短品
水嫌い
※ラピユリ?最後ルクユリ?
ユーリが5年の長い旅から帰って来て数日。
ユーリは青空を見上げながら気合いを入れた。
「こらっ!!暴れんなって!!」
「ウ〜ッ、ワンッワンッ!!」
廊下を歩いていたルークはふと、そんな声を聞いて窓から中庭を覗いた。
「ユーリとラピード?何してんだ?」
そこにはスポンジと石鹸を持ったユーリと、それを拒む様に戦闘体勢をとるラピードが見合っていた。
「おーい、二人とも何やってんだ?」
「ルーク?」
「ワンッ」
「あ!!こら逃げるな!!ルークも手伝え!!」
「え!?う、うん?」
どうやらユーリはラピードを捕まえたいらしい。
しかしながら、ユーリに懐いているラピードがここまでユーリを拒むのも珍しい。
「ルーク今だ!!」
「てやぁ!!」
「キャンッ」
挟み撃ちでようやくラピードを捕まえる事が出来た。
思いっきり飛び付いたせいでラピードを押し潰す形になって、ラピードの悲痛な鳴き声が聞こえたが、聞かなかった事にした。
逃げる方が悪い。
「よくやったルーク」
「ラピードがユーリから逃げるなんて珍しいな」
ルークの下でラピードは観念したのか大人しくなった。
「ちょっと、ラピードを洗ってやろうと思ってな」
「洗う?」
「ラピードと一緒に旅したりもしたからな、屋敷に帰ってきてまだ洗ってやってないんだ」
そう言われてみればラピードの毛はところ所汚れていた。
「本当だ、結構汚れてるな」
「だろ?」
「でもどうしてラピードは逃げたんだ?」
"綺麗になるのに?"と疑問を口にするルーク。
「実はな、ラピードは水が苦手なんだ」
ユーリは苦笑混じりの笑いでそう言った。
「ラピード大人しいな、本当に水嫌いなのか?」
"いつもと変わらないように見えるぞ?"と言うルークの目の前には泡に包まれたラピードの体があった。
ユーリはバケツを持ち上げるとラピードの首から少しずつ水をかけていく。
「ラピードのやせ我慢だよ、これでも結構ビビってるんだぞ?」
「本当か?」
全然わからない。
確かに口数は少ないが、それはいつもの事だし。
ルークにはよくわからなかった、逆にわかるユーリも凄いけど。
「よっし、終わった。ルーク、そこのタオル取ってくれ」
「これか?」
ルークは近くにあった大きめのタオルを手に取り、ユーリに渡した。
「今拭いてやるからじっとしてろよ?」
そう言うとユーリはラピードにタオルを被せ、タオルの上から少し乱暴に拭いていった。
「クゥ〜ン」
「ん?何ふて腐れてんだよ」
「ワンッ」
「洗ってやったんだから感謝しろって」
「ワンッワンッ」
「お前な……そんな我が儘だったか?」
何故会話が成立するのかがわからない。
ユーリはラピードの言っている事がわかっているかのように会話している。
ユーリは何者なんだろう?
「仕方ねぇな、チューしてやるから我慢してくれ」
「は?」
「ワンッ!!」
ユーリのセリフにラピードより早く反応してしまったルーク。
驚いているルークとは反対に、ラピードは凄く嬉しそうに尻尾を振っている、さっきより元気になったのが見て取れる。
「ほらチュー」
そう言って目を閉じるユーリに、ラピードは遠慮無く顔を近付ける。
そしてラピードの鼻がユーリの口についたと思ったら、ラピードは舌でユーリの口元をペロペロ舐め出した。
「こらっ、一回までだって…うわっ」
何やらユーリがラピードに押し倒されているように見えるのは気のせいだろうか?
「ちょ、ラピードストップ!!」
ルークは慌ててラピードを羽交い締めにしてユーリから引きはがした。
「ラピードやり過ぎだって!!」
「ウ〜ッ、ワンッ」
ラピードは一時暴れたが、すぐに落ち着いてくれた。
「サンキュ、ルーク」
起き上がったユーリの口元はラピードの唾液でべっとりだった。
それをユーリはやけに男前に腕で拭った。
「ったく、次からチュー無しにするぞ?」
「クゥ〜ン…」
「わかればよし、ベンチにでもひなたぼっこしに行ってこい、体ちゃんと乾かせよ」
反省したようにうなだれるラピード。
そんなラピードにユーリがそう言葉をかけるとラピードは"ワンッ!!"と、いい返事をして駆け足で日のあたるベンチに走って行った。
「ユーリ…」
「ん?あぁ悪いな、ラピードはスキンシップが好きなんだよ」
「スキンシップ、ね……」
あのラピードからはスキンシップでは収まりきれないようなものを感じたが。
「なんだ?ルークもチューしたいのか?」
「なっ!!??//」
ユーリはルークがむくれた顔をしていたように見えたのか、ユーリはニヤリと笑ってルークにそう言った。
「お、俺はチューしたいわけじゃ…っ!!//」
「また次の機会があったら譲ってやるよ、ラピードがチューしてくれるかはあいつ次第だけどな」
「…………そっちね」
今ので異様に疲れた気がした。
(ユーリって本当、何者なんだろうな)
(は?俺は俺だろ?)
(まぁそうなんだけどさ)
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