記念品(小説)
拍手小説(七夕2010)
『七夕』小説です。
フレユリ?
ほのぼの
「皆さん聞いてください!!」
ここは最高の温泉を味わえるユウマンジュ。
このユウマンジュの永久入浴券を持っているユーリ達は久々にゆっくりしようとここを訪れていた。
「どうしたんだよエステル」
パタパタと走り寄って来るエステルは何か良いことを発見して来たのか、仲間全員を受付のあるフロアに呼び出した。
「ユウマンジュのスタッフさんに聞いたんです。今日は"七夕"と言う日らしいんです!!」
「"たなばた"?聞いた事が無いですね」
エステルの言葉にフレンは自分の中のあらゆる記憶から"七夕"と言う言葉を探したが、どうやら見つからなかったようだ。
「おっさんは聞いた事あるわよ〜。確か、紙に自分の願い事を書いて飾るのよね?」
「そうです!!」
レイヴンの言葉にさらにテンションが上がったエステル。
「七夕……この日の夜に牽牛星と織女星、彦星と織り姫と呼ばれているそうですけど、年に一度だけ天の川を渡って会える日なんだそうです。彦星と織り姫は恋人同士なのに年に一度しか会えないんですよ!!可哀相です!!」
「エステル、話がズレてるわ」
「あ」
リタに指摘され、彦星と織り姫への同情の話になりそうだったのに気が付いたエステルは話を変える様に一つ咳ばらいをした。
「それで、"短冊"と言う紙に自分のお願い事を書いて笹に飾るんです。あんな感じに」
エステルはそう言うと、フロアの奥に飾られている沢山の笹を指差した。
そこには他のお客さんが吊したのであろう短冊がたくさん吊されていた。
「それで、そのお願い事を書くのと、彦星と織り姫の話の関係は何なの?」
ジュディスのそんな質問にエステルは引き攣った顔をして口を開いた。
「え、えぇと……そこを聞くのを忘れてしまって……」
「えー、そこ一番大事な所じゃないの?」
「まぁまぁ、きっとエステルは彦星と織り姫の話を聞いてウチ達に早く話たくて聞きそびれただけなのじゃ、ウチ達の為なのじゃ」
「パティ……」
カロルの言葉に弁解する様に言葉を発したパティ。
その言葉にエステルは非常に感動した。
「う〜ん、そうだね。また後で聞けばいいし」
「そう言う事だな。エステル、もちろん短冊とやらは」
「はい!!貰って来ました!!」
ユーリの言葉に、エステルは色鮮やかな紙を取り出した。
「書けました!!」
「何て書いたの?」
エステルが声を上げ、リタがエステルの短冊を覗き込む。
「"今度こそダイエットが成功しますように"です!!」
「あら、素敵な願い事ね」
ジュディスも自分の短冊を持って二人の前に現れた。
「そう言うアンタはどうなのよ」
「私?私は"もっと強い敵と戦いたい"かしら?」
「戦闘バカね…」
リタは呆れる様にそう言った。
「"ずっと皆でいられます様に"?」
「な!!///」
突然自分が短冊に書いた願い事を言われ、後ろを振り向くと、そこには嬉しそうなエステルが居た。
「か、かかか勝手に人の読まないでよね!!」
「リタ!!私嬉しいです!!」
「そう思われてて嬉しいわ」
「べ、別に!!今の生活がちょっと気に入ってるだけなんだから、そんなっ……///」
「素直じゃないのね」
ニコニコ笑っているジュディス。
リタは嬉しそうなエステルに抱きしめられている。
「ユーリユーリ!!」
そんな微笑ましい場所を背景に、パティはユーリに駆け寄った。
「何だパティ?」
「ウチの短冊を見ろなのじゃ!!」
「何なに?」
パティに押し付けられる様に短冊を受けとったユーリは書いてある文字を読んだ。
「"ユーリをウチの婿にするのじゃ"?」
「うむ!!だからユーリもウチを嫁にすると書くのじゃ!!」
「生憎ともう書いちまったからな、残念だったな」
「むっ、先を越されてしまったかの……」
「悪いな」
ユーリはパティの頭をポンポンと優しく叩いた。
「今は、これで我慢しとくのじゃ」
パティは少しだけ嬉しそうな顔をしてレイヴンの方に走って行った。
「おっさんは何て書いたのじゃ?」
ルンルンで書いていたレイヴンにパティが話かけると、レイヴンは笑顔でパティを振り向いた。
「あらパティちゃん、おっさんのがそんなに気になるの?」
「やることが無いから聞いてやろうと言ってるのじゃ」
「あれ?今おっさんの繊細なハートにヒビが入った気が……」
「いつもの事なのじゃ」
「酷いっ!!」
「何冗談言ってるのさパティ」
おっさんイジメをしていたパティを止めたのはカロルだった。
「おぉカロル!!カロルは何て書いたのじゃ?」
「僕?僕はね〜」
「あ、もうおっさんに興味なし的な?」
レイヴンを無視してカロルの短冊を覗き込むパティ。
「"ドンみたいな立派な首領になりたい"か……カロルらしいの」
「へへ、早く一人前になって凛々の明星をもっとおっきくしたいんだ!!」
「いい心がけね、立派だわ」
パティ、レイヴンはカロルの願い事を見て微笑ましく笑った。
「で、レイヴンは何て書いたの?」
「よくぞ聞いてくれました!!」
カロルに言われ、レイヴンは大声を上げて短冊を掲げた。
「おっさんの願い事は"美女ハーレム"よ!!」
「……レイヴンらしいよ」
「じゃの」
「あらあら?もっと激しいリアクションを期待してたのに〜」
「おっさんの願い事なんてわかりきってるのじゃ」
"わかってるわねパティちゃん!!"、"おっさんだからの!!"そんな会話が聞こえ、ユーリは苦笑した。
「さて、俺のも吊すか」
遠くで笹に短冊を吊す女性三人を見ながらユーリは立ち上がった。
「ユーリ」
「ん?フレン」
ユーリの元に駆け寄ったフレン。
フレンも書いた短冊を笹に吊す様だ。
「ユーリは何て書いたんだい?」
「さぁ?何だろうな」
ユーリは短冊を見るならどうぞ、と言いたげにフレンの前でヒラヒラさせた。
フレンは遠慮無くユーリの短冊を取ると短冊に列んだ文字を見た。
「ぷっ」
「…んだよ」
フレンが突然笑ったのでユーリは不機嫌そうにフレンを睨んだ。
「いや、ただ内容が…ね」
そう言ってフレンは自分の短冊をユーリに差し出した。
「……ぷっ、なるほどな」
ユーリはそう言ってフレンに短冊を返した。
フレンもユーリに短冊を返す。
「まさかフレンと同じ事書いたなんてな」
「僕も、まさかユーリと同じなんてね」
そう言い合って二人は笹の前に歩み寄った。
「ま、同じ願い同士、隣にでも飾るか」
「ふふ、光栄だよ」
そう言って二人は笹に短冊を隣同士に括り付けた。
「ま、いつかフレンが創ればこんな願い事なんていらねぇんだけどな」
「じゃあこれを創る為にも、ユーリにはとことん付き合ってもらうからね?」
「ま、仕方ないな。付き合ってやるよ」
そう言って二人で笑い合った。
『世界中の人が幸せに暮らせますように』
END
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