供の頃の写真もあるぞっ見たい?」



数分後「あっ」と声を出し、ロッドは急にそんな事を言い出した。
見たいとも言わない間に、カテゴリー分けされたラベルをなぞり数冊のアルバムを渡した。
ルイがそれを開くと自分より小さな男の子が怒った表情でこちらを睨んでる写真と見つめあった。
最初は解らなかったが、うっすらと面影があるレオンの写真だった。
勝手に顔がほころんだルイ。


「かわいくねーガキだろっ。昔からレオンは仏頂面だからね。9歳くらいかな」


指をさして笑うロッドにつられルイもキャっキャっと声をだして話はじめた。



施設での季節ごとの行事や学校の節目の写真など二人で見て好き勝手な事をいい笑う。




「ルイと同じ14歳の時のレオンはこれ!老け顔だからお前より年上に見えるだろっ」



ロッドに指さされたレオンの昔の写真。
同じ制服を着て写る姿に違和感を感じながらも見つめ微笑んだ。



「なんか不思議です。レオンにも僕と一緒で子供だったなんて…」


「…?。当たり前だろッ。みんな子供の時代はあるさ」


ルイの言葉にロッドは首を傾げながら答えた。
ルイは少し言い出しにくそうに言葉をのんだが、ロッドを上目で見つめた。


そして



「ねぇ、ロッドさん。僕はいつになったら大人になれるの?」



ルイは不安そうに聞いた。



「えっ?」


「僕はまだ子供だけど…大人になれるのはいつ?後どのくらいでなれるの?」



ルイの質問の意味は以前、レオンから相談され何となく理解できた。

『ルイがまだ子供の内は二人の関係を深めるのは止めよう』

と。

ロッドはその問いにすぐには答えられなかった。曖昧な定義が難しく言葉に出来なかったからではなく、ルイの口からレオンに対する気持ちを間接的に聞け、たじろいでしまったから。



「早く大人になりたいの…?」


ロッドは質問を返す事で逃げた。

上目で見つめていたルイの頬が赤みをおび染まった。口元が少し緩み小さな声で


「はい…」


と返事をする。





呆けた顔のままロッドは



「なんで?」


とまたルイに返した。



――頭の中で確信をつく言葉を聞きたいとロッドの口が勝手にしゃべったのだ。
ルイの口からレオンに対する気持ちを聞きたいと。





しばらく無言になってしまったルイを、ぼやけながら眺めていたロッドだったが、はっとし我に帰った。



「焦らなくたって、ルイも大人になるんだからね。子供の時にしか出来ない遊びをたくさんしないともったいないよ!」


ロッドはふざけながら言い、アルバムをしまうと本来の目的であった写真を渡した。
的を得ない答えにルイは口を歪めたが、渡された、病院にいた頃から最近までの写真、そしてレオンの変な姿を隠し撮りした写真を見て気分がそちらに向き元気になっていった。





そんなルイの後ろ姿を、ため息をつきながらロッドは見ていた。


「ルイは早く大人になりたいみたいだけど…レオンの心の準備ができるまで待ってやってね」


聞こえないようにつぶやく。





事実上、成人といわれる歳まで後数年。

長いのか短いのか…。



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