記念品(小説)
5000HIT記念
「おっさ〜ん、しゃんとしやがれ〜」
「レイヴンファイトです!!」
「レイヴンがんばれ!!」
「賞金もらって来ないとただじゃすまないわよ!!」
「おじさまがんばってね」
ユーリ、エステル、カロル、リタ、ジュディスが応援する中、当のレイヴンと言えば。
「おっさんみたいな老体にっ……200人抜きはキツイわよっ……!!」
闘技場の真ん中で、せっせと200人抜きに挑戦中。
ただ今50人目を迎えていた。
5000HIT記念 レイユリ
―『我が儘』
「おっさん……もぅダメ、死ぬ……」
「中々やるわね、おっさん」
「本当ね、まさか200人抜きを達成するとは思わなかったわ」
酒場を訪れた一行。
机に倒れて口から魂が抜け出しているレイヴンを一応褒めるリタとジュディス。
レイヴンは見事200人抜きを達成したのだった。
「凄いですレイヴン!!ユーリとジュディスに継ぐ3人目の200人抜きです!!」
エステルはとても嬉しそうにレイヴンの手を握り、ブンブン振った。
レイヴンはと言うと、か細い力の抜けたような声で"ありがとぉねぇ…"と言っ……呟いた。
「おっさん、もぉダメ……今日は先に休ませてもらうわ……」
そう言ってレイヴンは酒場を出て行く。
「あ、待ってよレイヴン!!……行っちゃった、ちょっと無理させちゃったかな……」
カロルは、レイヴンを呼び止めようと立ち上がったが、結局出て行ってしまったので仕方なくもとの席に座った。
「確かにレイヴンにはちょっと無理をさせてしまったかもしれませんね…」
エステルは困惑した顔でレイヴンの出て行った扉を見つめた。
「それは元はと言えば、ユーリが勝手にエントリーしたからじゃない」
リタの言葉に、全員の目がユーリに向いた。
「俺か?俺はおっさんがやるっつったからエントリーしたんだよ」
「あら?作ろうと思っていたデザートの材料をおじさまに使われてしまったから、怒って勝手にエントリーしたんじゃなかったのかしら?」
「ジュディ…お前見てたな?」
ユーリの無実は見事、ジュディスによって覆された。
「何よあんた、そんなんで怒ったわけ?」
「材料ならまた買って来れば良かったのに」
「これってユーリが悪いんです?」
「「うん」」
リタのカロルの言葉にエステルの疑問が生まれ、それを"そうだ"と言われれば、エステルは既にリタとカロル側に着いていたのであった。
「ユーリ、レイヴンに謝って来てください」
「はぁ?何で俺が…」
エステルの言葉を否定すると、エステルはずいずいとユーリに迫って来た。
「ユーリっ!!」
「……っ、はぁ……わぁったよ、謝ればいいんだろ?謝れば」
そうユーリが言うと、エステルは満足そうに笑った。
「では早速行ってきてくださいね」
「あんまりレイヴンイジメないでね!!」
「おっさんイジメても何も楽しくねぇっての」
エステルとカロルに背中を押され、ユーリはめんどくさそうに酒場を出た。
「ユーリも素直じゃないわね」
ジュディスはただ一人、楽しそうに笑っていた。
「……ん、ありゃ寝ちゃったのね……」
酒場を出て先に宿屋に来ていたレイヴンは、いつの間にか寝ていたらしく、かなり眠っていたのか、既に部屋の中はオレンジ色に染まっていた。
「おっさんやっと起きたか」
「え」
突然声をかけられ、声のした方を見てみると、そこにはいつものように窓枠に座っているユーリがいた。
「ちょ、いつから居たのよ……」
「いつって……おっさんが酒場出てすぐに追い掛けたからな……ざっと4時間前ってとこか?」
「4時間って……」
4時間も起こさずに待ってくれていたのはきっと、ユーリの優しさだ、明かに疲れていたからそっと寝させてくれたのだろう。
そして、嬉しいのはユーリが"寝ず"に待っていた事だ。
暇があれば寝る、それがユーリだから。
だから"寝ず"に待つなんてめったにしない。
(宿屋があったら、の話だけどね)
レイヴンは嬉しくて、自然に口元が緩んだ。
「なぁにニヤついてんだよ」
笑いがいつの間にかニヤニヤしていたようだ、危ない。
「いやいや別に、でも待つくらいだったらおっさん起こせば良かったのに……」
ユーリとの時間を無駄にした、と嘘泣きをするレイヴン。
「……」
(あ、あれ?)
いつもなら"ふざけんな"とか言って一発殴られる所なんだが、ユーリは黙り込んでしまった。
「え、どうしたの青、年?」
何かまずい事を言ったか、と焦ったその時。
「うぉっ」
ユーリは突然、レイヴンに抱き着いた。
「ちょ、本当にどうしたのよ青年」
明かに不信な行動に、さすがにレイヴンは心配になった。
「……ん、」
「え?」
レイヴンに抱き着いているため、ユーリの声はくぐもって聞こえない。
「ユーリ」
レイヴンは一度体を離し、しっかりとユーリをベッドに座らせた。
「で、なんて?」
「……ごめん」
謝られるような事をした覚えは無く、レイヴンはわからない、と言いたげな表情でユーリを見た。
「俺が勝手に闘技場にエントリーしたから……」
「え?それはユーリは悪くないわよ?」
悪いのは寧ろおっさんの方、ユーリの大切なデザート用の材料を、知らなかったとは言え使ってしまったのだ、三度の飯よりデザート好きなユーリには痛い仕打ちだと思ったから、おっさんはユーリの無茶な200人抜きのエントリーを自分からOKしたのよ?
「俺の我が儘で勝手にエントリーしたのは俺だ……おっさん、いつもより秘奥義使ってただろ」
「……」
そこでレイヴンはやっとユーリの謝りたい事がわかった。
闘技場で秘奥義をいつもより使ってしまったからだ。
秘奥義『ブラストハート』は、レイヴンの胸に埋め込まれたブラスティア、つまりレイヴンの生命力を消費して発動する。
つまり死が余計に近付くと言う事だ。
秘奥義をより多く使わせてしまった事に負い目を感じているのだ。
「ユーリ……」
「部屋入ったらあんた、床に倒れてたんだ……」
「げっ……」
それはきっと疲れていたから、部屋に入って安心してしまい、そのままそこで寝てしまったのだ。
「俺のせいでレイヴンが死んじまったのかと思った……!!」
あぁ、自分が勝手にエントリーしなければ命を縮める様な事も無かったのにと……
「生きてて、よかったって……!!」
俺が起きるまで、自分を責めてたのね……
「ユーリ」
「……っ!!」
今にも泣き出しそうなユーリを、レイヴンは優しく抱きとめた。
「おっさんはユーリ置いていかないから、いつも側にいるから、おっさんは大好きなユーリの為にやったのよ?おっさんはユーリのためだったら何だってする、ユーリが生きろってんなら死んでも生きるわよ?」
その言葉にユーリはプッと笑った。
「ちょっとちょっと?おっさん良いこと言ってるのに笑うって酷いわよ!?」
「だってっ、死んでも生きるってっ……はははっ!!」
「人のセリフを笑って飛ばす悪い子にはお仕置きよっ!!」
そう言うとレイヴンはユーリをベッドに押し倒すと、その上にたまがった。
「おっさん、疲れてんだから止めとけって」
「それとこれとは別よ……グホォっ!!」
レイヴンはユーリの見事な左ストレートでユーリの上から退場させられた。
「青年ったら酷いわ!!」
「俺は了承してねぇっての、もっと身体、大事にしやがれ」
レイヴンは、背を向けたユーリの耳が赤くなっているのに気づき、可愛いな、と思うのだった。
それに、自分の身体の事も心配してくれているのも嬉しかった。
「あと、言っとくが……」
「ん?なぁに?」
レイヴンの方をチラリて見て、恥ずかしそうに目を逸らすユーリ。
「俺が怒ったのは材料を使った事じゃねぇよ…//」
「へ?違うの?」
コクリと頷くユーリに"じゃあ何に怒ってたの!?"とユーリに詰め寄るレイヴンだが、ユーリは一行に目を合わせてくれない。
「……俺のためじゃなかったから//」
「え?」
「……レイヴンが、エステルとか、リタとかジュディス、パティのために作ってたから……///」
「……」
つまりは、嫉妬……?
「……か、可愛いっ!!」
「うわっ!!抱き着くなっ!!///」
顔を真っ赤にしてレイヴンを引きはがそうとするユーリは、レイヴンには逆効果で、嫉妬からの怒りなら尚更可愛くて、レイヴンはそんなユーリが愛しくて堪らなくなった。
「何なに?嫉妬してくれたの?おっさん嬉しくて盛ってきちゃった」
「ふざけんなっ!!///」
レイヴンは、ユーリの左ストレートを今度はちゃんと防ぎ、その手を押さえ込んでまたベッドに押し倒した。
「……!!」
レイヴンはユーリの口を自分のそれで塞ぎ。
「今度はおっさんの我が儘、聞いてよ」
そう囁いた。
―――
+あとがき+
こんにちは、管理人の唖琉ですm(_ _)m
今回、5000HIT記念の小説を書かせていただきましたが……5000HITって当の昔に終ってるんですよね、やっと書けましたすいませんm(_ _)m
てことで、今回レイユリで嫉妬ネタをしたわけですが…何か、文才が欲しくなりますね……
死にたいです、はい、ウソです。
まぁつまりユーリがデザート作る為に買って置いた材料をレイヴンに使われたのはいいんですよユーリは、でもその材料で女性陣の為にデザート作っちゃったわけだよレイヴンが、俺の為にじゃないのかよ、俺の分は無いのかよ!?みたいな、ユーリ君です。
だから怒ったんですね、はい、意味わかりませんねすいませんm(_ _)m
てかその事をジュディスはわかってた、みたいにしたかったんだけど、どうにも伝わらないww
まぁこんな5000HIT記念ですが、読んでいただいて、ありがとうございました!!!!
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